Urban Challengeへの参加申し込みは、Track AとTrack Bの二通りのルートがある。Track-Aは、レースへの参加に加えて、新技術の開発研究を提案するもので、最大$1Mの開発補助金が受けられる。一方、Track-Bは、全部、自費で車を製作し、自前でレースに参加をするという形態である。

Track-Aでの参加を希望するチームは、研究計画と、車の技術的な説明資料、そして車の走行状態を撮影した5分のデモビデオを提出し、審査を受ける。DARPAはこれらの書類やビデオを審査して、2007年10月2日に、以下の11チームに補助金を出すことを発表した。

  1. Autonomous Solutions
  2. California Institute of Technology
  3. Carnegie Mellon University
  4. Cornell University
  5. The Golem Group, LLC
  6. Honeywell Aerospace Advanced Technology
  7. Massachusetts Institute of Technology
  8. Oshkosh Truck Corp.
  9. Raytheon
  10. Stanford University
  11. Virginia Polytechnic Institute and State University

(10)のスタンフォード大は2005年の優勝者、(3)のカーネギーメロン大は2004年ベスト、2005年の2位、3位を占めた実力チーム、そして(8)のオシュコシュは2005年5位のチームである。そして、2005年には参加していなかったが、ロボット工学や人工知能などの研究ではトップクラスというカルテク(カリフォルニア工科大)、コーネル大、MITなどが今回はTrack Aチームとしてエントリしている。また、企業では、オシュコシュに加えて、ハネウェルエアロスペースやレイセオンなどの軍需関係の強力企業が顔を揃えている。

Track-Aで申し込んで選に漏れたチームは、Track-Bに申し込むことが可能であり、最初からTrack-Bに申し込んだチームと合わせて審査され、その結果、DARPAは、2006年10月18日にTrack-B参加チームとして78チームを発表した。つまり、最初の関門を通過したチームは、合計89チームである。しかし、DARPAは更に詳細に審査を進め、2007年5月11日に53チームに対してSite Visitという訪問審査を行うと発表した。

参加チームのリーダーは、21歳以上の米国市民権を持つ人であることが要件であるが、それ以外のメンバーは外国人でも良く、この53チームの中にはドイツのチームが4チーム、フランスとメキシコから各1チームが含まれており、また、カリフォルニア大バークレー校のチームはオーストラリアのシドニー大との連合チームである。

前回、優勝のスタンフォード大は、フォルクスワーゲン、ベンチャーキャピタルのMDV、スポーツ飲料のRed Bull、Intel、Google、Applanixなどがスポンサーについており、WV Passat WagonをベースにしたJunior(ジュニア)という命名の車を開発している。この車は、Applanix社のGPSと慣性誘導を組み合わせたロケーションシステムを搭載し、車両位置を50cm程度、方向を0.02度の精度で測定できる。そして、車線のマーキングを見るために前方と横方向に各2個のSICK社のRiegl LMS-Q120 Lidar(Light Detection and Ranging)システムを搭載し、位置精度を5cmまで高めている。更に、障害物の検出のためVelodyne HD Lidarを搭載している。このVelodyne社のシステムは64個のレーザーを使用し、360度全周を毎秒10回スキャンし、5cmの距離精度で上下方向26.5度をカバーする優れものである。しかし、Juniorは、これに加えて200mまでを監視するIbeo社のALASCA XT Lidarを2台搭載し、後方の監視にはSICK社のLD-LRS Lidar 2台を使用している。Ibeo社のALASCA XTは12.5~25Hzで回転するミラーを持ち、水平方向240度で200mの範囲で5cmの精度で障害物を検出できる。SICK社のLidarも似たような仕様であるが、光の加減で向き不向きがあるようである。

そして、Intelのデュアルコア、クワッドコアなどのチップを10個程度使ったコンピュータで、最大、毎秒200回、これらのセンサーからのデータを解析して車を制御している。

Stanford Racing TeamのJunior。(出典:DARPA)

2005年のGrand Challengeでは惜しくもスタンフォード大に敗れ、2位、3位に甘んじたカーネギーメロン大であるが、カーネギーメロン大のTartan Racingチームを率いるWhittaker教授は、ロボット工学の権威であり、また、スタンフォードチームを率いるThrun教授はWhittaker教授の弟子という間柄でもあり、今度はスタンフォードには負けられないと雪辱を期してBossという車を開発している。

Bossは、GMのChevy Tahoeをベースとしてレーザー、ビデオカメラ、レーダーなど1ダース以上のセンサーを搭載している。主要なスポンサーは、車を提供しているGMや、部品を提供するキャタピラーやコンチネンタル社、そして、スタンフォード大のスポンサーでもある、Intel、Google、Applanixも名前を連ねている。その他に、センサーメーカーのIbeo社やディジタル地図のTele Atlas、そしてHPなど合計16社がスポンサーについており、実力ナンバーワンチームらしく、最大数のスポンサーを集めている。

Ibeoのウェブページによると、ヘッド2台のALASCA XT Fusionシステムには2000万円程度の価格がついており、購入したとすると、これらの1ダース以上のセンサーだけでも$1Mの補助金が消えてしまいそうである。ということで、スポンサーになって貰って無償提供を受けられるか、自費で購入するかは大きな違いである。Tartan RacingのBossは、Site Visitのビデオを見ても、スムーズな走行に加えて走行スピードが速く、やはり、優勝候補の最右翼である。

カーネギーメロン大のTartan Racing TeamのBoss。(出典:DARPA)