日本のデジタル地図データのトップ企業であるゼンリン(画像1)。その本社にお邪魔し、同社のこれまでの経緯や地図データ作りの流れの概要などをこちらでお伝えした。その第2弾は、デジタル地図データ製作における詳細な作業の様子を紹介しよう。
デジタル地図のデータ製作というと、すべて機械を用いてデジタル的に処理されているように思うかも知れないが、そうではないことは既にお伝えした通り。何よりも最初は、全国70箇所の拠点に所属する約1000名の調査員が、自らの足でもって都市部なら1年ごと、そのほかの地域でも2~5年ごとに1軒・1棟ごとに、その地域の住人よりも詳しくなるほどに歩いてローラー調査を行い(画像2)、またダイハツ「ミラ」ベースの「細道路計測車両」(画像3)などの車両を用いて実際に全国の道路をくまなく走って現地調査を行い、変更があった箇所や、新たに誕生した建物や道路などの情報を原稿地図に書き込んでいくところからスタートする。
膨大な手書きの追加・修正情報は北九州の本社に集約され、そこで初めてデジタル地図データのコア・データベースに反映させる作業が行われるのである。コア・データベースに追加・修正情報を入力する作業は、原稿地図をボードに貼り付けた上で(画像4)、PCと接続された「ハンドデジタイザ」と呼ばれるハンディスキャナ(画像5)の1種を用いてオペレータが行う。ハンドデジタイザを原稿地図に押し当てると、PCとは連動が取れているので、専用の入力・編集ソフト(画像6)上の地図の位置もその場に移動する。要は貼り付けた原稿地図と、コア・データベースの地図データの同期が取れているというわけだ。
画像4(左):ボードに貼られているのが、全国の調査員が作成した原稿地図。ハンドデジタイザで原稿地図に手書きされた追加・修正情報をオペレータが読み取っていく。画像5(中):ハンドデジタイザ。これで原稿地図を読み取る。画像6(右):専用の入力・編集ソフトの画面。ハンドデジタイザで読み取った情報はすぐにここに反映される。 |
新規に地図データを一から作成するケースはもうない。というのも、ゼンリンの住宅地図は日本全国の市区町村の99%を整備済みだからだ。要は、既存のデータと比較して変更箇所だけを最新情報にアップデートする作業の方が多数を占めるというわけである。そして追加・修正情報は、原稿地図上では色鉛筆、赤ペン、蛍光ペンなどで入れられていく(画像7)。前回の調査から変化があった場合のみが書き込まれるが、実は変化がない場合もそのことを明確にするために緑のペンでチェック印が建物ごとにつけられている(画像7にも緑のチェックが入っている)。なお、亀戸は東京都江東区に実在する土地だが、個人名などはすべてダミーである。
赤で書かれた追加・修正情報をハンドデジタイザで読み込むと、それはそのままデータベースに反映され、モニタに表示される。ただし、追加・修正情報は、手書きなので読みやすいエリア(大通りの上など線分が少ないスペース)に書き込まれていることが多い。書き込みたい建物には、これまでの名称や所有者名などが書かれているから、空白のスペースとなっている大通りの上なので書かれているので、それは正しい建物の中に反映されるように指示する必要がある(画像8・9)。
また、複数の家屋や集合住宅、工場などを撤去した跡地に、商業施設や病院といったまったく用途の違う大型施設が建てられることが近年は各所で見られるが、そのように建物の形状やサイズなどがまったく変わってしまった場合は、同じく画像7にあるように、名称だけでなく建物の形状やサイズも原稿地図には書き込まれる。こうして、日々、全国から集められた追加・修正情報を基に、ゼンリンのデジタル地図データのコア・データベースはアップデートされていくのである。