藤本昌彦氏 |
2つめの質問である「テレワークを推進する場合に、環境への対応は起爆剤になるのか」という点について藤本氏は、「まず、テレワークによって、環境負荷削減ができたことが公正に評価される時代にすることが必要」とコメント。永木氏は、「環境がテレワークの起爆剤になってほしいと考えるが、評価基準があやふやなので、それを確立しないと難しいだろう。個人個人のモチベーションを考えると、テレワークは"ワークライフバランスにいい"というきっかけよりも、"環境にいい"というほうが訴えやすい」とした。
また端谷氏は、評価指標における問題点を指摘。「評価の範囲を決め、何を評価するかといったことが、大変な作業であるとともに、どう決定するのかという質問に対して、明確に答える術がないのが現状。また、他社の手法を用いることができるかというと、原単位の捉え方が各社に違うため、活用できない。このあたりが標準化されないと、次のステップに進んでも、結局は行ったり来たりすることになる。ポテンシャルをどう評価するのかをはっきりさせることが、環境をテレワークの起爆剤にすることができるだろう」などとした。
さらに西氏は、「環境はテレワークの起爆剤になるのかどうかは、イエスであり、またノーである」と前置きし、「通勤に自分の自動車を使わないというのは明快に環境負荷の削減になる。だが、電車、バスのような公共交通機関の場合は、テレワークによって、わずかの人間が使わなくなっても、バスや電車の本数が変化するわけではない。全体の2 - 3割がテレワークを行って、ようやくダイヤが変わり、本数が減少する。企業の2割の社員をテレワークさせるというような政府からの強制力がないと、交通機関の一部を緩和するといったことまではできないだろう」などとした。
永木浩子氏 |
なお、この質問者であったNECが、7月1日にテレワークを開始すると発表したことを紹介するとともに、NEC社員にもコメントが求められ、「NECは試行から2年を経過して、ようやくテレワークの導入を行った。いずれはCO2削減に、交通量の削減も加味できることを期待している」などとした。
なお、コーディネータの三浦氏からは、中国では、北京オリンピック期間中において、競技の開始時間と通勤の時間とがバッティングすることなどを理由に、期間中にテレワークを実施することを国を挙げて呼びかけており、渋滞を緩和し、CO2削減にもつなげる取り組みを行う計画であることを紹介した。
また聴講者からは、「経営者の視点から見ると、週1日、テレワークを実施すると、20%の通勤が削減され、計算上、5階建てのビルが4階で済むようになる。また、通勤電車も5本が4本になる。こうした企業に対して、政府は税制優遇措置を行うといったことができないだろうか」などといった提案があった。