産総研と立命館大による招待講演
昼休憩を挟んで、午後は招待講演その2として、3人目として産業技術総合研究所(産総研) デジタルヒューマン工学研究センターの宮田なつき主任研究員(画像5)による「製品設計を支援する手モデルDhaibaHand」、4人目として立命館大学 理工学部ロボティクス学科の玄相昊 准教授(ATR脳情報研究所 客員研究員兼任:画像6)による「新しい油圧で切り開く実用ロボット研究開発」が行われた。
宮田主任研究員は産総研の中でも未来館の裏手にある臨海副都心センターに所属しており、ここでの大きな研究内容の1つが「デジタルヒューマン」であり、「DhaibaHand(ダイバハンド)」もその研究の1つというわけだ。スマホのように手で持って操作するようなものをデザインする場合、できるだけ大勢が「持ちやすい」「使いやすい」といったことを実現するためには、ヒトの手の形の研究をする必要があるわけで、その研究成果の1つがDhaibaHandなのである。宮田主任研究員の話は直接ロボットが題材ではないが、後ほど個別の記事をお届けさせていただく。
そして玄准教授は、2013年の国際ロボット展でご覧いただいた方もいると思うが、Googleに買収された米ボストン・ダイナミクスが開発した「ビッグドック」を彷彿とさせる油圧ロボットを開発した研究者で、今回の講演はそれら油圧ロボットに関するものだ。実は日本国内においては油圧駆動のロボットは油圧自体が下火ということもあり(建機などは別だが)、まず研究や開発がされていない。しかし、玄准教授によればまだまだ開発の余地があり、多数を占めるサーボモータによる駆動に比べるとさまざまなメリットがあるという。非常に興味深い話だったとお伝えしておこう。
そして招待講演の後に行われたのが、同大学の若手研究者による研究紹介だ。同・大学大学院 人間科学研究科 感性認知情報システム研究領域 博士後期課程の西村崇宏氏(日本学術振興会 特別研究員:画像7)による「ポインティング特性に基づくタッチ感知領域の設計手法に関する基礎的検討」と、同・大学大学院 創造理工学研究科 博士課程のTrovato Gabriele(トロヴァト・ガブリエレ)氏(画像8)による「ヒューマノイドにおける文化規範型非言語的コミュニケーション機能の開発」が行われた。
西村氏による講演は、スマホの画面をタッチした際の、狙ったエリアと実際に押したエリアとのズレといった話でロボットとは少し離れているので今回は割愛させていただくが、Gabriele氏の講演は、ロボットを使ったなかなか興味深い実験のレポートだった。同じロボットを利用して、ヒトとコミュニケーションさせた場合、そのロボットが外国語を話すか母国語を話すか、デザインもそれぞれの人種になじみ深いものであるか否かなどで、受け手側のヒトにとってはまったく印象が異なるというものである。
画像7。早大の西村崇宏氏。今回の講演はロボットとは関係がないので、割愛させていただく |
画像8。早大のTrovato Gabriele氏。ロボットに対するイメージに関しての話はなかなか興味深かったので、後ほどお届けする予定 |
人間同士の会話に割り込めるインタラクションロボット
その後、研究室見学ツアー並びにRTフロンティア見学ツアーとなり、研究室見学ツアーは昨年も紹介した理工学術院 情報理工学科の小林哲則教授の知覚情報システム研究室で開発中の、人間と知的なインタラクションを行うロボットの「シェーマ」(画像9・10)の見学だったので、今回は簡単な紹介とさせていただく。今年は、実際に3人の話者との会話(画像11)の様子を見学者の前で披露してくれた。
3人による会話というと、誰でも経験があると思うが、その内の2人の会話が弾んでしまい、1人が置いてけぼりにされてしまうことが往々にしてある。シェーマはそれを防ぐべく、うまくタイミングを見てまず自分が会話に加わり、その後に話に加われていない人に話を振るということを行えるのだが、今回は3人がどうもシナリオ通りに進められなかったのか、満遍なく話をしてしまったことから、シェーマは「自分が入る必要なし」と判断してしまったようでまったくしゃべらなかったので、ちょっと残念である。