2番目に注目されたのは20時54分で、注目度75.6%。蔦重が義父にシバかれるシーンだ。
蔦屋では主人である義父の駿河屋市右衛門をはじめ、女郎屋の主人たちが勢ぞろいしていた。「おっ。親父様方、どうしたんですか?」老中・田沼意次との面会を済ませ、意気揚々と帰ってきた蔦重はのんきに声をかけるが、主人たちの間には剣呑な雰囲気が漂っている。店先にはなぜか大きな桶も用意されていた。
蔦重が独断で警動を願い出た影響で奉行所から吉原に確認があり大騒ぎになったらしく、事前に何の断りもなく独断で行動した蔦重に、主人たちの怒りは頂点に達していた。蔦重の行動は吉原のためを思ってのことだったが、主人たちの中に理解する者は1人もいなかった。
「じゃあ、人を呼ぶ工夫をしましょう!」と、蔦重は提案し意次とのやりとりを皆に話すが、市右衛門は下働きの蔦重が幕府の権力者である意次と会ったと知り、さらに怒りを爆発させてしまう。「この、べらぼうめ!」とうとう堪忍袋の緒が切れた市右衛門が蔦重を殴りつけると、それを皮切りに蔦重は皆に袋叩きにされた。のされた蔦重は体がまるごと入る大きさの桶をかぶせられ、桶の上には重しの石が置かれた。蔦重の出しゃばりな性格に辟易としていた主人たちの、蔦重に対する激しいお仕置きであった。
衝撃的なお仕置方法に驚がくの声
このシーンは、蔦重が受けた斬新なお仕置きに視聴者の注目が集まったと考えられる。
蔦重にとって幼いころから面倒を見てくれた朝顔(愛希れいか)や浄念河岸の女郎たちが餓死したことは大きなショックだったのだろう。蔦重は反権力の精神と行動力に満ちあふれた人物だったと伝わっており、ここまでの展開を通して作中でもよくその性格が描かれている。なりふり構わず女郎たちのために行動する蔦重は、情に深い魅力的なキャラクターであるが、今はまだ下っ端にすぎない。老中・田沼意次に陳情までしてしまう暴走ぶりに視聴者もヒヤヒヤさせられたのではないだろうか。案の定、蔦重は親父様方にシバかれてしまった。
SNSでは、「あんな桶に三日三晩も閉じ込められるなんてこわい…」「1話で主人公が袋叩きにされて桶にまで閉じ込められるなんて、すごい大河ドラマだな」「こんな桶の使い方があったんだな」と、衝撃的なお仕置方法に驚がくの声が上がった。
今回採用されたこのお仕置き方法は、「桶伏せ」と呼ばれるもの。本来は吉原で遊んだのに、代金を払えなかった客に対して行われた私刑だ。着の身着のままで閉じ込められ、糞尿も垂れ流しでさらしものにされるという過酷な刑だった。唐丸や次郎兵衛(中村蒼)が励ましてくれたのがせめてもの救いだった。
また、女郎屋の主人たちの鬼畜っぷりにも注目が集まっており、「忘八達がそろって歩いてくるシーン、悪役集団の良さが詰まってる」「まるでアベンジャーズやね」といったコメントがアップされている。脚本の森下佳子氏も初回の女郎屋の主人たちの悪逆非道っぷりを見て、「ひどいなって思いながら書いたけど、実際にみるともっとひどい」と、俳優陣に対してこの上ない称賛を送っている。
「忘八」とは儒教における「八徳」である仁(じん)・義(ぎ)・礼(れい)・智(ち)・忠(ちゅう)・信(しん)・孝(こう)・悌(てい)を忘れたものを指す。仁は人に対する思いやりや愛情、儀は正義感、礼は礼儀、智は知性、忠は忠誠心、信は信頼、孝は親孝行、悌は兄弟愛をあらわす。こういった徳を忘れた倫理観や道徳心を持たない最低な人間という意味であり、転じて女郎屋やその主人を指す言葉としても使われていた。かなりインパクトの強いワードだ。今年の流行語大賞を狙えるかも知れない。