――今後テレビでこんな作品を作ってみたいというものはありますか?
関西出身なのもあって、もともとお笑いが好きなんですよ。学生の頃は吉本の劇場に見に行ったりとか、今でもドラマよりバラエティばっかり見てるくらい好きで、劇作家にしては芸人さんとの接点があるほうだと思います。そんな芸人さんのパワーってすごいから、そこと物語を掛け算することで何かできる気がするんです。そこにはいろんな人が挑戦してて、コントをドラマ風に撮ってみたり、ドラマに芸人さんを出すというのをやっていたりしていますよね。
――それこそ佐久間さんとか、上田さんと『あいつが上手で下手が僕で』を一緒にやっている元日テレの橋本和明さんとか。
そうですね。「キス我慢選手権」を映画にしたりとか、橋本さんとも新しいことをしようとしています。そうやって芸人さんというポテンシャルの高い社会集団と物語をうまく接続して何かやりたいというのが、すごくありますね。
――テレビの制作者の方と話していると、最近の芸人さんは演技力がすごいと、口をそろえておっしゃいます。
やっぱり熱いジャンルに才能が集まってくると思うんですよ。熱いものは時代によって変わるんですけど、それが今芸人さんの世界だと思うんです。才能のある人って何でもできるから、演技だってできるし、海外で評価される人もいるし、小説で芥川賞を獲る人もいるんですよね。
それと夢としてあるのは、劇団が舞台だけじゃなく、スクリーンとかテレビ画面とかいろんなところを“劇場”にして活動できるというのがいいなと思うんです。関西でよしもと新喜劇というチームが毎週新作をテレビで放映している、かつてはドリフターズが『8時だヨ!全員集合』(TBS)で毎週舞台作品を生放送していた。そんなことが人類にとって不可能ではないなら、自分たちにもできるんじゃないかと思ってやっています。
――最近はYouTubeやサブスクのネット配信が勢いを増す中で、テレビはオワコンとも言われますが、そんな中でもテレビの魅力というのはどのように捉えていらっしゃいますか?
やっぱり“出会い”ですよね。僕らにとって舞台だけやってたら出会えない人たちに出会えるし、動画も実は広いようで狭い感じがするんですよ。お薦めされたものの中から選んだりはするけど、全く知らないものに出会うということがない中で、テレビは本当に偶然のお茶の間での出会いがある。視聴率1%でも全国放送だったら100万人というケタでお客さんと出会えるというのは、ちょっと類を見ないですよね。
その規模がすごいから、当然コードも厳しいわけで、知らない人のお家にお邪魔するわけだから、振る舞いや見た目には気を付けないといけない。でもそんなマナーを踏まえながら、濃いところを出せている作り手の人たちは本当にすごいなと思います。志村けんさんって、毎週1時間、日本中に“志村けん”を見せ続ける時間があったわけじゃないですか。それってなかなかすごいことだなと思うんですよね。
■ドラマが勢いで成立した、かつてのテレビ
――ご自身が影響を受けたテレビ番組は何ですか?
『風雲!たけし城』(TBS)ですね。あれも1人の人が作った狂気の産物というか、出ている人たちがみんな素人で、「たけし城を攻略する」という壮大な企画性の中、あんなに大きな規模でバカげたことをやろうって、普通じゃなかなか通らないと思うんですよ。それと、『アメリカ横断ウルトラクイズ』(日本テレビ)も好きだったので、素人の人が活躍するのが好きかもしれないですね。『SASUKE』(TBS)は超人が出てくるからちょっとシンパシーからは遠くて、ヨーロッパ企画もあんまり超人がいない世界なんです。それでも、エンタテインメントですごいものができるというのが醍醐味で。
――どれもドキュメンタリー性がありますよね。
そうですね。『ほこ×たて』(フジテレビ)も好きで、一般の方がある角度を変えたらヒーローになるって、すごいなあと思います。
――ドラマはあまりご覧になっていなかったのですか?
ドラマはドラマで見てましたよ。今は戦略が細かくなっている感じがしますが、昔は「これ、勢いでやったんだろうな」みたいな感じがあったのが面白かったですよね。
――今ふと、「ストーカー」という言葉が出だした頃に、2局が同じクールにストーカーを題材にしたドラマを放送していたのを思い出しました(笑)
ありました! たまげましたよね(笑)。ああいうの、すごく面白いと思うんですよ。「ストーカーが出てきたから、ストーカーのドラマ作っちゃおう!」みたいな。そんな勢いもテレビの良さですよね。
――小さい頃からかなりテレビ好きだったことがうかがえるのですが、テレビの世界に行こうと考えたことはなかったのですか?
そこは成り行きで、大学時代に劇団を作って、どっかで続かなくなるだろうなと思って、そしたら放送作家を目指そうかなとか、勝手に人生を考えてたんですよ。でも劇団が続いちゃって、続いたら続いたで面白くて。劇団って1回解散したらもう組めないと思うんです。明日から劇団解散して小説家をやろうというのはできるかもしれないけど、その逆は難しくて。だから、この場は大切にしようと思って、劇団があるうちは劇団ファーストでやってますね。あまりにももったいない気がして。
――いろいろお話を聞かせていただき、ありがとうございました。最後に、気になっている“テレビ屋”を伺いたいのですが…
関西テレビの岡光寛子さんです。『魔法のリノベ』でご一緒しましたが、底知れない方です。プロデューサーってキャスティングから予算管理、俳優さんのケア、進行管理、クオリティの担保、監督のお尻叩き、脚本家の手綱を持つとか、本当にいろいろな業務がある中で、「こんなところまで手が回ってるのか」「ここまで気を配られているのか」というのを、すごいレベルでやっている方。僕の変わった試みにも付き合ってくださるし、また一緒にやりましょうという話もしています。
- 次回の“テレビ屋”は…
- カンテレ『ウソ婚』岡光寛子プロデューサー