そしてAクラスだが、これはPクラスと比較すると桁違いに難度が高い。走行体としては、同じくマインドストームNXTのパーツを利用したトライク(前1輪、後2輪の3輪バイク)型ロボット「NXTrike」(こちらは運営事務局の定める公式名称)を利用する(画像10)。ただしギア比を3種類から選べるので、NXTrikeのキャラクターはチームによって若干異なってくるのが特徴。コーナーの立ち上がりは劣るが最もスピードの出る最高速型、速度は出ないがコーナーの立ち上がりがいい高トルク型、その中間型というわけである。
コースレイアウトは画像11を見てもらうとわかりやすいが、スタートしてPクラスのゴールである第1ゴールゲートまではPクラスと同じだが、そこから1周する形で再びメインストレートに戻って、1コーナー手前の第2ゴールゲートまで走りきって初めてゴールとなる(それでも制限時間は同じく2分)。1周とちょっとを走る形で、コースレイアウトはサーキットのようになっているというわけだ。ただし、アウトだからといって必ずしもアウトのルートで1周する必要はなく、インのNXTrikeの走行妨害をしない自信があるのなら、ゴールゲート1を抜けた後はインのルートでショートカットしてメインストレートに戻ることも認められている。
Aクラスのコースレイアウトは周回できる形なので、難所への挑戦の仕方はどのタイミングにするか、またどういう順番でトライするか、さらにはスキップするかということもチームが自由に選べる。まずは完走を目指してゴールし、その後に2周目に難所に挑戦、という戦略が多いようである。
難所はインから説明すると、「モーグル通過」(20秒:画像12)、「直角駐車」(10秒:画像13)、「フィギュアLターン(FLT)」(10秒:画像14)となる。アウトは「ジャンプ台通過」(10秒:画像15)、「縦列駐車」(10秒:画像16)、「仕様未確定エリア」(60秒:画像17)という具合だ。インは最大で40秒、アウトは80秒のボーナスを得られるのである。
画像12(左):モーグル通過。円錐状のこぶがある。こぶの上も通過できるが、一歩間違えると転倒してしまう。画像13(中):直角駐車。駐車場に入れるイメージ。画像14(右):FLT。Pクラスでも使われた障害物だが、ステージ上で左折する |
詳細だが、まずはインのモーグルから説明すると、これは階段の1種で、こぶ(障害物)が4つ用意されたステージの上を通り抜けていくというもの(こぶのせいで転倒しやすい)。そして直角駐車は、コースに対して駐車スペースが直角に設けられており、頭から入るにしろお尻から入るにしろ、90度曲がって入って3秒間の停止だ。当然、壁に接触してはダメなのはPクラスのガレージ停止と同じ。フィギュアLターンは、PクラスのフィギュアLのステージがそのまま使われるが、ステージ上で脱輪せずに左折する必要がある。
続いてアウトはジャンプ台通過から。これは進行方向側が5cmの高さがあり、そこから飛び降りるというもので、しかもなかなかイヤらしいのがその飛び降り口の中央にちょうど前輪がはまり込むだけの穴が開いているということ。そのまま行くとスッポリはまって脱出不能になるか、バランスを崩して転倒してしまう可能性があるというわけだ。次の縦列駐車は、コースと平行の駐車スペースにNXTrikeを停車させるというもの。直角駐車同様に、壁に接することなくエリア内にキッチリ収まり、3秒間の停止を行う必要がある。
そして最後の「仕様未確定エリア」が、Aクラスを特徴付ける最大の難所だ。基本はモーグルの発展系で、こぶ4つとペットボトル4本が置かれたステージ上を通過するというもの。ただし、「仕様未確定」とあるように、障害物がどこに置かれるかは、大会当日にならないと確認できない。要は、顧客からの注文で急な仕様変更とか発生することは往々にしてあるわけで、それを臨機応変に対応する力をエンジニアに養わせよう、という狙いの難所である。そのため、突破できると60秒という、圧倒的なボーナスを得られるというわけだ。
難所を抜ける順番は自由ということを前述したが、例えばインの場合は、まずはゴールしてから2周目にモーグル→直角駐車→フィギュアLターンとゴールから近い順にクリアしていってもいいし、コースを2周も回れる自信がない場合は1周目の途中で直角駐車→フィギュアLターンをクリアしておき、そしてゴールした後に最後にモーグルに挑むというのも可能だ。なお、各障害物は失敗しても転倒さえしておらず、さらに制限時間内なら再挑戦することが認められている。
そして出走の仕方はPクラスと同じで、同じ組み合わせの2チームがインとアウトに別れて同時に走り、後に第2走としてインとアウトを入れ替えて合計2回走る形だ。そしてゴールまでの走行タイムから難所クリアのボーナスタイムを引いたリザルトタイムのインとアウトの合計で競技部門の順位が決まるというわけである。
続いてAクラスのモデル審査方針について。AクラスもPクラス同様、競技結果とモデルの調和平均が採用されているので、モデルの完成度の高さが求められるのはいうまでもない。こちらはまず、仕様変更に対して、効率的に対応できる設計となっているかどうかが見られる「仕様変更への対応」、それからソフトウェアアーキテクチャが十分に検討されているかどうかが見られる「設計技術」、そして要素技術とそれを使った走行戦略が十分に検討されているかどうかが見られる「制御技術」の3点となっている。この3点において最も優れたモデルを提出したチームが、モデル部門の優勝となるというわけだ。