―― 続いて、OCW-S3400 Mantaについてお聞かせください。ケース厚わずか10.7mm(編注:通常モデルの場合)と、薄く美しいフォルムを追求しているMantaシリーズですが、ケースについてはすでに伺ったので、ここではフェイスデザインについてお聞きします。2013年に発売されたOCW-S3000より1mm以上薄いのに(編注:通常モデルの場合)、フェイスが非常に立体的ですね。時字の造形も凝っていて。

ときおり図を描きながら説明してくれた藤原氏

藤原氏「普通、ケースが薄いと必然的に時字も薄いパーツやペイントになり、立体感のない平面的な文字板になってしまいがちです。が、OCW-S3400は文字板と風防の間の空間を目一杯使って、時計表現を追求しました。

Mantaらしく、他のモデルより優雅な時字表現をしていて、12時位置のローマン書体を始め、バーインデックスも、放物線のように柔らかなラウンドを描きながら、ベゼル側へと緩やかに立ち上がっていきます。シャープで立体的、かつ柔らかいラインを目指しました。

ベゼルを極力細くして、内側にミニッツメーターと都市コードリング、2段階の駆け上がりを作っているのも見どころです。これも、先にお話ししたサファイアガラスベゼル同様、フェイスをワイドに見せるデザイン。

加えて、皿の外縁のように緩やかな傾斜が付くことで、懐が浅く見えるんですよ。高級時計には、このように懐が浅いものが多い。それを狙っています。両立時字がぐっと手前に迫って見えるでしょう? 視認性の高さとMantaらしい品位を両立できたと思います」

緩やかにラウンドしながら外縁にむけて立ち上がる時字。XIIのV字カットも、切れそうなほどシャープ

文字板からベゼル側に向かって、皿状に緩やかな勾配が付く

―― 12時のローマンも優雅な印象を与えてくれますね。私はローマンインデックスって好きなんです。XIIの文字が、時計であることを主張している感じがして。

12時位置のローマンインデックスに注目

藤原氏「そうですね。昔、まだ私が駆け出しのころ、時計の基本機能にして一番肝心なのは12時をしっかりと判読できることだと、先輩デザイナーから習いましたよ。その教えは今でも守っていて、OCW-G1100のようなバーの時字でも、12時だけは他と表現を変えています。

12時の時字をローマンにしたのは、実はそれ以外にも理由があります。ラウンド時字の見せ場であるシャープなV字カットの美しさをアピールするのに、ローマンが最適だったのです。ここだけローマンだと目を引きますし。バーインデックスだと、すんなりまとまりすぎて自然に見えちゃうんですよ。

ここを目立たせるため、(OCW-S3000 Mantaのデザインから)インダイヤルもひとつ取って、デザインに間(ま)を作ったりもしています。OCW-S3400は、デザインのアクセントとして時字をメインにしようと思っていたので、とにかく『登場感』を出したかったのです」