――芸人さんとタッグを組むケースが多いと思うのですが、特に距離の近い方はどなたになりますか?
『ハッキリ5~そんなに好かれていない5人が世界を救う~』という6年前にやった番組が、なぜか今年からHuluさんやAmazonプライム・ビデオさんやU-NEXTさんなどで配信がスタートしたりしてありがたいんですが(笑)、MCをしていただいた小籔(千豊)さんには良くしていただいて、山里(亮太)さんもよくお仕事させていただいてます。小籔さんとはプライベートでも一緒に海外旅行に行かせていただいたり、今は小籔さんが『フォートナイト』(オンラインゲーム)にめちゃくちゃハマってらして、よくご一緒させていただいてます。コロナ禍もあって、この1年は週何回もゲームの世界でお会いしてますね(笑)
――出会いはどこだったのですか?
最初は僕が『「実は…」』のディレクターだったときに小籔さんと一緒にロケをさせてもらって、当時は「ABCの子かあ」くらいの感じだったと思うんですけど、ガッツリやらせてもらったのは『ハッキリ5』からですね。日常の些細な出来事から社会問題までを本音でぶった斬るという番組なんですけど、『アメトーーク!』で小籔さんが「カメラ女子が空・猫・カプチーノの写真を撮ってイキるな!」みたいな話をしてて、一方で山里さんは『ゴッドタン』で「イベントとか主催してるやつで『面白いから芸人になったらいいのに』とか言われてるやつ、入ってみろ! ゴリゴリのタテ社会見せてやる!」とおっしゃってて、めちゃくちゃ面白いなと思ったんです。このお2人を中心に、そういう本音が言える番組をやりたいなと思って、2年くらい企画を出し続けて、『ハッキリ5』が特番を経て半年限定でレギュラーができました。
小籔さんは、若手時代に喫茶店でずっと探り探りトークしてたのが好きだったらしく、『ハッキリ5』ではそれができるから楽しいとおっしゃってくれて。それと、「あんなに最後までトークさせてくれる番組はない」と。『すべらない話』もそうだけど、『ハッキリ5』はそこにラリーも入ってくるから楽しいとおっしゃってくれてました。あの番組は、結構芸人さんたちにエピソードやネタもおんぶに抱っこだったんですけど、編集にも信頼を持ってくれたみたいで。1回OA見て「これはチェックしなくても大丈夫だ」と言ってくださったのを聞いて、うれしかったですね。そこから結構深い話をするようになりました。
――『コヤブソニック』もお手伝いされているんですよね。
これも大きかったですね。僕がプライベートでフェスに行くのが好きっていう話を散々していたのもあって、「演者さんとの接し方も見て芝さんだったら安心できるからお願いしたい」とおっしゃってくださったんです。会社に相談したら「ありがたい話だから行ったほうがいいよ!」と言ってくれて。『コヤソニ』ではトイレの数まで小籔さんが気にされてて、その姿勢にも頭が下がったのですが、その打ち上げで、スチャダラパーのANIさんとチャットモンチーのあっこちゃん(福岡晃子)さんに「『ハッキリ5』大好きでした」と言われたときは、ベタですけど「学生のときの自分に言ってあげたい」というくらいうれしかったですね。
――今は小籔さんと番組ではご一緒されていないので、また新たに立ち上げたいという思いはありますか?
ゲームでしかお会いしてないですからね(笑)。いつでもお願いしたいんですけど、今はご活動がいわゆる芸人さんだけじゃないので。新喜劇が大前提にあって、テレビも普通に出られて、大河や日曜劇場とかビッグドラマも出て、バンド活動で「ドラム練習せなあかん」というのもあって、その間に12時間くらいゲーム配信されてますからね(笑)。だから、小籔さんにお願いするなら、他の方でもいいというものではなく、「小籔さんだからこそ」という企画をやりたいですね。
――山里さんの印象に残るエピソードはいかがですか?
