• (左下から時計回りに)木村卓寛、東野幸治、庄司智春、椎葉氏=『PEAK HUNT 東野登山隊』にて(椎葉氏提供)

――堀江さんいわく「冒険家ディレクター」として、『PEAK HUNT 東野登山隊』(ひかりTVほか)や『アドベンチャー魂』(BS-TBS)と冒険番組を手がけてきた椎葉さんですが、番組化する前に東野さんや天津の木村(卓寛)さんとプライベートで登山されていたんですよね。

東野さんとは『イカリングの面積』から番組はやってなかったんですけど、ご連絡頂いてご飯食べたり、映画見に行ったりと、ずっとかわいがってもらってたんです。それで、ちょうど富士山が世界遺産になるというタイミングでご飯を食べてて、「1回登っておきたいよね」という話になって、3人で富士登山をしたんですけど、特に僕がダメダメで、5合目から登ったのに6合目でもうギブアップしたんです。6合目なんて普通は1時間あったら着くのに、すぐ休憩とるから2時間半かかって、もうダメだってことになって、そこでカップラーメン食べて下山しました。でも東野さんは優しいので、そこで責めることはせず「高尾山から始めるか」って言ってくれたのが、今や「剣岳に挑戦しよう」というところまできました(笑)

――富士山でリタイアしてもここまで続けられたモチベーションは、何だったのですか?

最初は2人に迷惑をかけたくないというのがありました。気をつかって僕を先に歩かせてもすぐ休憩するから、2人は自分のペースで歩けず、非常に足を引っ張ってるなと思ったので、普段からウォーキングやランニングも始めるようになったんですけど、いろんな山を登って、下りた後の焼き肉がめちゃくちゃうまいんで、それでハマったという感じですね。ただ、たしかに頂上は気持ちいいんですけど、常に頭の中に「この道、下りなあかんのよな」っていうのがまだあるので、ハマってるわけではないかもしれないです。

――プライベートでやっていた山登りを番組にしたのはどんな経緯だったのですか?

最初はフジテレビで『東野アタック』っていう特番で始まったんですよ。それが意外と面白くて、吉本の方から「これ配信でやりませんか?」ってお話を頂いて『東野登山隊』をやろうということになったんですけど、例の闇営業問題で1回木村くんが出られなくて、庄司(智春)さんに入ってもらったんです。それで2泊3日のロケをしたんですけど、その最終日がちょうど木村くんの自粛が解ける日で、下山したらロケバスドライバーをやってた木村くんが迎えに来るというオチになりました(笑)

――『東野登山隊』をやりつつ、BS-TBSでも『アドベンチャー魂』が始まりました。

『東野登山隊』ではプロの方にお願いしてガイドをやってもらっていて、その中に田中幹也さんという植村直己冒険賞も獲った有名な人がいるんですけど、この人が変わってるんですよ。東野さんもその方に興味を持ち出したんです。

確かに、冒険家には面白い人が多いと思って、どんな生活してるんだろう、どういうふうに仕事してるんだろうと興味が湧いてきて、東野さんに「冒険家にスポットを当てた番組ってどうですか?」って言ったら「全然ええで」と言ってくれて。でも、『クレイジージャーニー』(TBS)があるので、その人をスタジオに呼んでVTRを見て話を聞いちゃうと丸パクリになっちゃうから、東野さんが体験するという形にして企画を出したんです。なかなか通らなかったんですけど、1~2年経ってBS-TBSから「やりませんか?」ということで始まりました。

  • 椎葉氏提供

■東野が会うと冒険家が心を開く

――そうして冒険家の方とガッツリやられて、どんな魅力を感じますか?

普通はみんな、お金持ちになりたいとか偉くなりたいとかっていうモチベーションがあるじゃないですか。でも、あの人たちはそんなのを度外視して、それをやって一銭の得にもならないし、全然収入が増えるわけでもないのに、命より優先すべきものがあるという感じで冒険をするんですよね。そんな発想で生きている人がカッコよく見えて。

ヒマラヤ遠征に行くとなったときに、スポンサーを付けるとお金にもなるし、旅費など全て出してくれるから絶対いいと思うのに、それをやると「自分で行ったことにならない」と言って、日本で一生懸命働いて貯めたお金で登るんですよ。要は、スポンサーを付けてしまうと、自分の決めたルートで行けなくなるというのが嫌なんだそうで。

あと、岩壁登るのに靴の底が破れてるとかありますからね(笑)。そういうところで生きている人に、興味を持ったんです。

――そんな冒険家の人たちと東野さんとの化学反応はありますか?

一般の人に対してちょっと壁を作っちゃう冒険家の人たちが、東野さんに関してはそれを取り払ってくれるんです。なんなら、東野さんをちょっとイジってみたりして、冒険家が東野さんに会うとこうなるんだって驚いて、意外な一面が出てくるというのが結構ありました。

――東野さんが変わるというより、冒険家の方が変わるんですね。

はい、東野さんはいつも通りです(笑)。東野さんは変に距離を縮めようとする人ではないので、そういうのが心地良い関係に思えるのかもしれないですね。

――東野さんと言えば、『今田×東野のカリギュラ』(Amazon Prime Video)で鹿や猪を狩ったりして、そういうサバイバルに興味を持ってるからこそ、冒険家の方にリスペクトがあるのでしょうか。

そうだと思います。本人も「俺ってもしかしたら冒険家に向いてるかも」とおっしゃってたんですけど、とにかく我慢強い人なんですよ。めちゃくちゃしんどいはずなのにずっと歩けるんです。トライアスロンとかもやっていて、好奇心がものすごく強いから、冒険家の人も心を開いてくれるんだと思います。