• 『支配人やってみませんか?』 (C)ABCテレビ

――こういう番組を作っていきたいというものはありますか?

今やっている『支配人やってみませんか?』(6月20日まで毎週日曜23:00~※関西ローカル、TVer配信)という企画が、結構自分としてはやりたかった企画なんです。今、急にネタ番組が増えてきている中で、違うことをやらないといけないというのもありますけど、去年の『M-1』でマヂラブさんの“漫才か漫才じゃないか論争”があったじゃないですか。これって、芸人さんが論争してるのかと思ったら、基本的に表に出られてる方は「あれは漫才」とおっしゃってたと思うんですよ。じゃあ誰が「漫才じゃない」と言ってるのかと思ったら、一般の方だった。

――みんなが“評論家”になるんですよね。

そうそう。この“1億総お笑い評論家現象”がちょっとだけ気持ち悪いなと思っていて。映画とか絵画とかは理解できないと「僕には分からない」と言うけど、お笑いとかバラエティ番組には「つまらない」「面白くない」ってなるじゃないですか。ちょっと下に見られてるところがあるからかもしれないんですけど、何かそうならないネタ番組ができないかなと思っていたんですね。そもそもお笑いって“好み”のもので「面白い・面白くない」じゃなく「好きかどうか」という目線で。

僕が大好きなイベントで、「京都大作戦」という10-FEETさんというバンドが主催しているフェスがあるんです。関東で言うと氣志團万博も好きなのですが、アーティスト自身がラインナップを悩みながら決めてオファーされるということで、出る側のアーティストも主催者側もお客さんも、独特の空気があってスゴく良い雰囲気のフェスなんですよ。お笑いでも、SLUSH-PILE.の片山(勝三)さんが、「東京03寄席」とか「ニューヨーク寄席」とか、芸人さんが自分たちでゲストをブッキングするというライブをやってて、すごいメンバーがそろって面白かったんです。それが印象に残って作家さんと相談して、お笑いが大好きな方が「支配人」となって、自分の愛する芸人をキャスティングし、舞台をプロデュースする番組を企画したんです。

初回は三代目 J SOUL BROTHERS from EXILE TRIBEの山下健二郎さん、2回目は日向坂46の佐々木久美さんに支配人をやっていただいたんですけど、本当にうれしそうに「自分だけの夢のラインナップです」と言っていただけて。個人的には佐々木さんがデニスさんを選んだ時点で、だいぶガチやなと思いましたね(笑)。デニスの植野行雄さんはネタ前に佐々木さんが愛を語っているVTRが流れてるのを見て、うれしそうにしながらも「あの子のためにもスベられへんな」と言ってて、独特の緊張感がありました。

――山下さん、佐々木さんに、3回目はファーストサマーウイカさん、4回目はDJ KOOさんと、異ジャンルの方を支配人にされたんですね。

最初の企画書では、芸人さんが支配人になると書いていて、結構ストイックな企画にしてたんですが、異ジャンルで、同じように板の上でパフォーマンスする方が考えたほうが、ポップで良いかなと思って、この個性豊かな方々にお願いしました。

■「深く刺す」コンテンツが評価される時代に

――YouTubeやサブスクなどの配信が出てきて、テレビの役割というのはどう考えていますか?

本当に難しいですよね、答え出せてる人いるんですかね…。実は6月1日付でコンテンツクリエイト部という配信も含めてコンテンツを考えていく部署に異動になったので、まさにそこと向き合わないといけない状況になりまして。これはアントニーさんに聞いた情報なのでホントか分からないんですが(笑)、去年ステイホームになったときに、意外とYouTubeが伸びなくて、NetflixやAmazonプライム・ビデオが伸びたというんですよ。つまり、ほとんど家にいるとなったときに、ちゃんとした映画やドラマを見たくなったんだろうと。それを聞いたときに、やっぱりまだテレビにも夢があると思いましたし、勝負せなあかんなという気持ちになりましたね。

地上波の意義はやっぱり、『M-1グランプリ』だろうし、『格付けチェック』だと思います。ワールドカップの中継もそうですけど、1つの画面をいっぱいの人で見るというのがテレビなので、そういうところを目指すべきだと思うんです。これも所さんがおっしゃってたんですけど、YouTubeで100万再生がすごいと言うけど、毎週やってる地上波のテレビなんて再生回数にしたら平気で2,000万回でしょうと。そこは自信を持ってやっていきたいと思います。

一方で、『水曜日のダウンタウン』の藤井健太郎さんがよくおっしゃっている「深く刺す」というコンテンツに憧れがあるので、まずはそういうコンテンツを作って、どう広げてお金にしていくかというのを考えていきたい。今までの視聴率しか評価指標がなかったときより、「深く刺す」コンテンツが評価される時代になってくると思うので。『クセスゴ(千鳥のクセがスゴいネタGP)』ではトータルテンボスの大村さんの息子を出してスターにして、『有吉の壁』もコント師さんたちが輝きを増すようになって、各局さんすごいなと思うので、自分も頑張らんとなあという意識ですね。

――ご自身が影響を受けた番組を挙げるとすると、何ですか?

やっぱり原体験は『ごっつ』ですね。松本さんの『遺書』を読んで、「こういうことを考えてるんだ」と小学生ながらに憧れて、(放送作家の)高須(光聖)さんの本もブログも読んでたし、高須さんと名刺交換するときに緊張しました。だからこそ、YOUさんとほんこんさんの夫婦役にはシビれましたし、今田さんや東野さんとも仕事させていただいて、本当にありがたいです。

――いろいろお話を聞かせていただき、ありがとうございました。最後に、気になっている“テレビ屋”をお伺いしたいのですが…

小松純也さんです。僕の原体験である『ごっつ』を担当されてて、フジテレビさんから、共テレ(共同テレビ)さんに行かれて『チコちゃん』や『人生最高レストラン』などヒット作を生み出し、さらに独立されるという、局員の新しい道を示されてる存在だと思います。『DRAGON CHEF』でご一緒してるんですが、主にお会いするのがリモートだったりして中々お話を雑談混じりで聞くこともできないので、演出面の話だけでなくいろいろお聞きしてみたいです。

  • 次回の“テレビ屋”は…
  • 『チコちゃんに叱られる!』『人生最高レストラン』プロデューサー・小松純也氏