実戦で積み上げる、より確かな鉄骨BIM

続いては、カルテックと安藤ハザマによる『実戦で積み上げる、より確かな鉄骨BIM』と題されたセッションだ。カルテックの技術営業部 古里充氏が登壇し、同社が提供するソフトウェアを紹介した。最初に紹介したのは、鉄骨ファブリケーター向けの鉄骨CADソフト「FAB21」だ。誰でも簡単に入力できるというわかりやすさと、入力スピードを重視して25年間バージョンアップを重ねているという。

カルテック 技術営業部 古里充氏

カルテック 技術営業部 古里充氏

次に紹介したのは、2002年にリリースした「すけるTON」だ。鉄骨専用精積算/BIMソフトウェアで、「FAB21」の操作性や機能を継承し、鉄骨ファブリケーターの積算ノウハウを駆使したゼネコン積算事務所向けの製品となっている。一貫構造計算ソフトのデータを取りこみ、IFCやST-Bridge形式で出力することができる。また、設備CADと梁貫通穴の情報の連携対応も安藤ハザマと共同開発した。

これらの活用手順として、「すけるTON」からIFCモデルを出力し、それを設備CADで読み込んで梁貫通穴位置を検討し、配置情報をCSVデータで出力。そのCSVを「すけるTON」で読み込んで干渉と塑性化領域のチェックを行うという流れだ。「早い段階で梁貫通穴の検討を行えるため、BIMの本質であるフロントローディングの考えに沿うものであり、業務の中の手戻りを考える上で自然なアプローチだ」と古里氏は説明した。

  • 「すけるTON for Revit」は、RevitアドインソフトとすけるTON for Revit本体で構成される

    「すけるTON for Revit」は、RevitアドインソフトとすけるTON for Revit本体で構成される

他にも、詳細部材を自動生成できる鉄骨BIMソフトウェア「すけるTON for Revit」や、「すけるTON」や「FAB21」からエクスポートされたソリッドデータを「Revit」でインポートするRevitアドイン「FAB21 LINK」が紹介された。これらにより、BIM連携はさらに便利になる。

最後に、古里氏は、矢作建設工業による「すけるTON」の施工BIM活用事例を紹介した。矢作建設がBIMを導入したきっかけは、「Revit」が施工図と相性が良いことだという。同社は「Revit」のフェーズ機能を使い時間情報を与えることで鉄骨建方計画を作成しているほか、鉄骨のピース重量算出に、「すけるTON」と「FAB21 LINK」を活用しているということだ。

なお、矢作建設工業は今後、構造設計部で「Revit」と「すけるTON for Revit」を活用して構造図を完成させ、構造設計部から積算部・施工部まで一気通貫でBIM連携できるように取り組む予定とのことだ。

安藤ハザマ 建築事業本部 建築事業企画部 BIM推進室 田中洋介氏

安藤ハザマ 建築事業本部 建築事業企画部 BIM推進室 田中洋介氏

続いて、ふたつめの事例紹介として、安藤ハザマ 建築事業本部 建築事業企画部 BIM推進室の田中洋介氏が登壇し、「すけるTON for Revit」を活用した積算業務効率化への取り組みについて紹介した。同社は、簡単な入力で素早く詳細な鉄骨数量を算出できることから、ゼネコンの積算部門が使用するツールとして最も適していると判断し、2013年に「すけるTON」を導入。2016年には、設計と生産のBIM連携システムの構築を見据えて、「すけるTON for Revit」をいち早く導入したことを明かした。

  • 「すけるTON for Revit」を、鉄骨数量を効率的に算出できるツールとしても活用

    「すけるTON for Revit」を、鉄骨数量を効率的に算出できるツールとしても活用

「すけるTON for Revit」は鉄骨詳細部材を「Revit」に作成できるツールだが、その裏では「Revit」の情報を一度「すけるTON」に取り込んでいる。つまり、設計BIMの情報を利用して、鉄骨数量を効率的に算出できるツールとして活用できるという。同ソフト導入前は、紙図面を見ながらすべて手入力で行っていたという。また、構造計算データを取りこむ手法もあるが、最終的な図面と見比べてチェックし、修正作業を行う必要があった。「構造図の情報と等しい設計BIM情報を取り込めることは、効率化を考える上で非常に重要なポイント」だと述べた。

設計BIMの情報をダイレクトに取りこむための準備として、まずは「Revit」でファミリやテンプレートを整備し、続いて「すけるTON」で継手マスターや共通仕様のマスター整備を行ったという。そしてより多くの部材を確実に取り込むための工夫として、必要な通り芯、レベルの自動認識機能を開発。通常「Revit」に入力しないようなサブの通り芯や中間階のフロアを、「すけるTON」側だけに自動作成することで、建物外周エリアや庇、中間階の耐風梁といった部材ももれなく取り込めるようにしたという。また、取り込み漏れがひと目でわかる自動チェック機能を開発し、「Revit」と「すけるTON」の部材情報をならべて比較し、「すけるTON」側へ部材が全数取り込みできたこと、取り込まれた部材は「すけるTON」側でより最適な部材長さとなっていること、さらには取り込み漏れ部材があれば未連携要素として「Revit」のIDを表示すること——が効率的に確認できるようになったということだ。

  • 社内の取り組みづくりとして「すけるTON」のマニュアル化やルーティン化を実施

    社内の仕組みづくりとして「すけるTON」のマニュアル化やルーティン化を実施

次に、田中氏は、実務を行う上での社内の仕組みづくりについて紹介した。「Revit」側では「すけるTON」に取り込み可能な入力ルールを作成し、「すけるTON」側では取り込み手順のマニュアル化や確認・調整作業のルーティン化を実施したことを明かした。

「すけるTON for Revit」の連携手順を、デモンストレーション動画で説明し、この手法が「どれくらいの効率化につながるか」を、従来手法と比較した。従来手法では、構造図を見ながらリスト入力、継手設定、配置入力、チェック、まとめといった流れになる。一方、「すけるTON for Revit」を活用した場合は、モデルのチェックや取り込み前の事前準備のあと、一括でBIMモデルを取り込み、調整、チェック、まとめを行える。従来手法で必要となっていた多くの入力作業を「すけるTON for Revit」が自動で行うため、構造設計BIM情報を有効活用でき、積算業務の効率化につながるというわけだ。

  • FAB21を使っているファブリケーターに対し、すけるTONデータを提供して作図の効率化へ

    FAB21を使っているファブリケーターに対し、すけるTONデータを提供して作図の効率化へ

今後は、「すけるTON for Revit」のさらなる機能向上を目指し、建物の形状に応じて連携時の最適な入力手順を自動表示する機能や、エラー自動修復ツールなどを構築していく予定だという。また、「すけるTON」の図面を「Revit」にリンクさせ、鉄骨詳細図を効率的に作成できる図面リンクを開発中であることを明かした。さらに、「FAB21」を使っている鉄骨ファブリケーターに対し、設計BIMデータだけでなく、数量積算にも使用した「すけるTON」のデータを提供することで、一般図作成の効率化につなげたいと述べた。そして、「すけるTON」を有効活用し、すべての関係者にメリットがある生産システムの構築へ向けて、引き続き取り組んでいくと意気込みを語り、壇上をあとにした。