「SPINNING DISC 3D TELEVISION」/東京大学大学院情報理工学舘研究室~古くて新しい立体視

ブラウン管テレビの登場前、「機械式テレビ」というものがあったのをご存じだろうか。

螺旋状に並んだ穴を開けた金属円盤をモーターで回転させると、この円盤上のある矩形領域に着目すれば、ちょうどこの穴が(緩やかな同心円状にだが)"走査"することになる。

この穴が、瞬間瞬間にどこに来ているのかを把握できれば、そのタイミングに併せて画素表現をすることでX×Yのドットマトリクス映像表現ができることになる。

これが機械式テレビの原理だ。

しかし、この方式は、円盤状のある狭い範囲でしか画面が得られないという点や、円盤の回転が安定するまで時間がかかるといった様々な問題点があり、テレビの主流にはならなかった。

この「SPINNING DISC 3D TELEVISION」(SD3DTV)の展示は、このテレビの原始方式を、あえて21世紀に復活させたものだ。しかし、ただ復活させたのではおもしろくないと言うことで、この機械式テレビで、なんと裸眼立体視を実現するという21世紀的な拡張が施されているのだ。「古くも新しい」というべきか、いやそれとも「新しくも古い」というべきか、実に不思議な展示だ。

円盤自体はモーター駆動で回転。円盤には直径0.8mmの穴が32mm間隔であいている。

原始版機械式テレビでは、映像を出力させる光源は一個だけだったが、SD3DTVでは、光源ユニットを8×8のマトリックス上に並んだLEDとしており、それぞれのLEDは8×8方向からの異なる視線方向用の画素を表示するようになっている。つまり、単位時間あたり、同時多発的に異なる視線方向への8×8の映像表示を行っているわけだ。この異なる方向に異なる映像を見せるのを人間の両目の視差に調整することで、SD3DTVでは裸眼立体視を実現している。

解像度は64×64ピクセル。リフレッシュレートは12Hz(毎秒12コマ)。ただし、LEDユニットは一個あたりがRGB発光できるので、各画素はカラー表示が可能となっている。デモンストレーションではOpenGLで作成した「箱モデル」をカラー表示していた。

映像の生成自体は非常にアナログ的だが、実際に、裸眼立体視が実現できている様には感動を覚える。

筐体もレトロな和風な作りが印象的。もし日本が江戸時代や明治時代のまま進化していたとしたらこんな感じになるのか…というファンタジーすらも感じさせてくれる展示であった

円盤に開いている穴がわかるだろうか

上下左右の視線からの立体視に対応。カラー表示に対応している

緑の基板ブロックが8×8のLED光源ユニットだ

動画
動作原理を図解したムービー
(WMV形式 1分40秒 約2.96MB)