テレビ画面を注視していたかどうかが分かる視聴データを独自に取得・分析するREVISIOでは、8日に放送されたNHK大河ドラマ『光る君へ』(総合 毎週日曜20:00~ほか)の第47話「哀しくとも」の視聴者分析をまとめた。

  • 乙丸(矢部太郎)=『光る君へ』第47話より (C)NHK

    乙丸(矢部太郎)=『光る君へ』第47話より (C)NHK

ついに根負けしたまひろが苦笑

最も注目されたのは20時31~32分で、注目度79.5%。乙丸(矢部太郎)が「都へ帰りたい!」と叫ぶシーンだ。

「太宰権帥の役目を終えるゆえ、都に戻る。そなたはどうする?」周明(松下洸平)を失くし、心に深い傷を抱えたままのまひろ(吉高由里子)を訪れた太宰権帥・藤原隆家(竜星涼)は、まひろを案じつつその意志を確かめた。かたわらに控える乙丸はうつむき黙っている。

「ともに帰るか?」隆家は問いかけるが、まひろの気持ちはまだ、全く整理がついていない。「ここにおりたければ、次の権帥に頼んでおくが」隆家の提案に何も答えられないまひろに代わって、たまりかねた乙丸が意を決して2人の間に入った。「お方様! 私は、きぬに会いとうございます!」いつになく大きな乙丸の声に隆家は気圧された。「ならば、乙丸だけお帰りなさい」まひろの表情は暗いままだ。「おお…お方様! お方様も一緒でなければ、嫌でございます! あんなことのあった、ここにいてはなりませぬ! 帰りましょう! 帰りたい…私は帰りたい! 都に帰りたーい!」乙丸の必死の訴えに困惑するまひろに、乙丸はなおも叫びつづけた。

「きぬに会いたーい! 会いたーい! 帰りたーい! 帰りたーい! 帰りたーい! 帰りたーい! 帰りたーい! 会いたーい! きぬに会いたい!」見事な采配で刀伊を撃退した隆家であるが、この異様な状況にはどう対応すればよいのか分からないようだ。「お方様、帰りましょう! ねっ! 帰りましょう!」まひろは乙丸の不器用な懇願によって、次第に自分の表情が和らいでいくのを感じた。「会いたい! 帰りたい! 帰りたーい! 会いたい! 帰りたい! お方様と、帰りたい! 帰りたい! 帰りましょう! ねえ! 」ついに根負けしたまひろは苦笑しかすかにうなずいた。時は1020(寛仁)4年、3人はそろって都へ帰った。

  • 『光る君へ』第47話の毎分注視データ

「1年間観てきて1番泣けた」

注目された理由は、なりふりかまわぬ乙丸の懇願に視聴者の視線が「くぎづけ」になったと考えられる。

周明を目の前で失い、立ち直れずにいるまひろは都へ帰るかどうかの決断すらできないほど憔悴(しょうすい)しきっていた。従者として主人に帰京をうながすことに成功した乙丸は今回のMVPといえるだろう。長年まひろに誠心誠意仕えてきた乙丸だからこそ、成しえた功績ではないだろうか。

X(Twitter)では、「1年間『光る君へ』を観てきて1番泣けたのは乙丸の『帰りたーい』だったなぁ」「乙丸がいないとまひろちゃんは都に帰らなかっただろうから、いてくれて本当によかった!」「ここにきて1番の名シーンになったね」「乙丸、ナイス! めちゃめちゃいい仕事したなぁ」と、乙丸のファインプレーを称賛する投稿が集まった。乙丸のシーンが注目度トップ3に入ったのは第24話「忘れえぬ人」以来。そのシーンは乙丸の信念が語られるシーンだった。目の前でまひろの母・ちやはが藤原道兼に斬られた時、何もできなかった後悔からまひろだけは守り通すと誓った乙丸に多くの視聴者が感動した。

乙丸を演じる矢部太郎は吉本興業所属のお笑いタレント。お笑いだけでなく役者や漫画家などマルチに活躍している。大河ドラマは2004年の『新選組!』の阿比類鋭三郎役以来、実に20年ぶりの出演。『光る君へ』が放映されているあいだ、自身のXアカウントに「光る君絵」としてイラストを毎週投稿していた。そのイラストを1冊にまとめた『矢部太郎の光る君絵』が12月23日に発売される。ファンの方は要チェックだ。

また、2人とともに都へ戻った隆家。帰京後に刀伊を撃退した功績から大臣や大納言へ推挙する意見もあったようだが、隆家自身が内裏への出仕をひかえていたために実現しなかった。作中でも語っていたとおり、もはや内裏での出世には興味がなかったのだろう。そして1037(長歴元)年に再び太宰権帥に任じられ、1042(長久3)年まで務めた。