テレビ画面を注視していたかどうかが分かる視聴データを独自に取得・分析するREVISIOでは、5日に放送されたNHK大河ドラマ『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』(総合 毎週日曜20:00~ほか)の第1話「ありがた山の寒がらす」の視聴者分析をまとめた。

  • 横浜流星=『べらぼう』第1話より (C)NHK

    横浜流星=『べらぼう』第1話より (C)NHK

低迷する吉原にブレイクスルーを起こす仕掛け

最も注目されたのは20時56~58分で、注目度82.2%。蔦重こと蔦屋重三郎(横浜流星)の中で、低迷する吉原にブレイクスルーを起こす仕掛けがひらめいたシーンだ。

老中・田沼意次(渡辺謙)に、独断で警動を願い出た蔦重は、義父・駿河屋市右衛門(高橋克実)ら女郎屋主人たちの怒りを買い、仕置きとして桶の中に閉じ込められていた。桶の中の蔦重を気遣う者は、唐丸(渡邉斗翔)や蕎麦屋の主人・半次郎(六平直政)以外にはいなかった。蔦重は「吉原のためにやってんのに…」と、暗い桶の中で孤独感と無力感にさいなまれながらも、意次が言った「客を呼ぶための工夫」についてひたすらに考えをめぐらせていた。

皮肉にもこの静かな桶の中は、集中して考えるにはうってつけの場所だった。蔦重は三日三晩、考えに考え抜き、ある天啓を得た。吉原で本を片手に大いに盛り上がる男たちの姿が目に浮かんだのだ。翌朝、桶を外され解放された蔦重は、よろめきながらも蔦屋の店内にあった一冊の本を手に取った。その本の表紙には『吉原細見』と書いてあった。

  • 『べらぼう』第1話の毎分注視データ推移

「重三郎のバイタリティすごい、見習わないと」

注目された理由は、蔦重のサクセスストーリーの始まりに多くの視聴者の視線が「くぎづけ」となったと考えられる。

意次の「お前は何かしているのか、客を呼ぶ工夫を」という言葉は、困窮する女郎たちを救いたいと願いながら、自分は何もしていなかった蔦重に深く突き刺さった。そこで蔦重はさっそく自分にできることを考え行動を起こそうとする。このスピード感は素晴らしい。ビジネスパーソンに特に刺さるシーンだったのではないだろうか。

SNSには、「重三郎のバイタリティすごい、見習わないと」「重三郎のへこたれず突き進む感じ、頼もしくていいね」「ないない尽くしの重三郎が、どうやって成り上がっていくのか楽しみです」「遊女たちのために必死な重三郎はすごいと思う!」と、エネルギッシュでひたむきな蔦重を応援する投稿が集まった。

蔦重が三日三晩の間、考えた末に目をつけたのは『吉原細見』という吉原遊郭の案内書。現代でいうところの「ガイドブック」のようなもので、吉原遊郭内の地図や、店ごとの遊女の名前・料金などが記載されていた。この『吉原細見』をどのように活用していくのか、今後の展開に注目だ。

吉原は幕府から公認された遊郭だが、この頃には非公認の遊郭である岡場所に客を奪われていた。理由としては吉原は良くも悪くも格式が高く、客としては金と手間が非常に多くかかるため、手軽に遊べる岡場所に庶民が通うようになったのだ。また、幕府公認であるがゆえにルールが厳しく、自由な経済活動ができないという問題もあった。吉原の中でも、通うことがステータスとなるような一流店には武士や富裕層などの太客がついているが、浄念河岸のような場末の店には通うメリットがなかった。

加えて女郎屋の主人たちは、幕府公認の遊郭という地位にあぐらをかき、ろくに経営努力もしていなかったので、綾瀬はるかが演じた九郎助稲荷(くろすけいなり)のスマホの画面には、吉原の口コミが1.8という低い評価(おそらく5点満点)となっていた。

しかし、逆にいえば当時の吉原は変革を起こせる下地が整っている。デキる経営者にはたまらない環境だ。このような状況をどのようにして蔦重が打破していくのか、今後の展開に注目が集まる。