山里さんが、『ハッキリ5』の最終回のエンディングトークで「小籔さんの『バーベキューの話』が本当に面白かった」と言っていたんです。それは、「全部同じタレで食うて、飲みかけのコップが散乱して、何やったら肉焦げたとか言うて、『バーベキュー最高!』なんてそんなわけない」っていう話なんですけど、最近山里さんに聞いたのは、当時そのトークがすごく印象に残って、全部ノートに書き起こした、とおっしゃってたんですよ。やっぱり努力の天才でもあるというか、背筋が伸びる思いでしたね。あと、『ハッキリ5』の打ち上げのときに「編集には絶大なる信頼を置いてますから」ってサラッと言ってくださって。あの番組って、芸人さんのネタに編集でこっちが手を入れることになるから、相当気を使っていたので、すごく励みになりましたね。
その後、『M-1』に南海キャンディーズさんが再挑戦するときに、密着させてもらったんですよ。コンビが復活して大宮の劇場に出るとき、それこそ山里さんと一緒に電車乗って向かって、しずちゃんさんと楽屋でやり取りして、舞台に向かわれて、自然とあのポーズで本番に出たときは、舞台袖で見ててゾクッとしました。
■ノンスタ石田の才能、YOUの人間力
――NON STYLEの石田明さんが脚本を書かれた『クソみたいな映画』(20年)では監督をされていますよね。
NON STYLEさんとは、僕がADで先輩について行った「baseよしもと」のさよなら特番のロケバスでずっと一緒にしゃべってて、仲良くさせてもらうようになったんです。僕が企画した『明石家さんまのコンプレッくすっ杯』とか『ハッキリ5』とかに石田さんに出ていただいて、定期的にお会いできている感じだったんですけど、あるとき、ABCのラジオでNON STYLEさんと上司でもある“とこわか吾郎”さんがやってる番組があって、差し入れを持って遊びに行っていたりしていたんです。ちょこちょこ通ううちに、吉本さんの沖縄国際映画祭でテレビの人間が映画を撮る企画があって、石田さんに持ちかけてみたら、乗ってくださいました。
ラジオ前とかに喫茶店で石田さんと打ち合わせさせてもらって、案を出し合ったんですが、石田さんが「だったら。こういう設定の40分くらいの脚本がストックであるから、それをリライトして脚本にましょうか」とおっしゃったので、「40分の台本って何ですか?」って聞いたら、「コントにするには長いから、一旦40分くらいで書いてるんです」って言って、この人やっぱり半端じゃないなと思いましたね。どこに出す予定もないのに40分の台本がストックとしてあるって、すごい才能ですよね。
この『クソみたいな映画』では、かわいがってもらってるYOUさんとほんこんさんに夫婦役で出てもらったんですけど、僕は小学生のときに『ごっつ(ダウンタウンのごっつええ感じ)』が大好きだったので、撮ってるときに一瞬「俺、この2人と知ってるという関係で今やってるんだよなあ…」と思って、なんか変な感覚でしたね。
YOUさんとは『これって私だけ?』の番組でもご一緒したのですが、プライベートでも一緒に映画見に行ったりフェスに行ったりさせてもらってます。本当に人として謙虚で、YOUさんとマキシマムザホルモンさんのライブに行ったときに「売り切れるから、Tシャツ買えたら買っといて!」と言われたんですけど、「正直、もらえるんじゃないですか?」と聞いたら、「みんな並んで買ってるのに、おばちゃんが裏から手に入れるって、そういうの嫌じゃない?」とおっしゃってて、背筋が伸びましたね。フェスとかでも絶対に並んでグッズ買ったり、人として勉強になります。
■“話しやすい”ことがプラスになれば
――お話を伺っていると、制作者さんの中でも芝さんは特に演者さんとの距離感が密だなと思うのですが、いかがですか?
大前提はミーハーだからだと思います(笑)。基本的に演者さんという時点で、僕の100倍才能がある人たちだと思っていて、こっちが必死に頑張って追いつくしかないと思ってるから、ご一緒させていただけるのがまずありがたいというのと、演者さんと仲良くするというのもABCの文化の1つだと思います。「コヤソニ手伝ってほしいと言われてるんですけど」と言ったら「ありがたいから行って来い」と言ってくれますから。
逆にバラエティ界では、「あくまで演者さんとは一定の距離を置くべき」という哲学のスタッフもたくさんいらっしゃると思いますけど、僕は「やりにくかった」というのを聞いてもらえる関係でいたいと思うので、ズブズブになっちゃいますね。ニューヨークの屋敷さんと数年前に、男2人でやることなさ過ぎて一緒にナイトプールに行って、雰囲気に負けて30分ぐらいで帰った、みたいなこともありましたが(笑)。ぜひお仕事でもご一緒して、“話しやすい”ことがプラスになれば良いなと思います。