3番目に注目されたシーンは20時47分で、注目度74.9%。

蔦重は吉原の太客である和泉屋三郎兵衛(田山涼成)に乗っかり、老中・田沼意次の部屋に潜り込むことに成功していた。「恐れながら、吉原も運上・冥加を納めております」蔦重は意次と和泉屋の会話に割り込み、なんと意次に直談判を始める。岡場所によって吉原の末端の女郎たちが困窮にあえいでいる実情を懸命に訴え、岡場所へ警動を行うように願い出るが、老中として宿場町の発展による国益を第一と考える意次は蔦重の申し出を拒絶する。蔦重は必死に食い下がるが、理路整然とした意次の考えに蔦重は次第に返す言葉を失くしていった。

意次は女郎たちが食べるのに困っているのは岡場所や宿場のせいだけではなく、忘八の主人たちの不当に高い取り分や、集客の方法にも問題があるではないかと諭す。「お前は何かしているのか、客を呼ぶ工夫を」という意次の問いかけに目が覚めた蔦重は「田沼様! 田沼様! お言葉、目が覚めるような思いがいたしやした! まこと、ありがた山の寒がらすにございます!」と頭を下げた。そんな蔦重を遠巻きに見ていた1人の男がいた。意次の嫡男・田沼意知(宮沢氷魚)だった。

渡辺謙が見せたさすがの貫禄

ここは、ハリウッド俳優・渡辺謙の圧倒的な存在感が、大河ドラマファンの熱い視線を集めたと考えられる。

渡辺謙は、さすがの貫録だった。世界的にも高い知名度を誇る渡辺の登場で、ドラマが一気に締まった。渡辺は1984年『山河燃ゆ』、1987年『独眼竜政宗』、1993・1994年『炎立つ』、2001年『北条時宗』、2018年『西郷どん』に続き、今回でなんと6回目の大河ドラマの出演となった。ちなみに身長は187センチ。しかもそのほとんどが主役や重要な登場人物であり、今回ももう1人の主役といわれる田沼意次役だ。

SNSでも、「田沼意次のラスボス感すごいな」「田沼意次を渡辺謙さんが演じるなんて期待大!」「渡辺謙が出てきた瞬間に場面がビシッとしまったよね」「渡辺謙さんの田沼意次のセリフ回しにほれぼれしました」と、大いに盛り上がった。

田沼意次といえば、賄賂を受け取り私腹を肥やした悪役というイメージが強いが、渡辺が演じることでべらぼう前と後で意次のパブリックイメージは180度変わるのではないだろうか。田沼意次が幕政に関わった時代は「田沼時代」と呼ばれている。それまでの幕府が行った緊縮財政政策から一転し、商人資本を利用した経済政策が特徴となっている。「株仲間」という同じ種類の商品を扱う商工業者たちが集まった組合を奨励し、鉱山・水田の開発などの整備も行い、幕府財政が改善された。

一方で賄賂が横行し、政治が腐敗した側面もある。冒頭にあった「明和の大火」のような災害も多かった時代でもある。貧困にあえぐ女郎たちの待遇を改善したい蔦重は、厠で出会った男の助言で、幕府の権力者である意次に陳情した。本来は庶民が上訴するには、目安箱や町年寄という役人を通じて行うのが一般的だった。直接老中に陳情するというのは非常に破天荒(※あり得ない設定だという声もあります)だ。だが、蔦重の行動をとがめることなく対応した意次は、懐の深い大人物感がにじみ出ていた。

また、意次の問いかけに即答で応じた蔦重も聡明な一面を垣間見せた。横浜流星も緊張しただろう。これから2人がどのように関わっていくのか非常に楽しみだ。