シャープから、ハイエンドスマートフォン「AQUOS R9 pro」が登場しました。ドイツのライカカメラと協業して開発されたカメラを搭載した人気シリーズですが、日本でライカカメラを謳うライバルも増えた中、さらなる進化を遂げ、ユーザーの期待に応える製品に仕上がっています。

  • AQUOS R9 pro

    大型のカメラ部がインパクトのある「AQUOS R9 pro」

ライカ監修、現行トップクラスのカメラ

「AQUOS R9 pro」は、「AQUOS」シリーズのスマートフォンのフラッグシップモデル、最上位の位置づけです。ハイスペックで様々な機能を搭載しており、ハイエンドにふさわしい端末となっています。

前モデルの「AQUOS R8 pro」に比べて、デザインは大きく変わりました。背面に大きな円形のカメラ部を配置しているのは変わらないのですが、従来がシングルカメラ(+測距カメラ)というデザインだったのに対して、本機では3つのカメラを搭載しており、カメラ周りが大型化しました。

  • カメラ部

    これまでのシングルカメラからとうとうトリプルカメラになりました

まずはこのカメラ機能を見ていきましょう。前モデルは1型約4,720万画素CMOSセンサーと、焦点距離19mm(35mm判換算時)でF1.9のレンズを搭載していました。今回は、メインカメラとしてさらに大きな1/0.98型約5,030万画素CMOSセンサーを採用。レンズは焦点距離23mm(同) F1.8となりました。

さらに1/2.5型約5,030万画素CMOSセンサーで13mm F2.2レンズを採用した超広角カメラと、1/1.56型約5,030万画素CMOSセンサーで65mm F2.6レンズを採用した望遠カメラを搭載しています。

  • 背面全体のデザイン

    前面が革張り風のデザインでカメラライクなデザイン。ロゴも全て横配置で、だいぶカメラを意識しているようです。最近は背面のFeliCaマークをなくしている端末も増えており、ここはなくても良かったかもしれません。キャリアのロゴがなく、シンプルなのは良いところです

前モデルまではシングルカメラの中央部切り抜きなどで複数の画角に対応する形でしたが、今回は他社と同じように複数のカメラを搭載する方式になりました。3つのカメラの解像度はいずれも5,030万画素で、ピクセルビニングを活用している点も特徴です。

35mm判換算で65mm相当という焦点距離も面白いところ。一般的な3倍だと69mmになるのですが、わずかに短い焦点距離になっています。ライカだとElmar 65mm F3.5のようなレンズもありましたし、今だとライカのLマウントでシグマが65mm F2 DG DNレンズを出していて、個人的には見慣れた画角でもあります。

  • 3つのカメラ

    全て5,030万画素・ピクセルビニング対応のセンサー。左上がペリスコープタイプの望遠カメラ、右上がメインカメラ、右下が超広角カメラです

カメラのUI上は、ズームボタンが0.6x/1x/3xという表示ですが、ズームバーを表示すると35mm判換算の焦点距離も表示され、13mm/24mm/65mmと選択できます。本機と同じくライカと協業した「Xiaomi 14 Ultra」の場合は12mm/23mm/75mm/120mmの選択なので、また画角が異なります。「Xiaomi 14 Ultra」の方がバリエーションに富んだレンズで幅広いシーンに対応できますが、75mmは少々中途半端で、画角としては65mmが使いやすいと感じました。

  • カメラUI

    焦点距離は13mm/23mm/65mmの3段階で選択。13mmから65mmなので、正確に言えば3倍ではありません

複数のカメラを搭載したスマートフォンでは、メインカメラ以外の超広角カメラ/望遠カメラのセンサーサイズが小さくなり、レンズ性能も劣ることが多く、結果として画質面ではメイン以外のカメラは「そこそこ」という評価になりがちです。「AQUOS R8 pro」まではそれを嫌ってシングルカメラとしていましたが、かといってデジタルズームで数倍になると画質の劣化が大きくなります。そのバランスが難しいところです。

「AQUOS R9 pro」のメインカメラで2.9倍デジタルズームをして撮影したときと、3倍の望遠カメラで撮影したときでは、画質に差があります。「AQUOS R9 pro」は3倍望遠カメラでも5,030万画素でピクセルビニングしているせいか、良好な画質となっています。

