―― 一般的なバラエティ番組では複数の作家が入ることが多いですが、『魔改造の夜』、『世界SF作家会議』(フジテレビ)、『イグナッツ!!』(テレビ朝日)など竹村さんは単独で作家を務めていますね。
それは昨今の脆弱な予算の都合もあると思いますが、僕自身は責任感って言葉が苦手なので(笑)、本当はなるべくチーフ作家にはなりたくないんです。いつまでも外野で好き勝手なこと言ってる無責任な人でありたい。でもそうもいかないので、1人のときはチーフっぽい建設的な意見と、しょうもないバカ意見を兼任するようにしてます。1人の気楽さもありますし、みんなのアイデアが飛び交うチームワークの楽しさもどっちもあります。
――『タモリ倶楽部』(テレビ朝日)や『ダウンタウンDX』(読売テレビ)のように長年続いてきた番組に途中から入られることも多いですね。
本当に夢みたいです。どちらもイチ視聴者として見ていた番組ですので、ミーハー心が疼いて、まだ会議に出ててもふわふわしてます。いい加減慣れろよって話なんですけど。企画は散々考えられてきてるので、僕が出す案はとっくの昔に誰かが思いついてるのが困りものです。
『タモリ倶楽部』が唯一無二なのは、視聴者以上に、タモリさんがいかに楽しめるかって視点で企画を考えるんです。ある意味、日本一ストライクゾーンが狭い番組。だから独特だし、面白いんだろうなって思いました。(主要ターゲットの)Fコアの視聴率が…とかいい意味で会議で出たことないです。タモリさんが楽しんでいるのを楽しむ番組なんです。
――竹村さんのようにサブカルを好きだった人にとって、『タモリ倶楽部』は憧れの番組じゃないですか?
めちゃくちゃうれしかったですね。もう放送作家としてはゴールした気分です。『タモリ倶楽部』みたいな番組を作りたいとは思ってましたけど、まさか部員になれるとは夢にも思いませんでしたから。だから会議が楽しいです。ただでさえ企画の間口が狭いのに、コロナ禍でロケに行けなくなったので、さらに制約がある。でも制約があるほうが燃えますし、あるからこそ新しいアイデアが生まれたりしますし。…とか言いつつ、早くロケやりたいです。制約ありすぎです(笑)
■松岡茉優と伊藤沙莉というモンスター
―― 一緒に仕事をしてすごいと思ったディレクターは、どなたになるでしょうか?
岡宗秀吾さん。放送作家になりたてで岡宗さんと出会って、いきなり挫折したんですよ。放送作家になりたいと思ってたくらいなんで、そこらへんのカルチャーの知識は負けないっていう自負はあったんです。学生時代も会社に入ってからも僕より詳しい人はいなかった。でも、岡宗さんと堀さん、この2人に会って思いっきり挫折しました。僕なんかより全然深いし、広い。なんなら実体験も加わってるから太刀打ちできない。これがプロの世界かって。今思うとその挫折のおかげで謙虚になれたんです。まだまだ勉強しなきゃダメだって。でも、十何年経って分かったんですけど、その2人がぶっちぎりなんです(笑)。いきなり最高峰の人に出会ってしまったという。
――タレントさんの中で印象的だった人は、いかがですか?
めちゃくちゃいっぱいいます。山田孝之もそうですけど、芸人さんじゃないのに面白い人が好きです。びっくりしたのは松岡茉優さん。TBSの深夜特番でまだ彼女が19~20歳くらいの時に出てもらったときに、台本の理解力と超えっぷり、頭の回転の速さとボキャブラリーの豊富さに驚きました。松岡さんとはその後『その「おこだわり」、私にもくれよ!!』(テレビ東京)でご一緒するんですけど、そこで伊藤沙莉さんに出会って、すごいモンスターがもう1人いた!ってなりました。
芸人さんには尊敬しかないので、逆に企画段階から深く関わらせてもらえる番組は、芸人さんにはなるべく頼らないようにしてます。芸人さんを生かした番組はたくさんありますし、いま一番尖った番組は何かと言ったら、芸人さんが1人も出ないバラエティだと思うので。それは民放のゴールデンタイムではあり得ない。絶対どこかしらに芸人さんはいる。芸人さんがいないとツッコミがなくなって、ツッコミがないと途端に不安になる。どう見ていいか分からない。芸人さんは番組のチュートリアル(=解説)を笑わせながら教えてくれるありがたい存在なんです。よく言う「シュール」って、たぶん見る人の味方になってくれるツッコミがいないことだと思うんです。面白いか面白くないか全部自己判断になる。そういう空気が好きなんです。テレビがいつも親切だと思うなよって(笑)
――最近はコア視聴率が重視されて、お笑い番組が多くなってますね。
待ち望んだことですけど、飢餓状態が長すぎたのか、テレビ界全体の鼻息が荒くて、いささか増え過ぎちゃってません? だから今はゴリゴリの情報番組作りたいですね。全員が同じ方向を向いているときこそチャンス。逆サイドが大きく空いてるので。