"繋がる"機能が強化されたWindows Embedded CE 6.0 R2
Bukshteyn氏の話の前に、まずはWindows Embedded CE 6.0 R2のバージョンアップの内容や、コネクテッドエクスペリエンス、SPARKについて簡単に述べておく。
今回のバージョンアップではストレージにSerialATAやSDメモリーカード2.0が使えるようになるなど、各種ハードウェアへの対応もさることながら、ネットワークおよびユーザビリティに関する機能強化にも重点が置かれた。サードパーティ製のフォントを実装可能にするPluggable Fontをはじめ、リモートデスクトップ、Internet Explorer 6、VoIPの機能強化などである。それに加えて、Web Services on Devices用APIの提供を行い、Windows VistaやWindows Server 2008とシームレスな接続が行えるように改良している。ネットワークに接続されるクライアントとして、より使いやすくなった印象が強い。Microsoftは、このWindows Embedded CE 6.0 R2により、モバイル機器からパソコン、そしてサーバに至るまで、ユーザの身の回りすべてにWindowsによるサービスネットワークをちりばめることを可能にしたと自負している。
一方、今回のバージョンアップと同時に発表されたMicrosoftの次期サービス構想「コネクテッドエクスペリエンス」とは、ひと言で言えば「いまだかつてない接続体験」といったところだろうか。そのためには、開発者は"顧客に対してどういった『体験」を提供するか"を軸として、そのためのサービスや製品をつくり上げていく必要がある――つまりは最近、声高に言われている「サービス指向アーキテクチャ」(Service Oriented Architecture)に基づいた、新しいネットワーク社会を実現するための設計思想である。Windows Embedded CE 6.0 R2によって身のまわりの機器すべてがシームレスにネットワークに繋がるようになった今、開発者は従来の"繋げる"という作業から開放され、ユーザの『体験』を中心に新しい製品の設計・開発を行うことが可能となったのだ。
ちなみに「サービス指向アーキテクチャ」とは、機能的な定義ではなく、顧客が受けるサービスによりプログラムの構成単位を切り分けるというものだ。例えばこの考え方によると、従来は「ファイルを読み込む」「デコードする」といった処理単位で構成されていたものが、「音楽を再生する」という構成単位で切り分けられることになる。
さらにMicrosoftが新たに開始した「SPARK」というコミュニティ活動は、ホビーユーザや教育関係者などの非商用目的のユーザに対して、Windows Embedded CEの開発に必要なハードウェアとソフトウェア一式を低価格で提供しようというものである。組み込み開発の場合、OSをターゲットとなるハードウェアに実装するだけで一苦労だ。SPARKを利用すればこの苦労をしなくても済むし、開発者同士で情報が共有できるといったことも期待される。