3番目に注目されたシーンは20時17分で、注目度79.9%。左大臣・藤原道長が腹心の四納言と、敦成親王(濱田碧生)を次の東宮にすえようと画策するシーンだ。
「今宵、我らが呼ばれたのは、敦成親王様を次の東宮にするという話か」藤原公任(町田啓太)が前置きもなく道長に問いかける。「そうだ。易筮(えきぜい)によれば、今後帝がご政務に戻られることはない」道長が大江匡衡(谷口賢志)による易筮の結果をみなに伝えた。「易筮が出たことを言えばよかったのに」藤原斉信(はんにゃ.・金田哲)が言うと、「まずは皆がどう思っておるか、知ることが大事だと思ったのだ」と、道長は先ほどの除目で、易筮が出たことを言わなかった理由を明かした。藤原実資の反対も想定していたようだ。
「次の東宮は、第一の皇子であるべきと考えますが…」一条天皇に近しい藤原行成がおずおずと反対するが、「第一の皇子の敦康様(片岡千之助)の後見は隆家殿(竜星涼)。あの罪を得た家のものでありますぞ」と、源俊賢(本田大輔)が即座にその正当性を否定した。「されど、強引なことをやって恨みを買えば、敦成様にも道長様にも、何が起きるか分かりませぬ」行成は道長と敦成の身を案じているのだ。「今宵、この話を聞いた以上、俺は敦成様を推す」斉信の決断は早い。「実資さまと隆家は、我らが説得いたそう」公任もすかさず斉信に同意すると、「お任せを」と俊賢もあとに続いた。「頼む」道長は3人の顔を交互に見た。「お前は無理をせずともよい。俊賢に任せておけ」斉信は帝の側近である行成の気持ちを気遣う。
散会となり四納言は退出すると、「恐らく、崩御の卦も出ておるのだろう」と、公任は自身の推察を他の3人に披露した。「言霊をはばかって、道長様はそのことを仰せにならなかったのだと存じます」行成も同じ考えのようだ。「お前、言ってしまったじゃないか、今」斉信は公任の言葉を指摘したが、「いけない、いけない」と、公任には悪びれる様子もない。「崩御なら、話は一気に進みます。それもやむなしかと」俊賢は、はっきりと言い残し先に歩き出した。こういう時、この男には迷いがない。公任と斉信は思い悩む行成をうながし俊賢に続いた。
「行成の立場が苦しすぎる」
ここは、一条期の四納言たちの道長への友情・忠誠と葛藤に、視聴者が注目したと考えられる。
若いころから道長と一緒にいた公任と斉信、道長の義理の兄にあたる俊賢。3人は敦成親王の擁立に動き出したが、行成は尊敬する道長(それ以外の感情もあるようだが)と、主である一条天皇の間で揺れ動いていた。
SNSには「行成は道長と一条天皇2人に惚れているから、どちらを推すにしても苦渋の決断だったろうね」「行成くん、敦康親王を東宮にできないって言うのつらかっただろうなぁ」「行成の立場が苦しすぎる」「唯一敦成親王の擁立に反対していた行成が、帝の説得に1番適役だったのは皮肉だな」と、行成の境遇に同情するコメントが多くアップされている。
また、悩む行成に対する気遣いと、「いけない、いけない」と茶目っ気たっぷりの公任さまには、「公任さまの行成くんへのぽんぽんが素敵」「公任さま、お優しい」「うっかり公任さま」と注目が集まっており、見事、注目度トップ3入りを果たした。
藤原行成は995年、参議に昇進した俊賢の後任として蔵人頭に任じられた。当時はまだ従四位下であり、この抜てきには多くの人が驚いたようだ。俊賢の推挙が大きかったようだが、それまでの行成の真面目な仕事ぶりが一条天皇にも評価されたようだ。1001年には参議任官を前提とした蔵人頭の辞退を一条天皇に申し出ている。しかし、有能な側近を手放したくなかった一条天皇に、辞退を認められなかったという逸話もある。それほど信頼していた行成の進言だからこそ、最終的に一条天皇も敦成親王を東宮とすることを承諾したのだろう。