ザイリンクスの代表取締役社長を務めるSam Rogan氏

すでに毎年恒例になっている気すらするが、今年もXilinxの日本法人であるザイリンクスのサム・ローガン(Sam Rogan)社長にインタビューを行う機会に恵まれた。もっとも昨年のインタビューは3月なので、ちょっと時間が空いてしまった感はある。インタビューそのものは今年8月に行ったのだが、同社の2018年度第1四半期の決算は非常に調子が良く、それもあってローガン社長の口もなかなかに滑らかなものであった。

--日本地域の2018年度第1四半期業績は前年同期比で9%増、前四半期比12%増と非常に好調でしたが、その前の2017年度第4四半期は前年同期比7%減、前四半期比で0%といまいちな業績でした。その辺りを踏まえて、過去1年の御社のビジネスの動向をお伺いできればと思います

Sam Rogan氏(以下、Rogan氏。敬称略):ご存知の通り、我々は過去5年間は(売り上げが)右肩上がりに伸びてきたのですが、その後、2年ほどコミュニケーション分野で苦しんできました。つまりワイヤード(バックホール向け)とワイヤレス(基地局向け)ですね。ここの伸びが減ってきた。

理由の1つとしては、これまでは日本の(通信機器)メーカーの製品がグローバルの基準だったのですが、年々グローバルでのシェアが落ちてきた。「では日本市場に集中しましょう」と言っても、正直に申し上げると、特にワイヤレスでは外資系メーカーにシェアを奪われている訳です。ワイヤードは、そこそこ良いのですが、ただこちらはすでに充分に設置されている市場で、特に最大手などは、すでにオーバーキャパシティなのではないかな、と見ています。

--Mature(マチュア:市場が成熟した)になったと?

Rogan氏:Matureではあるのですが、使われていない光ファイバはまだ沢山あります。すると、新しいアクセスをつけても、コアネットワークそのものは対応できるため、ここでのアップグレードニーズは少ないのです。

ワイヤレスに話を戻すと、この数年間グローバルで続いているのは4G(LTE)の設置です。これは日本も同じなのですが、ではこれで有利になったのはどこか? というと日本企業ではないんです。例えば数年前、パナソニックのネットワーク部門はシェアが1桁程度であったのですが、それを2015年にNokiaが買収して以降、現在では30%程度へと成長、No1のネットワークインフラプロバイダに成長しています。

こうした流れを踏まえると、本来はその座には日本のメーカーが座れたのではないかと思うんです。基本的に我々が製品を提供しているほとんどのセグメントにおいて売り上げは伸びてるのですが、唯一伸びてないのがコミュニケーションとなります。日本のメーカーは数年前までは、海外向けに製品を販売したり、海外のメーカーへのOEM供給を行ったりしていたのですが、それが今はほぼゼロに近い。

ここまでは4G/LTEの話ですが、これから5Gになると、どうなるのか? 例えば中国の場合、LTEの普及に国が1000億ドルほど投資したとされていますが、5Gになると1000億ドル以上の投資が必要になる。これは我々から見ると「5Gは凄く良い市場なのではないか」という話になるのですが、日本の場合はどうかというと3GPPでまだ5Gの規格が審議中ということもありますし、キャリアも何がしたいのか決まってないこともあって、「5Gはまだ早いんじゃないんですか?」という反応なんですね。

これに絡む話として、毎年2月にスペインのバロセロナでMWC(Mobile World Congress)が開催されますが、あの展示会において、海外メーカーは2年ほど前から5Gのデモを見せていますが、日本のメーカーはどうかというと、少なくとも2016年は無かったと記憶しています。さすがに今年(2017年)はありましたが、それほど大規模なものではなかった。

では、これからどうなるのかなということを考えた場合、私個人の役職として現在は日本だけでなく韓国も担当している立場から言ってしまうと、4G/LTEに関しては今後もインドや中国、ひょっとすると中東も設置があるかもしれませんが、日本にはない。ちなみにインドに関しては、ちょっと前までは音声通話が主流だったのが、この1年ほどで、急速にデータに対するニーズが高まってきており、インドのトップ3キャリアが、4G/LTEの設置を進めている最中です。