2005年のレースでは惜しくも10時間の制限を若干超えてしまったが、完走して5位になったTeam Oshkoshは軍用トラックのメーカーのOshkosh社のチームであり、同社の海兵隊用の補給トラックをベースにしたTerraMaxという車を開発している。写真に見るように、図体が大きいので、追加されたセンサーが目立たない。

Team OshkoshのTerraMax。(出典:DAPRA)

訪問審査では、3ポイントターン(米国では右ハンドルであるので、狭い道でのUターンの場合、右に一杯にハンドルを切って前進して、道路に直角くらいになって停まり、そこから反対に切ってバックし、そして右に切って前進してUターンする)が含まれており、大きい車の方が不利であるが、TerraMaxは難なくこなしていた。

2005年のGrand Challengeには参加していなかったが、今回は、米国の工科大学を代表する東海岸のMIT(Massachusetts Institute of Technology)と西海岸のカルテック(California Institute of Technology)の両校が参加している。どちらも自動制御や人工知能などでは業績を上げている大学であり、前回の入賞チームを脅かす力を持っていると思われる。

米国の東西を代表する工科大学であるCaltechのAlice(左)とMITのLR3。(出典:DARPA)

また、大部分のチームは大型のSUVとかバンをベースとしているが、ノースカロライナ大のInsight RacingはLotusのスポーツカーをベースに車を作っている。

Oshkoshの軍用トラックとは対称的に、華奢なスポーツカーのLotus Eliseを使ったInsight RacingのLone Wolf。(出典:DARPA)

但し、Urban Challengeは交通法規遵守で、最大時速は30マイル(約50Km/h)を超えてはならないので、スピードという点ではLotus Eliseを使うメリットはあまり大きく無いが、このスポーツカーは2006年モデルから電気で走行をコントロールするDrive-by-Wireシステムが採用されており、コンピュータで制御し易いという点で選ばれたものと思われる。

また、ジョージア工科大のSting-1やバージニア工科大のHybrid Escapeも訪問審査では良い走りを見せており、健闘が期待される。

Georgia TechのTeam Sting のSting 1(左)とVirginia TechのVictor TangoチームのHybrid Escape(右)。(出典:DARPA)

チームの構成は様々で、Track-Aの補助金を貰い、スポンサーから車やセンサー、コンピュータを貰い、更に、エンジニアまで派遣してもらっているカーネギーメロン大のようなチームもあれば、一方、10人に満たない同好の士が集まって、自費で開発しているA Bunch of Dropouts(大学中退者の群れという命名)のようなチームもある。

いつかは自分たちの作った自動操縦車を火星の表面で走らせたいという壮大な夢をホームページに書いているA Bunch of Dropoutsチームであるが、残念ながら今回はセミファイナルに進むことは出来ず、Drop Outとなってしまった。

SICK社やIBEO社、Applanix社のセンサーは多くのチームで使われており、装備には大きな差はなく、やはり、勝敗を分けるのは、センサー信号から対向車や障害物を認識し、適当な行動を取るソフトウェアであると思われる。ソフトウェアは優れたアルゴリズムを考えて実装したチームが勝ちで、有力視されるチームが勝つとは限らないのが面白いところである。