3番目に注目されたシーンは20時49分で、注目度77.66%。2人になってしまったF4のシーンだ。

「道長と同じ日に逝くなんて行成(渡辺大知)は心底、道長にほれていたんだな。はは…」藤原公任(町田啓太)が手にしている盃に、往年の友である藤原斉信(はんにゃ.・金田哲)が酒を注ぐ。いつもであればここにいるはずの2人は今はもういない。そう、道長と行成だ。道長が逝ったその日の夜、行成も後を追うようにこの世を去った。行成にとって道長は、まさに人生そのものだったのだろう。夜から降っていた雪はもうやんでいた。

「あいつはまことに道長によく尽くしたよ」斉信は遠い昔に思いをはせる。「見し人の 亡くなりゆくを 聞くままに いとど深山 ぞさびしかりける」公任は2人をしのび歌を詠むと、「消え残る 頭の雪を 払いつつ 寂しき山を 思いやるかな」斉信も瞳をうるませ公任に続いた。2人は旅立った友の姿を胸に、手にした盃をささげた。あちらでも道長と行成は、主従の関係を結んでいるに違いないと。

  • (C)NHK

道長と行成を同時に失った公任と斉信に胸を痛める

ここは、2人が欠けたF4の姿に、視聴者の寂寥の念が集まったと考えられる。

いつも4人で仲よく酒を酌み交わしていた藤原のF4だが、同じ日に2人を失うことになった。若いころから苦楽をともにしてきた道長と行成を同時に失った公任と斉信の姿に、胸を痛めた視聴者は多かったのではないだろうか。

SNSでは、「公任さまと斉信さまが道長くんと行成くんを想って歌を詠むシーンが胸に響きました」「道長さま、行成くん。そして公任さまと斉信くん…泣いたなぁ、泣いたよ」「道長さまと行成くんは遠くへ行ってしまったけど、4人の友情は変わらないのが感じられてすてきでした」「道長さまと行成くんに歌を贈って献杯する公任さまと斉信さまが美しい。F4は永遠ですね」と、残されたF4の姿に心を打たれた視聴者のコメントが集まっている。

『光る君へ』の影響で、イケメンぞろいのF4はその知名度を全国区に押し上げた。特に町田啓太が演じる公任はすさまじい人気で、SNSを大いに盛り上げてくれた。すでに出家を果たした公任は、この後も政治に関わることはなかったが、有職故実と呼ばれる朝廷の儀式や風俗などを指導することはあったと伝わる。四納言の中では最後まで存命し、1041(長久2)年に76歳で亡くなった。斉信は出家することなく最後まで政に関わっていた。しかし、大臣任官がかなうことはなく、1035(長元8)年に病で苦しむことなく69歳で亡くなった。

清少納言は『枕草子』の中で、斉信を物語に登場するような当代きっての貴公子だと称賛している。これから半世紀くらいの間は、公任と斉信のパブリックイメージは町田と金田になるのではないだろうか。