調査員が自分の足で調査するのと同時に、現在は車両を利用したカーナビ向けの走行調査も同時に行われている。その目的は新規開通道路の計測調査や、誘導画像・交通規制などのカーナビデータベース用コンテンツの情報収集だ。計測車両は運用中のものが3種類あり、さらにカーナビとは別に運転支援に向けた新しい取り組みで使用する研究開発中の車両がある。
運用中の3種類の内、まず1種類目は、「ドアtoドアのナビゲーション」(後述)を実現することを目的として、ルーフに搭載した360度全方位カメラで交通規制情報や道幅の取得のための撮影を行っている「細道路(さいどうろ)計測車両」だ。ベース車両には、ダイハツ「ミラ」が採用されている(画像11・12)。細道路計測車両は数10台あり、これらはいくつかの地域に一定期間集中して投入され、対象地域の調査を行う。軽自動車が利用されているのは、細い道路でも入って行きやすいためである。
2種類目は、高精度なルート案内(レーン誘導、カーブなどの注意喚起など)や省燃費ルートの案内を実現することを目的として、ルーフに搭載した高精度の緯度経度・標高側位機器、前方撮影カメラを活用して、道路レーンやカーブ曲率、標高データなどを取得している「高精度計測車両」だ。こちらのベース車両はトヨタ「ルミオン」(画像13・14)。
3種類目は、ドライバーにとってわかりやすい交差点やジャンクションの案内を実現することを目的として、360度カメラで3次元画像作成のための景観撮影を行っている通称「タイガー・アイ」だ。こちらは、トヨタ「カローラフィールダー」(画像15・16)がベース車両となっている。
そして、研究開発中の車両が「レーザー計測車両」。高精度地図データを生成して運転支援や自動運転技術に貢献することを目的としており、レーザーによる点群情報の収集、および景観の撮影を行っている。ベース車両はトヨタ「ヴァンガード」だ(画像17・18)。なお、このレーザー計測車両と自動運転の支援技術など、そのほかにもゼンリンが取り組んでいる最新技術や開発中の技術に関しては、後ほど改めて紹介させていただく。
画像17(左):レーザー計測車両。運転支援や自動運転技術への貢献を目的として、レーザーによる点群情報の収集と景観の撮影を行っている。ベース車両はトヨタ「ヴァンガード」。画像18(右):ルーフには、高精度の緯度経度・標高側位機器、360度全方位カメラ、レーザー計測器を搭載する |
それから、地図データの製作に関しては、まったくのゼロから現地調査で行っているわけではない。国土交通省国土地理院(や地方公共団体)が発行している、航空写真をベースに完成させた地形図や都市計画基本図などを元原稿としているのだ(2014年現在、国土地理院は1/2万5000地形図4419面で日本全国をカバーしている)。
調査員はそれをベースに作られた調査原稿に、都市部では毎年、そのほかの地域でも2~5年に1度のペースでより詳細な現地調査を実施し、変化があった情報を細かく書き込んでいき、地図情報を更新していくのだ。都市部は人工的で硬いイメージがするから変化が少なそうな感じだが、古い建物の取り壊しと新しい建物の建設はよくあることだし、建物自体は変わらなくてもテナントの入れ替わりは珍しくも何ともない。都市部も意外と変化が激しいので、情報の収集とデータの更新を休みなく行うことが重要というわけだ。