300ドル以下でハードウェアと開発環境を提供する「SPARK」

「SPARK」とは、Windows Embedded CEの開発に必要なハードウェアとソフトウェアの一式を、ホビーユーザや教育関係者などの非商用目的のユーザに対して、低価格で提供しようという新たなコミュニティ活動である。Windows Embedded CEは今まで、特にホビーユーザにとってほぼ無縁の商用製品開発用のOSだった。しかしこの活動により、Windows Embedded CEを使用した開発環境が今までよりはるかに身近になる。

ホビーユーザにまで門徒を開くことにしたMicrosoftの目的はどこにあるのか。また、提供するハードウェアの仕様や価格も気になるところだ。まず、SPARKの目的について聞いてみたところ、同氏は「2つの理由がある」と語った(動画3)。

動画3(WMV形式)

新たなコミュニティ活動「SPARK」の目的などについて説明
(※ 画像をクリックすると動画を視聴できます)

その2つの理由とは、「いまだかつてない、新たな製品が生まれる可能性がある」「次世代の開発者を育てなければならないという社会的な責任がある」ということだ。提供するハードウェアに関しては「パートナ企業が開発中」とのことで、残念ながら具体的な仕様やーカ名などは答えてもらえなかった。しかし、今年(2008年)の第一四半期には発表する予定だという。気になる価格に関しては「300ドル以下を目標にしている」とのことだ。「あくまでも目標である」と断った上で「現在開発環境をそろえようとすると、ハードウェアで300ドル、ソフトウェアで1,000ドル程度の費用が必要だ。これをハードウェア単体よりも安く提供したいと考えている」とした。SPARKによって何が提供されるのか、次の発表が楽しみだ。

おわりに

携帯電話やパソコンのみならず、テレビやカメラなどすべての機器が繋がる世界は、新たなセキュリティ上の問題を起こす可能性があるということを考慮しても、魅力的に映る。デジタルカメラで撮影した画像を友人に送るにも、いちいちパソコンの電源を入れ、電子メールで添付するのは、たいした手間ではないが面倒くさい。カメラが直接ネットワークに繋がり、簡単に画像の共有ができればその手間は省ける。こういった世界をWindowsのみで実現しようとする是非はともかく、Microsoftがその可能性を秘めているのも事実である。

パソコンの分野では世界一普及しているOSを持ち、さらに組み込の分野でも存在感を示しているMicrosoft。しかし、その一方でBukshteyn氏は「我々はただOSを提供しているだけで、具体的な『製品』は持っていない」「コネクテッドエクスペリエンスを実現するようなサービスや製品は、各企業、そして開発者が作り出すのを待つよりほかない」という、サービスから製品までを一貫して提供しているAppleのようにはいかないというジレンマものぞかせる。

とりあえず、SPARKにより開発環境を手に入れ、新しいネットワーク社会に向けたコネクテッドエクスペリエンスを実現するような製品を開発してみるのも、面白いかもしれない。