KAPシステムのRevit一体化による建築生産プロセス改革
続いては、清水建設による『KAPシステムのRevit一体化による建築生産プロセス改革』と題されたセミナー。登壇した同社デジタルデザインセンター設計長の佐脇宗生氏は、作成したBIMのデータを製作に渡すときに様々な障害があることを感じたという。そこで、鉄骨構造物専用BIMソフト「KAPシステム」にどのようにデータを渡すかということを日々考え、現在システムを開発中だという。
「KAPシステム」を「Revit」と一体化することで、鉄骨に関わる建築生産プロセスの合理化を目指して鉄骨構造物の詳細設計に必要な「KAPシステム」のインターフェースを「Revit」に移植し、必要なパラメータを「KAPシステム」に送信。KAPシステムで自動設計した詳細モデルを「Revit」にダイレクトシェイプで返す仕組みを構築したという。これによりユーザーは「Revit」の操作のみで鉄骨構造物の詳細設計を高速に行えるという。「Revit」を基軸としたBIMによる生産プロセス改革に用いる道具のひとつとして、ワークフロー、データフローを考えているということだ。
清水建設は、2013年に「Revit」をはじめとする市販のBIMツールを導入し、2015年より本格的にBIM展開を開始し、最初は図面をAutoCADで書いていたという。なぜなら、BIMデータから構造図をおこすようなスキルを持った人が不足し、また図面と3Dモデルが一致しないため使い物にならなかったとのことだ。構造のメンバーから要望を募ったところ、その大半が図面に関わるものだった。BIMデータが正しいことを証明するには、どうしても図面が必要で、「確認したい寸法がある限り図面表記はなくならない」とのことだ。佐脇氏は「BIMで行う整合調整は位置情報の確認にすぎず、製作図の承認にはならない」と前置きしながらも、「BIMの進展により図面の表記は変わってくると予想しており、現に我々がRevitモデルから構造図を作るときも表記を変えた」ことを明かした。
BIMの考え方は大別して、複数フォーマットが共存する「オープンBIM、マルチプラットフォーム」と、ひとつのフォーマットに統合された「1データ、1プラットフォーム」の2つに分類される。どちらが良いのかは議論があり、現に清水建設でもマルチプラットフォームで進めているが、できれば1データ、1プラットフォームへ移行したいということだ。そして、BIM用のデータ交換基準フォーマットである「IFC」(Industry Foundation Classes)で扱える範囲は限定的で、完成したデータを残すのには便利だが、手直しが必要なデータを扱う場合には、もの足りなさを感じるという。
佐脇氏は、「BIMの本格活用のためには、共通仕様が重要である」とし、「ST Bridge」ファイルを共通仕様にする動きがあるという。最終的にこの仕様がIFCに実装される可能性もあるが、現時点ではIFCは中間ファイルには向かないとのこと。やはり必要なのはファイル形式の統一化だ。
「KAPシステム」は大手5社が施工するどんな鉄骨にも対応し、3000を超える部品を有し、複雑な鉄骨も扱うことができるという。プレートを組み合わせることで新しい部品を作ることや、工場管理や建方管理に必要な仕組みも有しているという。
中間ファイルでは、構造設計のモデルを渡すときは実設計が終わっていない状態だが、その後変更する場合は紙に書いた指示書を渡して専用CAD側で修正する必要がある。そこで清水建設は、「Revit」にKAPそのものをアドインツールとして動作する鉄骨構造物専用BIMシステム「KAP for Revit」を開発した。「KAP for Revit」で入力した情報は、変更に追随できるため、外装、昇降機、設備など鉄骨詳細に関わる業者との連携性が向上するということだ。
「KAP for Revit」のプリセット機能を用いて標準情報や基準情報をあらかじめ決めておくことで、以下4つのメリットが期待できると説明した。なお「KAPシステム」のWebサイトから申し込むことで、トライアル版を入手できるということだ。
(1)詳細検討用のBIMデータ作成が容易になること
(2)構造計算モデルから連携しない構造付帯鉄骨の入力が容易になること
(3)正確な鉄骨数量を算出できること
(4)断面リストを連携することで工作図のチェクの手間が省略できること