--そういうところはFPGAが一番楽で良いと言いたい?

Rogan氏:そうです。そういう部分には当然AI(人工知能)が入ってきます。我々はAIの学習と推論で、推論の側に注力しているわけですが、そこでの売りはパラレル(並列)プロセッシングですね。ここは、競合メーカーも同じなのですが、何が違うかというと消費電力です。競合が200Wに対して、我々は同じことを20Wでできるという話です。これもご存知の通り、量産車で200Wのデバイスを冷却する空調を(ECUに)どうやって組み込むのか、という問題が生じます。例えば中国の自動車メーカーのADASプラットフォームなどを見ると、今は競合メーカーの製品の入ったPCをトランクルームに積んでいる状態です。これでは量産にはとても使えない。そういうのは、どちらかといえば学習用プラットフォームという話です。

ただその車載分野なのですが、1つ懸念があります。先ほどコミュニケーションで海外メーカーにシェアを奪われているという話をしましたが、個人的には車載分野にも同じ流れを受けるのです。

言ってしまえば、日本メーカーの動きは、とにかく遅い。例えば自動駐車、すでに開発を進めているとか、検討してるとかいった話を聞くのですが、欧州だとすでに量産車に投入されている。そんな状況の中、どうやって今から開発とか検討とか言ってるもので、すでに量産段階に入っているものと競合していくのか。+αの付加価値をつけないといけないんですよ。

自動車は従来のビジネスであれば、毎年毎年、モデルが新しくなるごとに少しずつ機能を足してきた訳ですが、今はまったく新しいビジネスパラダイムになりつつあるわけです。そのパラダイムに早く移行しないといけないのですが、その「新しいパラダイム」には基準はない。逆に言えば自分が頑張れば自分が新しい基準になれる訳です。そういう視点で言うと、日本企業の動きはいかにも遅すぎると思います。

それこそ最初はContinentalとかBoschとかDelphiとか、彼らが日本の自動車メーカーに色々出荷していました。この商売があまりに上手く行ったそうで、現在彼らは日本の事務所を開設して、かなりの開発の人員も揃えているのだそうです。「開発用の人数」ですよ。そこで、日本のマーケットに特化したものを設計している。彼らは、アグレッシブに新しいものを早く提供しようとしていますし、当然コストの面でも有利になります。

--Continentalなどは、そこに特化してますね

(同席していたマーケティング本部 PRマネージャーの神保直弘氏):この1年、Continentalから我々へのアクセスが随分増えました。今までは無かったことですが、同社が2016年のCEATEC Japan 2016に出展して以降、コンスタントに連絡をいただく関係になっています。

Rogan氏:彼らは、外資の自動車メーカーにはものすごく影響力が高かったのですが、逆に日本のメーカーからのインプットを望んでいるんです。外資系自動車メーカーの場合、例えば自動運転のアルゴリズムは自社で持つわけです。そしてそのアルゴリズムをハードウェアメーカーの機器にインプリメントする形になります。しかし、日本はそうではない。これが1つ目のポイント。

2つ目は自動車メーカーだけでなく、Tier 1やTier 2もやはり動きが遅いことです。そのため、今の流れで行くと、日本の自動車メーカーは今後も元気かもしれませんが、そこに連なっているTier 1やそれ以下のメーカーはどうなるだろうか? という気がしています。彼らがこれから作ろうとしているものはすでに市場にある、あるいは想像できるものばかり、といった状況になりかねない。「それは考えたことは無かった」というモノが無いんですね。