――企画のアイデアはどのように考えるんですか?
ラッキーなことに好奇心は人一倍旺盛なので、“種”みたいなものはたくさんあるんです。なので他の会議に出てたり、本を読んでたり、映画を見てると、突然、土の中に埋めてた種と反応して企画の芽を思いつくことが多いです。あとはなるべく、大きいテーマからは考えないようにしてます。『魔改造の夜』も、トースターのパンが超高く飛んだら面白いっていう画が浮かんで、そこから発想してます。テレビももう70年近くやってきて、テーマは食い尽くされてるので、どうしたって言葉を言い換えるか、見せ方を変えるかの細かい作業になってしまう。テーマよりかは見たいシーンから考えて、あとはそれをどう包むか考えます。
僕は「会議ネタ」って言われる実現できないバカネタが好きなので、放送作家としては二流だと思ってます。番組にとって作家の自己満足なんてどうでもよくて、ディレクターのためになる企画を考えるのが一流の作家の仕事ですので。でもつい考えちゃう。たまに会議ネタにヒントが埋もれてたりもするので…。うーん、やっぱりこういう企画術みたいなことはあんまり話したくないです。ハードル上がるだけなんで(笑)
――通ってうれしかった企画は何ですか?
それは「地下クイズ王」ですね! あれはライフワークにしたいくらい。今でもどうにかならないかってずっと考えてるんですけど、一番自分が見たい企画なんです。最近、地下クイズの題材になる話題ばっかりじゃないですか! 有村昆さんのセックスクイズなんて、地団駄をどれだけ踏んだことか! この記事読んでる人、誰かお金出してください(笑)
■山田孝之は結婚を申し込むためのお土産だった!?
――山田孝之さんとはどのように知り合ったんですか?
僕はレコード会社に務めてる兄と仲がいいんですけど、兄は僕を“マイナーがイケてる病”に感染させた張本人なんです。その兄界隈の人たちと放送作家になりたての頃から仲良しで、変な人ばっかりなんですけど、その中の1人が山田孝之でした。当時は主演ストリートのど真ん中を歩く王道の大スター。横道にズレる前(笑)。芸能界という同じ大きな屋根の下にはいましたけど、住む部屋が違いすぎて、一緒に仕事をしようとは思ってませんでした。
――そんな山田さんと仕事として付き合い始めるきっかけは何だったのですか? 『A-Studio+』(TBS)では山田さんを「僕の手足」と言っていましたが(笑)
そこだけ切り取られると「竹村、調子に乗ってるな」って絶対言われます(笑)! 「僕の頭脳です」って山田孝之に言われたら、まあそう返すじゃないですか(笑)。僕が結婚するときに妻の親が山田孝之のファンだったんですよ。で、「娘さんをください」って言うときに何か強力なお土産が必要だと。それで『勇者ヨシヒコ』(テレビ東京)のDVDを買って、山田孝之にサインをしてもらったんです(笑)。そのときに最近フェイクドキュメンタリーが楽しいよねみたいな話を2人でしていました。
その後、松江(哲明)さんから相談を受けて、『東京都北区赤羽』を実写化したいと。そのとき、清野とおるさん役にパッと浮かんだのが山田孝之だったんです。でも面白そうだけど、これだ!ってならなくて、考えているうちに「あ、本人役だ!」って思いついた。企画が良くなるときって2段階あるイメージです。1個思いついてもう1個思いつくと、見たことない企画になる。山田孝之は昔から仕事決めるのが早いんで即決でしたね。過去やった作品の中で一番の反響があったらしくて、ホッとしました。あーこれで次も好きなことできるって(笑)。一発目がうまく行くとその後いろいろやりやすくなるじゃないですか。
――松江さんとは10月からWOWOWで放送される『キン肉マン THE LOST LEGEND』もやられますね。
僕と松江さんは「崩壊の物語」が好きなんです。『ロスト・イン・ラ・マンチャ』とか『ホドロフスキーのDUNE』とか。それで国民的な漫画の実写化をやろうとしてできなかった話をやりたいって思ったときに、2人とも『キン肉マン』世代だったので、ダメ元で『キン肉マン』を題材にやりたいとオファーしたらまさかのOKが出たんです。
松江さんとはこれまで、『―北区赤羽』以降、いくつかの作品でご一緒しましたが、「集大成」と言ってました。これまで一緒に作った作品の全部の要素が入ってます。なにせ「キン肉ハウス」もリアルに建てちゃいましたから(笑)