3番目に注目されたシーンは20時26分で、注目度78.1%。公任(町田啓太)が道長とすれ違うシーンだ。
権大納言・藤原公任が、勝手知ったる太閤・藤原道長の邸宅・土御門殿を訪れると先客がいた。大納言・藤原実資であった。「いかがした」道長が公任へ目を向けると、「私はこれで」と実資は立ち上がる。「うむ。ご苦労であった」道長が実資に声をかけ、実資は立ち去るが、公任は不満げな表情をあらわにしている。
「大宰府の件、おさまったことを知らせに参ったが、俺の出番ではなかったようだな。実資殿と通じておったとは」「陣定でのやり取りを聞いて心配しておったのだ。政にかかわって以来、こたびほど驚いたことはない」公任の皮肉を道長は取り合わない。「ふっ…何にも動じぬ道長が動じたのか。俺たちにはそんな姿見せぬのに、実資殿には見せるのだな」そんな道長に公任は語気を荒げた。「隆家はお前の敵ではなかったのか! ゆえに俺は、陣定でもあいつをかばわなかった、お前のために!」先の陣定では、公任は大宰権帥・藤原隆家に対して理不尽ともいえる評価を下していた。「伊周亡きあと、お前にとって次の脅威は隆家だ。いっそのこと戦いで死んでおればよかったのだ。大宰府でこれ以上、力をつけぬよう俺はお前のためにあいつを認めなかった」「国家の一大事にあっては、隆家をどうこういう前に、起きたことの重大性を考えるべきである。何が起き、どう対処したのか。こたびの公卿らのありようはあまりに緩みきっており、あきれはてた」「俺たちを、そのように見ておったのか。俺たちではなく、実資殿を信じて」道長の政権を盤石とするために立ち回った公任としては、当の道長が国難に際しては団結を是と考えていることが腹立たしかった。「まあまあ、まあまあ、まあまあ。何をもめておるのだ」そこへ、2人の旧友である権大納言・藤原斉信(はんにゃ.・金田哲)があらわれ、割って入ったが、いたたまれなくなった公任は足早に去ってしまった。
「どうしたの?」斉信が尋ねるが道長は無言だ。「まあ何があっても俺は、道長の味方だから」このような時、道長は斉信に救われることがある。後日、藤原行成(渡辺大知)が公任を訪ねてきた。「お前の字は、まことに美しいのう」公任は行成によって書かれた書をみてほれぼれと言った。「『和漢朗詠集』は公任様のみがなしえた大仕事でございました」「それで、お前は何しに参ったのだ? 道長とやりあったことが、もうウワサになっておるのか」きまずそうな表情を浮かべる行成を見て、「斉信のおしゃべりめ。ああ…されど、何であんなことを言ってしまったのかな…」と、公任はひとりごちた。「それは道長様を、大切にお思いになるゆえにございましょう」行成にもかつて道長と激しく衝突した経験があった。「道長には伝わっておらぬがのう」そう言った公任の目はこの上なくさみしげで弱々しいものであった。
麗しい公任が嫉妬する姿に視聴者悶絶?
ここは、麗しい公任が嫉妬する姿に悶絶する視聴者が続出したと考えられる。
もともとは道長よりも有力な家の嫡男として生まれ才能にも恵まれた、貴族中の貴族である公任だが、家名やプライドにとらわれず、これまで友である道長のサポート役に徹してきた。道長の栄華は公任なしにはあり得なかっただろう。
そんな公任は「刀伊の入寇」に際しても、道長の立場を最優先とする措置を取ろうとするが、道長の方針とは合わず今回の衝突にいたった。そしてその方針を一番に理解していた実資に嫉妬の炎を燃え上がらせる。
SNSでは「公任さまがこんなにも重く道長を想っていたなんて…エモいな!」「公任さまが道長に自分の気持ちがまったく伝わっていないことにかっとしたところが、ぐっときてしまった…」「なんか公任くん、こじらせた厄介な彼女みたい」「公任さまの道長君への思い、熱すぎるね」などと、道長愛を爆発させる公任に魅了された多くの視聴者のコメントで盛り上がりを見せた。また、同じF4である斉信や行成のさりげないフォローもよいアクセントだった。冷静に考えればめんどくさい中年男性のただの嫉妬なのだが、町田啓太が演じると全く別物になってしまうところが恐ろしい。
次週予告でも、出家して僧形となった公任が映し出されたがすさまじいオーラを放っていた。あんな美形の僧がいたら仏門の風紀は乱れに乱れることだろう。この1年の間、公任は『光る君へ』のイケメン要素をけん引してきたが、ラスト2回のここにきてその色気がダダ漏れしている。