「巨人」へのこだわり発揮、征途網絡を巨人網絡に

征途の大ヒットと驚異的な売上に支えられ、征途網絡のNYSEユーロネクスト上場が認められた。上場の直前になって、史氏は、社名を上海征途網絡科技から上海巨人網絡科技に変えた。史氏の「巨人」という名称に対する愛着というか、執念のようなものがうかがえよう。NYSEユーロネクスト上場で、巨人網絡は8億8,660万ドル(約984億1,200万円)を調達、NYSEユーロネクストに上場した中国民間企業としては最大規模の資金調達を成し遂げた。

11月1日の寄り付き価格(取引が始まった時間帯の価格)で計算すると、巨人網絡の時価総額は51億ドル(約561億円)に達し、時価総額ベースで中国最大のオンラインゲーム企業となった。史氏は巨人網絡の68%の株式を所有している。11月1日の時価で計算すると、史氏の個人資産はトータルで346億元(約5,082億円)に達する。史氏は、中国版フォーブスのランキングでも、15位から11位にそのランクを上げ、中国IT業界No.1のスーパーリッチとなった。

マーケティングと独自開発重視で実業界をリード

NYSEユーロネクスト上場の感想を聞かれると、史氏は、「上場は私の悩みの始まり。巨人網絡を持続的に成長させ、中国企業としての栄誉を勝ち取るため、睡眠時間を少なくし、休まず、命がけでがんばっていく」と語った。また、調達した資金の用途については、独自開発や買収などに投入するとの意向を示した。

専門家やメディアは、巨人網絡のNYSEユーロネクスト上場が中国のオンラインゲーム業界に強い影響を与えるとみている。そして、その影響は主に以下の2点に集中されるという。

第1に、オンラインゲーム業界はこれまでゲームの作りこみ、いわば商品開発を重視してきたが、巨人網絡は巧みなマーケティングにより、征途というたった1つの商品で、NYSEユーロネクスト上場までこぎつけた。今後は、より多くのオンラインゲーム企業が開発重視からマーケティング重視にシフトするだろうという予測している。

第2の見方は、征途が独自に開発されたゲームであるため、ユーザーの趣向に応じ、供給サイドである巨人網絡が臨機応変に内容やルールなどを変えることができ、ユーザーへの訴求力を常に確保していることが成功につながったとする見方だ。今後は、利益率向上などの観点からも、巨人網絡のように独自開発に注力する企業が増えてくると考えられている。

ソフトウェア開発販売から健康薬品、そして今度はオンラインゲームという3度の成功で大富豪となった史玉柱氏。強烈な個性で失敗も挫折も乗り越え、高度経済が続く中国の実業界を今も牽引する。史氏が次に目指すものはなにか。オンラインゲーム業界のみならず、中国と、世界の実業界が注視している。