  • 23mmで撮影
  • デジタルズームで2.9倍で撮影
  • 65mmで撮影
  • 左がメインカメラ(23mm)で撮影したもの。スマホカメラとして圧倒的な描写性能です。それをデジタルズームで2.9倍まで拡大したのが中央の写真。ややぼやけていたり、デジタル処理による劣化は見られますが、まずまず常用できるレベルでしょう。右は65mmで撮影した写真で、描写性能は歴然とした差があります。あまり望遠側に振らずに光学的に無理をしていないこともあってスマホの望遠カメラとして画質は良好です

一般的なスマホカメラでも、3倍程度であればメインカメラのデジタルズームでも十分な画質です。「AQUOS R9 pro」でも同様に実用的なデジタルズームの画質ですが、今回は望遠カメラも優れた画質で積極的に使いたくなります。バランスの良い選択の結果が、65mmなのかもしれません。

  • メインカメラのハイレゾモードでの撮影例
  • 望遠カメラのハイレゾモードの撮影例
  • この2点はピクセルビニングを解除したハイレゾモードで撮影したもの。左がメインカメラ、右が望遠カメラです。ピクセルビニングがないのでダイナミックレンジが低下していますが、一般的なスマホカメラに比べれば解像しているほうでしょう

  • 「SIGMA fp L」と24mm F3.5 DG DNで撮影した写真
  • 「SIGMA fp L」と65mm F2 DG DNで撮影した写真
  • 参考として、「SIGMA fp L」と24mm F3.5 DG DNで撮影した写真(左)と65mm F2 DG DNで撮影した写真(右)を見てください。カメラとスマホカメラの傾向の違いが分かります

いずれにしても倍率は3倍弱なので、望遠性能はそれほど高くはありません。デジタルズームについて6倍までは実用的ですが、それ以上になるとスマートフォン画面で拡大しない場合でないと厳しくなってきます。

  • デジタルズーム6倍の撮影例

    デジタルズームで6倍。シーン次第ですが、実用的なレベルでしょう

  • デジタルズーム12倍の撮影例

    こちらは12倍。さすがに厳しくなっています

  • デジタルズーム20倍の撮影例

    デジタルズームは最大で20倍まで

それでも、特にメインカメラの画質面は一級品です。ナチュラルで自然な描写で、単に線を描くのではなく、立体感があって空気感を伝えるような描写になっています。このあたりはライカの面目躍如と行ったところ。

  • メインカメラの撮影例

    とにかくメインカメラの写りは良好

  • メインカメラの撮影例

    強い光の反射があってもゴーストの発生は最小限で、画質低下も抑えられています

基本的にオートでバランスもいいのですが、たまに露出をアンダーに補正するとグッと雰囲気が良くなります。このあたりは後述する操作性の良さを活用したいところです。

  • メインカメラの撮影例

    ホワイトバランスは安定して正確。冬の色温度をよく再現しています

  • 夜景の撮影例

    夜景も描写性能の高さを示してくれます

  • 超広角カメラの夜景の撮影例

    超広角での夜景も優秀

  • 望遠カメラの夜景の撮影例

    望遠カメラの夜景

今回はテストできていませんが、フィルター装着に対応している点も見逃せないところ。アタッチメントをレンズ周囲に取り付けると、そこに62mmのフィルターを装着できます。普通のカメラのフィルターが流用できるので、多彩な撮影に対応できます。

  • 望遠カメラを活用したテレマクロ撮影例

    望遠カメラでテレマクロ的に撮影してみました。露出をマイナス補正しています。メインカメラのマクロ性能はあまり高くないので、自動マクロで超広角カメラによる撮影か、望遠カメラでテレマクロ的な撮影になります

  • 夕景の撮影例

    こちらも露出はマイナス補正。シーンによっては露出補正をすると良さそうです

アクセサリー面では、純正ケースも魅力的。よくある1カ所でストラップをつり上げる形ではなく、底面2カ所にストラップを装着する両吊り。いわゆる縦吊りの状態になるので、安定して素早くカメラを使えるのが便利です。

  • サギを望遠カメラでとらえた撮影例1

    魚を狙っていたサギを望遠カメラで

  • サギを望遠カメラでとらえた撮影例1

    AFスピードを含めてスポーツ写真にはあまり向いていない印象ですが、なんとか捉えた1枚