そんな2人は、お互いが手がける番組にどのような印象を抱いているのか。親しい友達ゆえに、普段は真面目に話せないテーマをぶつけてみた。

足立氏は「それまで当たり前にやってきたテレビの常識をフリにして考えたり、テレビというものの使い方がうまいなと思います。僕は『脱法(有吉弘行の脱法TV)』が好きなんですけど、『ここにタイトルを入力』とかそれまでの原田の番組は、ちょっと考えてから“すごいな”が笑いより先にあったんです。でも、『脱法』は一番先に笑いが来て、“面白い”の種類がちょっと変わったのかなと思いました」と見る。

これに、原田氏は「素直にうれしいです。ありがたいですね」と感謝しながら、「演者の方々に身体を預ける感覚がついてきたように思います。入社したばかりの頃は、とにかく企画やシステムを面白くすることが好きだったんです。それは今でも変わらない幹ではあるんですが、運よく尊敬する演者の方々とお仕事をさせていただく中で、演者の方々が現場で産む瞬間的な笑いに感動する経験を何度もしてきました。『脱法TV』は特に、有吉さんのいるスタジオが企画段階で思い描いていた画と比べられないくらい面白すぎて。仕掛けや構造云々より先に笑いが勝っているから、ちゃんと面白いものがアウトプットできているという自覚があります。そういう意味で、『脱法TV』はフルスイングで作れているので本当にありがたいです」と答えてくれた。

王道を進む“テレビドラマプロデューサーの申し子”

『オクラ』までに、『僕たちの校内放送』『高額当選しちゃいました』『Re:リベンジ-欲望の果てに-』といった作品をプロデュースしてきた足立氏について、「王道が好きなんです」と表現する原田氏。

「今はいろいろ細分化しすぎて、王道の作品を自信持って“好きです”と言える人が少ないと思うんですけど、足立は『リッチマン、プアウーマン』とか『プライド』『ブザービート』みたいな月9黄金期の作品が大好きなんですよ。僕らの世代で、特にドラマ志望はちょっとカルチャー味が強いものが好きだったり、ハイコンテクストな作品を好む人が多いと思うのですが、そんな中でド王道の作品がちゃんと好きだと言えることの強さが、逆に新しくて価値のあることだと思います」と分析する。

そのため、「『オクラ』を見ていると、自分が面白いと思っていたドラマのあの感覚がすごくよみがえってくるし、縦軸の強さやミーム力など一つ一つが積み重なっていて、ちゃんとド真ん中をぶち抜いてマスを取りに行ってる感じがしますよね。その感覚が、根っからの“テレビドラマプロデューサーの申し子”みたいな感じがします」と評した。

足立氏は、このキャッチコピーに赤面しながら、「やっぱりテレビにいるからには、王道なもので勝負していきたいという思いが強くあります」と力を込め、『オクラ』で初回から反町隆史が『GTO』を彷彿とする型破りな姿を見せていたことも、「やっぱりみんなが見たいイメージ像を多めに入れていくように考えています」と狙いを説明。

ただ、「王道ってやり尽くされているものなので、やはり既視感との戦いですね。武藤(将吾)さん(脚本家)と話し合いながら、『あぶない刑事』とか『踊る大捜査線』のような男2人のカッコいいバディをなるべく王道に寄せておきつつ、普通の刑事ドラマにはない“証拠の捏造”という切り口を入れることで新しさを意識しています」と、そのバランスに苦慮している。

このように、一見正反対な番組作りを行っている2人だが、「テレビという文脈の中で面白がるポイントは、すごく似ていると思います。それを王道に昇華する(=足立氏)か、裏切っていく(=原田氏)かの違いですね」(原田氏)と、自分たちを捉えていた。