--つまりそこが一番の悩みどころだ、ということですね。ザイリンクスの顧客が作っている製品のレベルや開発速度が、グローバルとは異なっていると

Rogan氏:私自身も、私の率いている日本のチームも、車載に関しては色々と勉強させていただいている状況ですので、大きくはいえませんがそういうことになります。

また日本は、車載以外にも、例えば監視カメラの様なマシンビジョンでも色々優れている部分がありますし、工場におけるモーターの電圧や電流、あるいは音を継続的にモニタリングすることによる正常動作の確認、あるいはベアリングの劣化を監視するシステムなどもありますが、現在は、そうしたものに関しては、こちらから提案するというよりも、センサメーカーなどから提案される形に近く、勉強をさせていただいているといった状況です。

ちなみに、民生機器は動きがいまでも早いです。例えばPCの場合、CPUの登場サイクルに併せたメジャーモデルチェンジが年1回、ほかにマイナーなモデルチェンジが3か月に1回といったところですね。TVも同じです。日本のTVメーカーもだいぶ少なくなってしまった訳ですが、その開発サイクルに慣れたエンジニアは社内に残っていて、そうした経験をもつ人たちが現在、車載分野などに大量に流れている。そうしたエンジニアは、非常に迅速にモノを作ることに慣れています。しかもアイディアが面白い。彼らの開発サイクルやアイディアは、従来の車載メーカーには太刀打ちできないレベルになっています。彼らは本当に格好いいと思いますね。

--なるほど。民生そのもののマーケット動向はどうでしょう?

Rogan氏:民生の定義にもよるのですが、我々の定義だと、例えばOA機器なども民生なので、プリンタやスキャナなどに向けたマーケットは今のところ元気です。そして、これは以前から言ってることですが、ASICはもうすぐ無くなるものと見ています。FPGAの場合は何にでも使えますから、そうなると製造の規模を確保でき、開発費そのものを下げることができますが、数が出ないASICではそうもいきません。

ただ日本の組織では、ASICからFPGAの転換には制約がある気がします。かつて、民生メーカーにとって、ASICを作ることが1つの価値だった時代があったわけです。安い時代であれば2000万円とかで作れたわけですが、今では桁違いにコストがかかります。良く「ASICエンジニア」なんて言われもしますが、あれは正しい言葉ではなく、正確には「回路エンジニア」であり、ASICやFPGAは単なるメディアでしかない。だからASICを作る事を価値と見なすのは間違っていると思うのです。

先ほどの質問に戻ると、そうしたASICなどを利用して製品を作っていた事業部が「もう社内のASICじゃ無理ですよ」と音を上げ始めているわけです。処理速度は遅いし、搭載できる機能も少なく、消費電力も多く、そして高い、という問題を抱える一方で、製品は早く出さなければいけない。そうしたところから少ずつFPGAを採用するという流れになってきています。

--実際、最先端の微細プロセスに関しては国内にファウンドリがいない状況になってしまいました。その意味では、懸念事項はあるにしても、全体としてはうまく行っている、と考えられているわけですね

Rogan氏:現在は車載とインダストリアルが好調で、一番先進的なところはディープラーニング(Deep Learning)ですね。ここはお客様と密接に組んで結果を出したいな、と思っています。

私にとっての成功の定義はいくつかあるのですが、そのうちの1つは、担当している地域から製品に対して影響を及ぼせたということです。日本向けで言うと、FPGAのアーキテクチャそのものは、別に日本向けに変更する必要は無いと思うのですが、ツールとIPはカスタマイズが必要だと思っています。今、我々のツールやIPはかなり日本に向けた形で開発されているわけです。SDSoCとかはその良い例です。こうした地域に応じた対応という取り組みは、1つの成功だと思っています。