コーディネータを務めた日本テレワーク協会主任研究員の三浦拓馬氏 |
3番目の質問は、「テレワーク=在宅勤務だけではないことを訴求できないか。企業は、利益を生まないものには投資しない。また"在宅勤務"と言った途端に、人事制度から変えなくてはならないと敬遠される。テレワークの効果として、スポットオフィスなどの活用を訴えることができないか」というもの。
西氏は、「テレワークは在宅勤務に限ることはないだろう。実は、夏場の空調を考えると、在宅勤務になった途端に個別空調をしなくてはいけない。家の空調は、ビルの空調よりも効率が悪いのが実態であり、そこまで含めて、本当に在宅勤務が環境にいいのかということも考えなくてはいけない。むしろ、モバイルオフィス、サテライトオフィス、ローカルオフィスの活用を含めたテレワークを、さまざまな要素から見るべきだろう」と指摘した。
永木氏は、「テレワークのなかでは、むしろ、在宅勤務における効果を出すのが一番難しい」としたほか、また藤本氏は、「テレワークのなかでは、モバイルワークが一番多くなると見られる」と補足した。
コーディネータの三浦氏は、「モバイルからテレワークを進めてはどうか。そして、環境についても、モバイルのところから考えていくことができるだろう」とまとめた。
端谷隆文氏 |
一方、「テレワークにおける生産性向上の指標」については、松下電器におけるテレワークへの取り組みがパネルディスカッション前のセミナーで触れられていたこともあり、松下電器の永木氏が回答。「テレワークにおける生産性向上をどう測るかということは、テレワークによるエコの効果をどう測るかぐらいに複雑なものであり、何種類も測り方が存在する。残業が減った、2日かかっていた仕事が1日でできるようになったなど、個人の効果を聞くことで分析しているが、感覚的なものに頼らざるを得ないのが実態である。最終的には利益があがっているかどうか、という部分で評価することになるが、テレワークだけの生産性を測るのは難しいだろう」とした。
また、パネルディスカッションの中では、質問への回答を進めるうちに話題が広がり、パネラーの間からは、「従来の製品よりも半分の電力消費量になったら、メリットを得られるのは買った人だけ。省エネ製品を作っている人、売っている人のインセンティブが必要であり、お客が購入した省エネ効果を製造者と販売者と消費者で分けることができないかだろうか」(西氏)、「省エネ性能が高い製品を作り、大量に売れてしまったら、その企業のCO2排出量は増加してしまう。これに向けて、経済産業省が意識を持っている点はありがたい」(端谷氏)などの意見も交わされた。