客観的認識能力を技術的に実現可能な「Flying Sports Assistant」

続いては、厳密にはロボットの範疇には入らないかも知れないが、クワッドコプタを応用した「Flying Sports Assistant」(画像21)。東京大学大学院情報学環 暦本純一教授の研究室との共同展示で、ヒトの持つ「Mental Imagery」という、自己を客観的に認識する能力を技術的に目で見えるようにするというものだ。要は、背後からクワッドコプタに自分を画像認識処理で追従させ、そのコプタにはカメラが搭載されているので、撮影された自分の映像をHMDで見られるようにするのである。これは、スポーツにおいては自己の運動状態や位置姿勢を認識することが重要で、一流アスリートほどその能力が高いとされているからで、これを技術的に補えれば、その能力が低い人でもフォームの改善などを行え、より効率よく動けるようになったり悪いクセを取り除いたりして、よりいい記録を出せるようになるというわけだ。

画像21。Flying Sports Assistant。写真の人物の後ろをクワッドコプタが追従している

そしてこちらもロボットというわけではないのだが、次世代の「デジタルスポーツ」のために検討されているもので、軌道を変化させられるボール「TAMA」(画像22・23)。こちらは電気通信大学大学院 情報システム学研究科野嶋琢也准教授の研究室によるものだ。要は、CO2の圧縮ガスを噴射することで魔球を投げられるようになるのである。またハンディキャップとしての効果も期待できるという。魔球といっても野球のようなサイズには内部にガスの噴出機構を組み込めないので、今のところはハンドボールやバレーボール、バスケットボール、サッカー、水球など、ある程度大きさがないと厳しい。

また、今のところは噴射口は1カ所しかないので、連続して変化させたり、ナックルボールのような激しく上下左右に変化するブレ球にしたりするのも今のところはできず、1回だけ大きく変化させられる(動画6)。将来的には、最低でも同一の円周上(地球でいえば赤道のイメージ)の4カ所(さらに理想をいうなら、極軸の2カ所も加えた6カ所はほしい)に噴射口を設けて、回転していても連続して一方向に噴射することで一方向への変化を大きくさせるといったことも考えているそうだが、圧縮ガスの機構を組み込んだ状態で、それを投げたり蹴ったり地面を転がったりしても壊れないようにしないとならないし、もちろんプレイヤーにケガをさせてもいけないので、なかなか大変そうである。

画像22(左):TAMAのサイズは今のところこのぐらいが最少。画像23(右):その中味。Arduino nanoを用いた制御盤、加速度およびジャイロセンサ、ブースターサーキット、CO2圧縮ガスカートリッジ、噴射口などがあり、結構余裕がない

動画
動画6。撮影した際は、ちょうど真下に向いてしまって落下速度が加速する感じに。なので、動画を撮影させてもらった