自分の目で見ているかのような体験が可能なロボットカメラ技術

続いては、装着者に親善で違和感のない立体映像を提示するためのロボットヘッドの「TORSO」。ヘッドマウントディスプレイ(HMD)(画像15・16)と、カメラを搭載した頭部が3自由度、腰部が3自由度というロボット(画像17)が連動している仕組みで、頭部を動かすだけでロボットが動き、しかも従来のロボットヘッドでは再現が難しかった頭部の平行移動で生じる運動視差だけでなく、パン軸を最終段に配置することで高速な見回し動作をハードウェアで実現。立体視に加え、自分の頭の動きに不自然なところなく応答するので、まるで自分の肉眼で見ているような錯覚を感じてしまうほどである(動画5)。こういうものは体感してもらわないと実際には理解してもらえないので、仕組みと試した感想を文章で書いても伝わらないのが難しいところ。もっとこの感覚を伝えられる方法がないかメディアとしても研究していきたいと思う次第である。

なお、このTORSOの兄弟機ともいえるのが、TORSOの開発者でもある舘特任教授が開発した「TELESAR V」だ。舘特任教授はテレイグジスタンス研究の日本における第一人者で、VR、AR、ハプティックス、ロボティクスなどにおいても多大な貢献をしている研究者であり、慶応大大学院メディアデザイン研究科の国際バーチャルリアリティ研究センター長を務めている。

画像15(左):TORSOのHMDを正面から。画像16(右):HMDを横から

画像17。TORSOのロボットヘッド
動画5。ロボットヘッドが装着者に同期して動く様子