――では、仕切り直しまして。『めちゃイケ』などバラエティをよくご覧になっていたのですか?

お笑いが大好きで、ずっとテレビを見ていたんで、仲間内で企画みたいなのを考えたり、誰かを笑わせたりするのが好きだったんです。でも、自分が表に出るような人間ではないと思っていたので、何かを考えて人を笑わせるとか、話題を作りたいと思ってテレビ局を受けたら、たまたま地元の中京テレビに拾っていただいて。

――とは言いながら、2016年の『M-1グランプリ』にアマチュアで出場されていますよね。

はい(笑)。高校生のときに「ハイスクールマンザイ」という大会があって、イオンで漫才するんですよ。

――営業みたいですね(笑)

それで「イオン賞」とか頂いたんですけど、僕は裏方になってテレビを作るんだという気持ちになって、当時の相方は今もピン芸人をやってます。いやあ、恥ずかしいっすね(笑)

――北山さんくらいの若い世代だと、学生時代は「テレビ離れ」というのを実感しませんでしたか?

大学生くらいになると、みんな見なくなりましたね。でも僕は、『ざっくりハイタッチ』(テレビ東京)とかよく見てて、学生寮に住んでたんですけど、そこにテレビ局を目指してる子がいて、やっぱりテレビが面白いんだなって気づかせてもらいました。その子は今、広島テレビにいるんですけど、切磋琢磨してやってましたね。

――YouTubeやサブスクが勢いを増す中で、地上波の魅力はどんなところでしょうか?

フジテレビの原田(和実、『ここにタイトルを入力』など)さんとか、若い年次が企画して撮ったものが「テレビ番組」という看板をもらって、こんなに多くの人目に触れることって、他にないと思うんです。しかも、リアルタイムで全員が同じ時間に見られるということにも僕は助けられたので、そこはやっぱり強みですよね。世の中の感情を一気に動かせるソフトはやっぱりテレビだし、これからもテレビであってほしいなと思います。

それにYouTubeだと、何かを深く追えなかったり、予算もなかったり、テレビじゃないと入り込めない場所もまだ全然あるし、そもそも日が当たらない可能性がある。だから、僕みたいな若輩者にも寛容に企画をやらせてくれて、評価が返ってくるというところでいうと、まだまだ新しいものが出てくるメディアなんじゃないかと思うんです。

■「中京テレビ」という名前で一枚岩に

――最近はキー局で若手制作者の育成枠を設ける動きが出ていますが、中京テレビさんでも若いスタッフをどんどん登用していく感じがありますか?

そうですね、「土曜バラエティ」という単発枠があって、若手のチャンスはすごくあると思います。カメラを持たせてもらうのが早くて、「失礼がないように」とだけ教えてもらって、いきなり現場に出されて回してきますから。『オモウマ』のADたちもそんな感じです。

最近は上出さんとか、佐久間宣行さんとか、芦田太郎さんとか、制作者の名前でコンテンツを見ていただく時代に入ってきたと思うんですけど、うちは1人のクリエイターじゃなくて、「中京テレビ」という名前で見てもらえるようになればいいなと思うんです。1人1人のパワーは強くないかもしれないけど、一枚岩になっている感じがすごくあります。

――中京さんの『タマげた実家グランプリ』というお正月特番の収録に行ったとき、『オモウマ』にもよく出られる梅沢富美男さんが「中京テレビはこういうの作らせたらピカイチだから」とおっしゃっていましたし、徐々にブランドが浸透しているなと思います。『オモウマ』以外に、どんな番組を担当されているのですか?

ローカルの単発で『オレの一行』や『オカンからの荷物です。』という番組をやらせてもらいました。『オカンからの荷物です。』は、『オモウマ』で取材した力が付いたなと思った番組なんですが、「上京してるお子さんに荷物を届けませんか?」とお母さんに聞いて、スタッフがその荷物を届けに行くというバラエティです。母親の仕送りって、訳わかんないのが入ってたりして面白いなと思って、そこにドラマがあるんじゃないかということで企画しました。届いたものを見るという番組は結構あったと思うんですけど、届けるところも見ていくというのがちょっと新しいと思ったので、あれはまたやりたいなと思います。

――ほかにも、今後こういう番組を作っていきたいというものはありますか?

今回指名していただいた上出さんとも企画会議をさせてもらっているんですけど、やりたいことだらけなので、テレビという環境を最大限使わせてもらって、いろいろ表現できたらなと思っています。僕は人見知りなんですけど、人が好きだということに気づいたので、自分だからこそできる新しいドキュメントというものを、どんどんやっていきたいですね。

――やはり『オモウマ』に携わって、ドキュメンタリーの面白さに気づいたという感じでしょうか。

そうですね。自分の作ったVTRを憧れていた人たちや視聴者の方が見てくれるというところに一番やりがいを感じますし、『100カメ』(NHK)や『オモウマ』のように、ドキュメントってまだ新しい切り口が絶対あると思うんです。そういう何かを発明して、将来は「ドキュメントと言えばこの人」と言われるような作り手になりたいなと、勝手に思っています。

――先ほど挙がったCXの原田さんとか、テレビ東京の大森時生さんとか、テレビ朝日の小山テリハさんとか、最近、若手の制作者の名前が出るようになってきましたが、やはり刺激になりますか?

僕はローカルの局で全く面識がないので、どういうふうに作ってるかとか、将来テレビをどうしていきたいかとか、会ってお話ししてみたいですね。それと、せっかく局と局の垣根がなくなってきているので、何か一緒にできたらいいなと思います。

――ご自身が影響を受けた番組を1本挙げるとすると、何でしょうか?

『100カメ』は本当にすごいなと思いました。『オモウマい店』は客観がありながら、僕らがいることによって起こることも面白がって、視聴者の方も追体験できるような主観と第三者が共存するドキュメントだと思っているんですけど、『100カメ』は客観だけで何が起こるのかをひたすら待つという形なので、ものすごい大変だと思うし、ドキュメントのある意味での最前線だなと思ったんです。「救急病院」の回を見たときに、「これやってみたいな」と思って、それから『オモウマ』でも定点カメラをちょっと増やしました。そこで、意図していなくて、自分の声が入っていない現象がどれだけ物語を作るのに重要かというのを改めて知りました。

――いろいろお話を聞かせていただき、ありがとうございました。最後に、気になっている“テレビ屋”を伺いたいのですが…

放送作家の桝本壮志さんです。駆け出しの頃からお世話になっていて、2週間に1回くらい新しい企画を考える会をやっています。Spotifyで音だけの企画をやってたり、ABEMAのワールドカップで本田圭佑さんを呼んだり、ネットとテレビということにおいて、すごく新しいことをやってらっしゃるなと改めて思っています。

  • 次回の“テレビ屋”は…
  • 放送作家・桝本壮志氏