ロシアの宇宙船から新型宇宙船へ
まずは、現在ISSと地上を往復する唯一の足である、ロシアのソユーズ宇宙船。スティーブさんによると25年前に飛行した実物を訓練用に使っているとか。
「宇宙飛行士は打ち上げ約3時間前にソユーズ宇宙船に乗り込み、ひたすらその時を待ちます。発射されると体重の3~4倍の重さが身体にのしかかります。9分以内に宇宙に到着。今は最短で発射後6時間でISSにドッキングしますが、以前は2日間かかりました。ソユーズ宇宙船は3つのモジュールが連なっていて、トイレや食料は別モジュールにあります。そこで食事をとったり寝たりします。ISSにドッキングすると狭い宇宙船から急に広い空間に到達するわけで、劇的な変化です」
そして現在開発中の新しい宇宙船のコーナーへ。SVMFには「ORION(オライオン)」コーナーができていた。オライオンは宇宙飛行士を月や火星に送る有人宇宙船だ。NASAがロッキード・マーチンに発注し、開発が進められている。
でんと鎮座するオライオン宇宙船は、まるで「おむすびころりんみたい」と矢野さん。
「スペースシャトルが引退して9年。NASAはオライオン宇宙船を開発中で、これは宇宙飛行士が乗り込む部分の訓練機です。外部は断熱材パネルもありませんが、内部は実際のオライオンと同じ操作パネルやシートが使われ、非常にリアルに作られています」とスティーブさんの説明に熱が入る。
「宇宙飛行士は宇宙服を着て中に入り、ドアを閉めて打ち上げに備えて準備をします。異常事態が起こった場合を想定して、どれだけ早く出られるかを訓練するのです。
以前はそのような訓練はフロリダ州のNASAケネディ宇宙センターに行く必要がありましたが、ここヒューストンで訓練できるようになりました」。
オライオンはタッチスクリーンとボタンを併用
「オライオン宇宙船は今後、無人で約21日間の月周回飛行を行う予定です。将来的には、月の周りを周回する宇宙ステーション『ゲートウェイ』まで宇宙飛行士を運び、宇宙飛行士は月着陸船に乗り換え、月面に着陸する計画です。ソユーズ宇宙船と比べると、ロールスロイスみたいでしょう? とてもラグジュアリー(豪華)です」
オライオンのコントロールパネルは、多数のスイッチが並んでいたスペースシャトルやソユーズ宇宙船のそれとは明らかに異なっていた。だがスペースX社の宇宙船クルードラゴンはタッチスクリーンパネルを採用していると聞く。「タッチスクリーンを採用していますか?」と尋ねると、「スペースXが何をしているか知りませんが(笑)、オライオンも採用しています。でもタッチスクリーンだと、クリティカルな操作の時に間違えることがありますよね。燃料の噴射などを間違えると大変なことになるので、重要な操作は古いタイプのボタンを採用しています」(スティーブさん)
オライオンの隣には、ボーイング社が開発中の新型宇宙船スターライナーが! ISSに宇宙飛行士を運ぶ予定で開発が進められている。だが残念ながら内部を見ることはできなかった。
ここ、JSCで訓練中のスターライナー内部の様子はWebの画像からどうぞ。
宇宙船によってデザインはどう異なるのか気になるところ。スティーブさんによると「オライオンとスターライナーの最大の違いは、放射線防護です。オライオンは月に行くので(宇宙空間の)放射線防護を考える必要がありますが、ISSと往復するスターライナーは、それほど放射線防護を気にしなくていい」
スターライナーとクルードラゴンの違いは?
では、ISSに向かう2つの民間宇宙船スターライナーとクルードラゴンとの違いは?
「NASAがデザインしてロッキード・マーチンが作ったのがオライオン宇宙船。一方、スターライナーとクルードラゴンについてはNASAの要求を満たせば、彼らが独自にデザインすることをNASAは許しています。車で言えば『トヨタ』と『マツダ』の違いみたいなものですよね。シートやステアリングなどそれぞれに個性があります」。
宇宙旅行で個性の違う宇宙船を選べるようになったら、楽しそうだ!