――今後こういう番組を作っていきたいというものはありますか?
企画を考える時に、「今のテレビにしかできない番組」というのをいつも考えていて『クイズタイムリープ』も採択していただいて放送までできたのですが、やっぱりYouTubeや配信では不可能な、テレビの規模感でしかできないものを作っていきたいです。「テレビっていいな」と思ってくれる学生さんや10代の人たちを増やすことが、自分たちの使命だと思うんです。テレビ屋として、番組作りは自分好みの「作品」ではなく、多くの人に見てもらう「商品」にしなきゃいけないと思っているので、「テレビでしかできない商品をお届けする」ということに、忠実に頑張っていきたいと思います。
――やはりスポーツをテーマにしたバラエティ番組は、これからも作っていきたいという気持ちでしょうか。
そうですね、スポーツへの恩返しをしたいという思いはすごくあるので。スポーツ色100%の番組だとスポーツ好きの人しか見ないというのがあるので、今回の『クイズタイムリープ』ではできませんでしたが、バラエティチックな番組にスポーツ選手を呼んで、知らなかった競技を知ってもらうきっかけにしたいというのも、常に思っています。
――町田さんが、『アメトーーク!』の加地倫三さん(テレビ朝日)や、『VS嵐』の萬匠祐基さん(フジテレビ)など、スポーツ局出身で面白いバラエティを作る方が多い印象があるとおっしゃっていたのですが、ご自身としてはいかがですか?
もしかしたらですが、同期とかと話していて気づいたのは、バラエティ番組をフラットに見られているというのがあるのかもしれないですね。『クイズタイムリープ』は編成の方に、「バラエティ制作にいたら、許諾とか難しいと思って絶対無理だと思うから、こんな企画は思いつかない」と言われたんです。でも、自分がまだバラエティを視聴者感覚で見られる上に、スポーツ中継をやってる中で「このシステムを使えばできるかもしれない」と出した企画でした。ほかにも制作現場からしたら現実離れした企画書をいっぱい出していると思うのですが、そこはスポーツ局にいて良かったと思いますね。
それとスポーツに携わっていると、観戦してる人が「ここにこれだけ興味があるのか」とリアルに体感できるので、世の中の熱を敏感に感じ取るというのも意識しています。
「面白い」の判断基準の感覚を視聴者と同じに
――ご自身が影響を受けた番組を1本挙げるとすると、何でしょうか?
僕、『水曜日のダウンタウン』(TBS)がめちゃくちゃ好きなんですよ。結構ド真ん中なものが好きで。それは、安島さんや河野さんと話していて、テレビを作る人はクリエイターだからこそ、好きな作品にも自分の色があったりするんですけど、トシさん(高橋利之氏)は自分の好きなもののド真ん中が視聴者のド真ん中にあるというんです。つまり、面白いという判断基準の感覚が視聴者寄りだと。だから自分の感覚もそうなることで、自分の面白いジャッジがマスに届くんじゃないかと思って、個人視聴率5%超える番組を全部見るようにしています。
そうやって見ていると、『水曜日のダウンタウン』ってやっぱりめちゃくちゃ面白い。(演出の)藤井健太郎さんにお会いしたことはないんですけど、皮肉なところがあって、悪の部分もうまく料理していて、スポーツ中継で根詰めた時、何か1本見ようとなったら『水ダウ』を選んでいます。これだけ若者が面白さに反応する番組をいつか作りたいなと、すごく思いますね。
――いろいろお話を聞かせていただき、ありがとうございました。最後に、気になっている“テレビ屋”を伺いたいのですが…
先ほどから名前を出させてもらっている安島さんです。スポーツ局で一緒になった初日に飛び込んだら、先ほどのトシさんの話から、安島さんは「昔の自分は、自分の面白いと世間の面白いが一致していないことに気づいた瞬間があったから、これを一致させる手法は生山に教えられると思う」と言ったんです。まずそれを後輩に言えることがすごいなと思ったのと、トシさんが“感覚”の方であるのに対して、安島さんはロジカルに説明して、日本語を操ってる感じがあるんですよ。
それはスタッフに対しても、「この人に落とし込むには、これくらいの話し方じゃないとダメだな」とか「この人には感覚で言っても伝わるな」とか、相手に合わせるんですよね。自分のクリエイティブな表現としての演出とともに、スタッフを演出する力もあるので、そこの日本語力を培われたルーツみたいなものがあれば聞いてみたいです。