長期滞在先駆者の歴史と誇りが感じられるロシアンモジュール
まず、案内されたのは、2000年から20年間宇宙飛行士が暮らす、ISSで最も初期のロシアのサービスモジュール「ズヴェズダ」(ロシア語で『星』)へ。築20年の宇宙の「母屋」とも言うべき場所だ。
中に入ると、ISSがずっと先までつらなっている様子が一目瞭然!
「ISSは(最後尾の)ロシアンモジュールから(先端の)アメリカのハーモニーモジュールまで約150フィート(約46メートル)あります。先端までの遠さやISSの広さを実感することができます。緊急事態で、ロシアンモジュールにドッキングしているソユーズ宇宙船に乗り込まないといけない場合、どのくらい移動しないといけないのか、体感することが可能になります」(スティーブさん)
なるほど、火災が起こり煙でよく見えない時でもどのくらいの距離を移動すれば、どこに行けるか、前もって把握しておくことが必要だ。「(この施設では)知識に加えて、『判断』を訓練するわけですね」納得する矢野さん。
「ズヴェズダ」モジュールには窓付きの個室がある。「アメリカンモジュールのベッドルームには窓がないので、ロシアンモジュールで寝れば、窓から地球を眺めることができますよ」(スティーブさん)
ロシアと日本やアメリカのモジュールとは内装がかなり違うよ、と某宇宙飛行士さんから聞いていた。よく見ると、ロシアンモジュールの壁には、カーペットがはられている。スティーブさんによると、実際の雰囲気と似ているという。
「カーペットのメリットはなんですか?」矢野さんの問いに「いい質問だね!」とスティーブさん。
「まずジョークから言わせてほしい。1960年代、NASAは無重力で使えるペンを莫大な資金をかけて開発しました。一方、ロシアは鉛筆を使ったんです。約30年後、ISSを建設するにあたって騒音を下げる協定をNASAとロシアが結びました。NASAは再び費用を投じて音を抑える機械を開発。一方、ロシアの工夫の1つがカーペットだったのです」
「ズヴェズダ」には窓付きの個室があり、ダイニングテーブルがあり、壁もあったかい感じで、宇宙のハイテク感というよりは、「おばあちゃんの家」という感じ。20年間にわたって宇宙で暮らした飛行士たちの生活を、その汗や匂いと共に記憶しているのだろうなぁ…と想像する私たち。
ISS最大のモジュールは日本の実験棟「きぼう」
次はいよいよ、われらが日本の実験棟「きぼう」へ。「きぼう」はロシアンモジュールから最も遠く、ISS進行方向の一番前にある。
「きぼう」内部に入った時の第一印象は、「広い!」「明るい!」
「『きぼう』はISSで最大のモジュールでカーペットはありません(笑)。まるでISSのモデルルーム。綺麗で散らかっていません。そのため宇宙と地上を結んだ記者会見やインタビューは頻繁に『きぼう』で行われます」
スティーブさんは続ける。「照明にも工夫があるんですよ。ISSの中は無重力状態だからどこを天井にしてもいいのですが、新人宇宙飛行士が宇宙生活に早く慣れるように、天井を決めて、天井側にライトを設置しているんです」
確かに、「さぁ、どこでも好きな方向で使って」と言われても混乱するに違いない。地上と実験装置についてやりとりする時だって、上下を決めておいたほうがやりやすいはず。