2番目に注目されたのは20時32分で、注目度77.73%。倫子がまひろに、ただ死を待つだけの道長に会ってほしいと願うシーンだ。

「殿はもう、祈とうはいらぬ、生きることはもうよいと仰せなの。私が殿のために最後にできることは何かと考えていたらあなたの顔が浮かんだのよ」倫子からそう聞かされ、まひろは道長がまだかすかに生きていると知り、わずかだが気持ちを整理することができた。「北の方さまがお呼びでございます」と、百舌彦(本多力)がやってきたときには最悪の事態が頭をよぎったからだ。「殿に会ってやっておくれ。殿とあなたは、長い長いご縁でしょ。頼みます。どうか殿の魂をつなぎ止めておくれ」倫子がまひろに深く頭を下げた。

倫子は、夫とまひろが自分たちが出会うよりずっと前からのなじみであったことを、先日まひろから打ち明けられていた。そのことを聞かされた時は、さすがの倫子も嫉妬を覚えたが今はもう他に手段がない。道長の命を少しでも長くこの世に留めるためには、どうしても道長とまひろを会わせる必要があるのだ。倫子はさらに深く頭を垂れた。そんな倫子の決意がまひろの胸に強く響いた。まひろはうなずき、道長と会う決意を固めた。

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「最高権力者の嫡妻としての威厳あるお姿」

このシーンは、いよいよ大詰めをむかえる展開に、多くの視聴者のボルテージが高まったと考えられる。

死の淵にいる道長の延命のため、プライドをかなぐり捨ててまひろに道長と会ってほしいと願う一途な倫子に多くの共感が集まった。そして、刻一刻とせまるまひろと道長の今生の別れを視聴者は予感しながら、画面を注視したのではないだろうか。

SNSでは、「倫子さまが最後までかっこよかったところが、『光る君へ』で1番すきなところです」「倫子さまが道長くんの左手をそっと布団にもどす繊細な演出がなんともいえず好き」「心の底から愛する道長のために嫉妬もプライドも捨てて、まひろに頭を下げる倫子はすごい女性です」「1年間、高貴なお姫様の無邪気な愛らしさから、最高権力者の嫡妻としての威厳あるお姿までみせてくれた倫子さまが最高でした」といった、一途な賢母・倫子の生きざまに多くの称賛の声が上がった。

作中では「男の人生は妻で決まる」といったセリフが何度かあったが、倫子なくして道長の栄華はなかっただろう。倫子は四女・藤腹嬉子(瀧七海)と次女・藤原妍子(倉沢杏菜)に続き、道長にも先立たれたれたが、さらに1036(長元9)年には後一条天皇の中宮となった三女・威子も失ってしまう。1039(長暦3)年に出家し、その後、1053(天喜元)年に90歳で大往生を遂げた。そのなきがらは曾祖父である宇多天皇の建立した仁和寺に埋葬されたと伝わる。

黒木華演じる源倫子は、初登場時よりこれぞ平安貴族の姫とその外見と振る舞いが絶賛されてきた。まひろと道長の秘めた関係を知った時にどのような反応を見せるのか注目が集まっていたが、倫子は最後まで非常に優雅で度量の広い嫡妻として描かれた。そんな倫子は、『利家とまつ』のまつや、『功名が辻』の千代に並ぶ良妻と言っても過言ではない。