PCもバックアップ可能、対象を柔軟に指定できるデータ保護製品
安納氏は続くセッションで、バックアップ機能を提供する「System Center Data Protection Manager」(以下、DPM)も紹介した。
DPMは、ファイルのみならず、アプリケーションデータや仮想マシンなど、システム内に存在するさまざまな種類のデータを保護(バックアップ/リカバリ)する製品になる。クライアントPCのデータもバックアップ対象に含められ、データの種類も柔軟に指定することができる。例えば、「マイドキュメントのデータを保護対象とするが、動画や音楽などのメディアファイルは除く」といった運用も可能だ。
また、ネットワーク上のマシンやインスタンスを検出し、エージェントを送りこんで監視を開始するといった一連の処理を自動化できる点も大きな特徴の1つ。「今月リリースされたばかりの新版(DPM 2010)では、SQL ServerのデータベースやHyper-Vの仮想マシンも自動検出できるようになった」(安納氏)という。
DPMにおいても、これまでに紹介した製品と同様、管理の効率化には配慮している。前述の柔軟なデータ指定機能やマシン/インスタンスの自動検出機能もそうした例の1つだが、そのほかにも、複数のサーバによって構成されるシステムを組み合わせて保護したり、空き領域の少なくなったボリュームを自動拡張したりする機能なども用意されている。
加えて、バックアップ先は、ディスクのみならずテープも指定することが可能。「ディスク to ディスク to テープ」といった構成をとり、短期バックアップから長期バックアップまでをそれぞれに応じたメディアに保管することもできる。さらに、DPMの冗長化を行う場合には、セカンダリ/プライマリ構成や相互保護構成がとれるうえ、DPM 2010では、拠点がたくさんあるような企業向けにチェーン構成にも対応したという。
なお、安納氏は、DPM運用のポイントとして、「バックアップデータ量への気配り」を挙げた。
例えば、ボリュームの拡張は1ボリュームあたり最大32回という制限があるため、「拡張回数を極力減らすよう、定期的にデータを監視し、ボリューム拡張が必要になる前にマイクロソフトが用意しているスクリプトを使って手狭になったボリュームのデータをより大きな領域へ移動させるといった運用が大切になる」(安納氏)という。
また、「バックアップデータを抑えるための運用も当然重要」(安納氏)としたうえで、「クライアントPC向けのバックアップでは、PC利用者自身にバックアップ対象の設定を委ねることも可能だが、この際、自由に設定させてしまうとバックアップデータ量はすぐに膨大になってしまう。前述のようにメディアファイルを除外させるなど、適切な運用ルールの確立は不可欠」(安納氏)と説明した。
さらに、サーバに関しては、「リカバリの復旧スピードだけを考えると、OSデータも含めたすべてをまるまるバックアップする『ベアメタル保護』を利用したほうが有利だが、当然そちらはバックアップデータ量が大きくなるため、本当にベアメタル保護が必要なものはどれなのかを見極める必要がある」(安納氏)などのアドバイスを送った。
問い合わせ対応を効率化するために
システム中心に考えていると見落としがちだが、運用管理業務で大きな時間をとられる作業の1つがユーザー対応である。磐石なヘルプデスクが確立されている企業はそう多くない現在、情報システム部門に対するユーザーからの問い合わせ経路は実にさまざま。報告内容にもユーザーのリテラシーによって大きくばらつきがあり、発生事象の調査に膨大な時間を費やさなければならないケースも珍しくない。
こうした問題を解決するべく間もなく登場するソフトウェアが「System Center Service Manager」(SCSM)である。SCSMの説明は、再び田辺氏が担当した。
SCSMでは、まず、「セルフポータル」と呼ばれる、ユーザー向け問い合わせ用ポータルサイトを提供しており、同画面の項目を埋めてもらうことで問題の内容をある程度特定できる。また、Active Directoryと連携してユーザー情報を取得することも可能なうえ、OpsMgrやSCCMとの連携も実現しており、システム全体のヘルス情報やユーザーPCのソフトウェア構成情報も入手可能だ。
加えて、既知の問題や一般的な事象をFAQなどのかたちでセルフポータルに表示させることもできる。こうした機能が「問い合わせの件数自体の削減にも大きく寄与する」(田辺氏)だろう。
さて、SCSMによる運用に焦点を当てると、問い合わせを受けた情報システム部門側では、コンソール画面を使って事象の切り分けや担当者のアサインを行った後、担当者がOpsMgr等を使って原因究明や必要な対応を実施することになる。この際、ワークフロー機能を使用して、問い合わせ対応を実施する前に上司の承認を受けさせることも可能だ。ワークフローは、事前に条件/アクションを定義しておけば自動化することもできる。
このような情報システム部門側の作業ステータスや担当者の情報は、ユーザーのポータル画面に反映させることも可能。こちらを使えば、ユーザー側から対応状況が確認できるため、「先日の問い合わせの対応状況が現在どうなっているのかを確認するために、さらに問い合せを行う」といった無駄なやりとりをなくせるだろう。
なお、SCSMの主な用途は「CMDB(Configuration Management Database: 構成管理データベース)」になる。すなわち、ITシステム/サービスの運用に必要な情報を一元管理することが最大の役割で、社内に存在するハードウェアやソフトウェア、それに関係する人や設置場所などの属性情報、さらには問題発生時の対処方法を管理するための製品として開発されているわけだ。
そのため、OpsMgrやSCCMと連携して各種のシステム情報を統合するハブとして機能するほか、各種の問題に対する対処方法を常に最新/最適なものに保つべく、発生した事象を管理/分析してレポート出力する機能も提供する。
このSCSMについては、「SCSMの登場によりSystem Centerがようやく完成した」(田辺氏)と説明されており、System Centerファミリの相乗効果を引き出し、"運用の管理"を実現するための製品として欠かせない1ピースになるようだ。