―― 「オーロラ」というコンセプトは、どこから生まれたのですか?
藤原氏「実は、グリーンには可能性があると思っていました。色としてもブルーからのつながりがいいし、OCEANUSの新色としてインパクトもある。
今年(2015年)の初め、OCW-G1000で500本の限定バージョンとして、やはりブルーに偏光するグリーン「アースグリーン」のモデルを出したのですが、これが好評で、あっという間に売れてしまいました。グリーンはお客様に受け入れてもらえる、という確信があったのです。
ですが、ただグリーンにすればいいのかというと、そうではない。『色を変えました』なら簡単ですが、それではお客様には響きません。その色の選択と周囲の配色に『意志がないから』です。これは宇宙と地球と、成層圏外から降り注ぐオーロラ光をイメージしていますよ、という世界観を、時計表現のなかで構築する必要があるのです」
OCW-G1100のベゼルは地球光をイメージしたもの。限定モデルではこれを偏光させることでオーロラに置き換えたレトリックが素晴らしい |
大好評だったアースグリーンのOCW-G1000。こちらも500本の限定モデル |
―― そうして初めて「個性とお洒落」な時計になれる。
藤原氏「そうです(笑)」
―― ベゼルは、12時位置を中心にブルーとグリーンが切り替わるようになっていますね。
藤原氏「12時位置は、ワールドタイムの都市コードで、ちょうどUTC(協定世界時)にあたります。そこで、ここでグリーンとブルーが陽と陰の関係になるようにしています。UTCの+方向を陽、-方向を陰とすることで、地球の昼と夜を視覚的に演出してみました。
このモデルは文字板上にブルー、緑、そして針の金色を使っていて、ややもするとまとまりがなくなってしまう難しい配色です。
そこで、『文字板の中心部から糸を垂らしたとしたら、どうバランスを取るか』を考えて配色を決めました。文字板のバランスがちょうど釣り合うには、ちょっと重そうな金色をここに置こうか、みたいに、『色の重み』を考えて配色を決めています」
―― 時計は針が動くので、デザインも難しそうですね。ある位置では極端にバランスが悪い、などということになりそうで。
藤原氏「そうならないように、とにかく針は全周させてチェックしています。やはり気になりますから。
ちなみに、OCW-G1000とOCW-G1100では、秒針の長さが微妙に違うんですよ。OCW-G1100の方が少しだけ長い。OCEANUSのようなメタルウオッチは、ストレート系で、可能な限り長い針が見栄えがいいのです。
ただ、ソーラー駆動による重量的な都合などもあって(編注:針が長くなると駆動に要する電力も増える)、自由自在というわけにもいきません。G-SHOCKほどではありませんが、社内的な耐衝撃基準が厳しいという一面もあります。それらはお客様にとってはメリットなので、大切なことです。制限のなかで針デザインの自由度を上げることは、今後のテーマのひとつですね。そのための技術研究も続けています」