制作の上で、インプットは欠かせない。最近刺激を受けたコンテンツを聞いてみると、原田氏が真っ先に挙げたのは、『水曜日のダウンタウン』(TBS)で知られる藤井健太郎氏が手がけるバラエティ番組『KILLAH KUTS』(Prime Video)だ。

「今のテレビバラエティは、良質で明確なクエスチョンを視聴者に提示して、それに対するアンサーがあるものでないと見られないという肌感がある中で、『KILLAH KUTS』はそれとは反対の純粋な“やってみた”に近い企画な気がしていて。ただ、YouTubeを含めて“やってみた”コンテンツがあまりにあふれすぎている中で、お金の力ではなくアイデアやクリエイティブで圧倒的に釘付けになってしまうものを作れていることに刺激を受けました」(原田氏)

さらに、「『大脱出』(DMM TV)もそうですが、見るもの見るもの度肝を抜かされ続けていますね。企画の鋭さに対してちゃんとマスも捉えているし、ブランド化しているところがすごいなと尊敬しています」と語った。

もう1本は、8人組ユニット・ダウ90000が9月に大阪で公演した『旅館じゃないんだからさ』。「本当に良い舞台を見ているときに感じる、観客全員がずっとハイになっていて、この時間がもっと続いてほしいと思わされる感覚があったんです。初演から時間が経っても全く面白さが薄れない本だったし、違う土俵の大阪でウケているというのもすごいなと思いました。令和を代表する演劇作品だと思います」と絶賛する。

自身も学生時代に演劇を作っていただけに、「こういうものを作ってみたかったと思ってしまいました。またいつか演劇をやってみたいという思いも強くあります」と意欲を示した。

一方、“王道”好きの足立氏が挙げたのは、映画『帰ってきた あぶない刑事』。『オクラ』で刑事モノをやるということで監督と一緒に鑑賞しに行くと、「昔からコアなファンが多くいる中で今の若い世代にも刺さる普遍的な面白さとカッコよさがあって圧倒されました。(タカとユージの)2人のコミカルな掛け合いがクスッと笑えて、なおかつカッコよくも見えるって、すごく難しいんですよね。そこの塩梅ももう見事でした」と、参考になったそうだ。

もう1本は、東宝の若手プロデューサーたちが立ち上げた短編オムニバス映画の中でアニメ作品として製作された『ファーストライン』(脚本・監督:ちな)。若手アニメーターが周囲の様々な声に左右されながら自分の正解を出していくストーリーで、「様々な意見をもらって、何が自分の作りたいものなのかが分からなくなる時もあったりするので、共感して勇気をもらえました」と心を打つものがあったようだ。

テレビが持つ信頼性と即時性の強み

テレビに対して昨今、様々な意見が飛び交う中、業界の中にいる若い2人は、テレビという媒体にどのような可能性を感じているのか。

原田氏は「メディアミックスのしやすさで言うと、スタート地点としてのテレビというのはすごくプレゼンスが高いと思います。“テレビ発”という看板が付くことで他メディアにアクセスしやすい部分もありますし、これまで公共の電波で放送してきた信頼があることで、ある程度はどこに声をかけても話を聞いてくれる下地が整っているというのは、制作を進める上でのメリットだと常々ありがたく感じています」と、実感を交え語った。

足立氏は「最大の強みは、テレビを使ってコンテンツの宣伝ができることだと思います」と補足しながら、「リアルタイムで世の中の一体感が得られるので、みんなで同じ瞬間に共有できる面白さもあると思います。それと連ドラは制作期間によって、視聴者の反応を見ながら後半の展開を動かしていくということもできるのが面白いところですね」と捉えている。

『オクラ』は、きょう17日に最終話が放送される。クライマックスを迎える中で、足立氏は「一体誰が何をしたんだと、登場人物みんなが怪しく見えていると思いますが、その中で一番でかい衝撃があると思います。また、反町(隆史)さんと杉野(遥亮)さんのバディがどのような結末を迎えるのかというところにも注目して、見ていただけたらと思います」と予告し、いち視聴者として楽しみにしている原田氏は「そうなのか…」と思わず反応。

そんな原田氏は、レギュラーの『何か“オモシロいコト”ないの?』や、元日ゴールデンタイムの特番『プライベートジェットで日本韓国大移動! 有吉弘行の芸能人の激推しグルメ爆食ツアー!!』を担当するほか、春に向けてまた面白そうな企画を準備しているようだ。

ドラマ・バラエティと主戦場のジャンルが異なる2人だが、当然一緒に企画を作りたい気持ちも。お互い時間が取れず、なかなか具体的に動き出せていない現状にあるそうだが、いつかそれが実現する日が来ることを期待したい。

  • 『オクラ』最終話より (C)フジテレビ

●足立遼太朗
1996年生まれ、兵庫県出身。20年フジテレビジョンに入社し、情報制作局に配属。『直撃LIVE グッディ!』『バイキングMORE』『ポップUP!』を担当し、『ナンバMG5』のAPも務める。22年にドラマ制作に異動して『女神の教室~リーガル青春白書~』でプロデュース補を担当し、『僕たちの校内放送』を皮切りに、『高額当選しちゃいました』『Re:リベンジ-欲望の果てに-』『オクラ~迷宮入り事件捜査~』でプロデューサーを務める。

●原田和実
1996年生まれ、静岡県出身。20年にフジテレビジョン入社。『ネプリーグ』のADを担当しながら、特番『567↑8』『ただ今、コント中。』でディレクターを担当。企画・演出を務める『ここにタイトルを入力』で注目を浴び、以降も『あえいうえおあお』『内村と相棒』『ケーキのかわり』などを手がけ、『有吉弘行の脱法TV』では23年11月度のギャラクシー賞月間賞を受賞した。現在、レギュラーでは『何か“オモシロいコト”ないの?』のディレクターを務める。