――『ハッキリ5』の山里さんとまたご一緒されたのが、次世代スター料理人を発掘するオーディション番組『DRAGON CHEF』(毎週土曜24:05~、決勝ラウンド:7月4日19:00~テレビ朝日系全国ネット)ですね。「料理人のM-1グランプリ」を謳っていますが、どんな部分に『M-1』のイズムが生きているのでしょうか?
僕は『M-1』をがっつり中心で担当したことはないのですが、「出場されている方へのリスペクト」をかなり大事にしていることだと思います。『M-1』ってスタジオの熱を下げないために、CM中も芸人さんのVTRを流して、次の出番の芸人さんのために盛り上げたり、OAに出ない演出も多いんですよ。こっちの都合で芸人さんにとってマイナスになることは絶対にしないという意識がありますね。
『DRAGON CHEF』に出られるお店の方は、このご時世で大変だと思うんです。テレビに出るということで宣伝になる部分はあるかもしれないですけど、「レシピ考えるのに徹夜してきました」というシェフもいらっしゃって、時間とお金をものすごい割いて参加されているんです。そういう方たちが勝負される舞台では、なるべくその思いを尊重したいというのがあります。
実はこれもABCらしさというところにつながると思うんですけど、『ナイトスクープ』でも『新婚さんいらっしゃい!』でも『ポツンと一軒家』でも、「出ていただく方へのリスペクト」が徹底してるという文化がありますね。
――考えてみると、先ほどから挙がっている『ナイトスクープ』『相席食堂』『新婚さんいらっしゃい!』『ビフォーアフター』『ポツンと一軒家』のほかにも、『アタック25』『世界の村で発見!こんなところに日本人』など、ABCさんは一般の方が主役の番組が多いですよね。
はい、予算の問題もあるかとは思いますが。会社入ったときに、『ごっつ』とか『めちゃイケ』みたいな、芸人さんが集まって毎週コント撮るなんてのはスゴくお金かかって、そうそうできる番組ではないのだなと学びましたし。やはりABCのストロングポイントとしては、「人間ドラマがあるところを追いかける」という文化があるかもしれないですね。
――それがまさしく『DRAGON CHEF』にも生きていると。
そうですね。この番組の担当になって、ミシュランのお店で修業して北海道に移り住んで店を立ち上げてミシュランを獲るとか、奥さんの実家の山口に移り住んで店をオープンしたとか、「こんな人が日本におんねや!」って驚いたんです。だから番組としては、料理の内容も紹介しますが、その料理人の方たちの背景を描いていくことも大事にしています。
■所ジョージが発した長寿番組の秘けつ
――今年からは『ポツンと一軒家』(毎週日曜19:58~)も担当されていたということですが、中に入って高視聴率番組たるゆえんを感じる部分はありましたか?
『ポツン』については確実にこの連載の中野俊成さんの記事を読んでもらったほうがいいと思います。まだ担当して3カ月ぐらいなので(笑)。この短い間で印象に残っているのは、所さんの言葉ですね。僕が入って1回目か2回目の収録終わりに、所さんが、ふと「この番組はいいよね。長く続く番組って、都会っぽいものとすごい田舎っぽいものが共存してる気がするんだよね」とおっしゃっていたんです。「この番組だと、田舎の方達の素朴な暮らしを見せるんだけど、それをボクとか林先生という都会の人が見てたりとか…」みたいな感じで。
――たしかに、所さんの番組だと『笑ってコラえて!』や『目がテン!』もそんな要素がありますね。
はい、『ポツン』に関しては映像でも「日本の田舎の情景」や「古き良き日本家屋」みたいなものを、ドローンから撮った“今っぽい画”で見せる、というのもポイントになっているなと気づかされましたね。
あと、あの番組は『ビフォーアフター』のチームでやってるので日本家屋への造詣が深くて、ディレクターが「この梁は立派ですね」とか言って「ようそんなこと言えるなあ」と思うことも多いです。そういった日本人の根源的にある古き良きものへの郷愁ってあるのかなと。大ヒットした『君の名は』も都会と田舎のカットバックだったりしますし。いち視聴者で見ていると、衛星写真をきっかけに出てくる人間ドラマが面白いなあくらいの認識でしたけど、スタッフとして中に入って所さんの一言を聞いて、そう思いました。
あと所さんで印象的なのは、ポツンの主の方が、皆さん捜索隊のスタッフに親切にしてくださるんですけど、そこで受け皿にお茶を置いて出すのを見て、たぶんOAでは使わなかったと思うんですけど、「人間っぽいよね」とおっしゃってたんです。要は、お茶を飲むということに関して、受け皿は必要なものではない、ペットボトルでも良い、と。それを、都会から来たお客さんだからお茶受けに載せて出すということをちゃんと見ていて、「お茶をお茶受けに載せて出すって、このムダが人間的で良いよね」とおっしゃってて、やっぱりすごい感受性やセンスをお持ちなんだなと思いました。
――最近は世帯視聴率ではなく、広告ターゲットの個人視聴率の数字が重視されるようになりましたが、『ポツンと一軒家』の作り方に変化はあるのでしょうか?
もう『ポツン』は数字が突き抜けているので、ないですね。強いて言えば、ゲストがうっすら若くなってるくらい(笑)。かなりの影響力もあるし、実績がある番組なので、無理にターゲットを変更せず、引き続き今強いところを伸ばしていこうという感じだと思います。