2番目に注目されたのは20時38分で、注目度80.1%。一条天皇(塩野瑛久)が崩御するシーンだ。
夕闇の中、僧たちの読経が響く。公卿たちの見守る御簾の向こうでは、剃髪し出家した一条天皇が床に伏せっていた。傍らには妻である中宮・藤原彰子(見上愛)の姿がある。一条天皇が何か言いたそうに弱々しく口を開くと、彰子が瞬時に反応した。左大臣・藤原道長(柄本佑)と権中納言・藤原行成(渡辺大知)も視線を向けた。「露の身の…」一条天皇はわずかに残る力をふり絞って辞世の歌を詠みあげようとしているのが分かった。「か…風の宿りに…」見守る彰子に懸命に手を伸ばす。彰子は両手で握り返した。「君を置きて…」かすかな笑みを浮かべる夫に、涙を流す彰子。「お上!」「塵を出でぬることを…」「お上! お上!」一条天皇が意識を失うと、彰子の泣き声だけが闇夜に響いた。そして翌日、一条天皇は崩御した。
行成は涙を流しながら、道長は無表情に、自身の日記に一条天皇の崩御を記した。その日の夜、彰子は鈍色の単衣をまとい、また涙を流した。まひろも彰子にならい、鈍色の単衣をまとってそばに控えた。まひろには彰子にかけるべき言葉が見つからなかった。
塩野瑛久に賛辞の声「本当に当たり役」
このシーンは、優雅なたたずまいで物語中盤を彩った一条天皇の最期に、視聴者の注目が集まったと考えられる。
花山天皇(本郷奏多)が寛和の変により、わずか2年足らずで退位することとなり、一条天皇はわずか7歳で即位した。エキセントリックな描写が多かった花山天皇に比べて、繊細で理知的なそのたたずまいは、回を重ねるごとに多くの視聴者を魅了してきた。その在位期間は先々代・円融天皇(坂東巳之助)が15年、先代・花山天皇が2年だったのに比べて25年間という長いものだった。人生のほとんどを内裏にささげたと言える。
ネットには「ままならないことが多くても、高貴さを失わなかったのはすごい」「最後まで気高く、ご立派でした」「一条天皇、本当に素敵でした」と、麗しい帝の崩御を惜しむコメントが多く寄せられている。また、「美しすぎる一条天皇、塩野さんにぴったりの役でした」「塩野瑛久さんの一条天皇は本当に当たり役でした」といった、塩野瑛久への称賛も集まっている。今後しばらくは一条天皇のパブリックイメージは塩野となるのではないだろうか(この時代がドラマとして描かれることは少ないので、大半の登場人物がそうなる気もするが…)。
作中ではいきなり体調を崩した一条天皇だったが、史実では幼い頃から病弱だったようだ。都で感染症が流行した際は一条天皇も発病していた。
また、劇中では辞世の歌が最後まで詠まれていなかった。道長の記した『御堂関白記』によると「露の身の 風の宿りに 君をおきて 塵を出でぬる ことをこそ思へ」とされ、残される彰子に宛てた歌とされている。しかし藤原行成の記した『権記』によると「露の身の 風の宿りに 君をおきて 塵を出でぬる ことぞ悲しき」とされ、こちらは先に逝った皇后・藤原定子を想って詠まれたと言われている。今回のタイトル、「君を置きて」の君は誰を指していたのか、塩野は自分の中に正解はあるが、視聴者にゆだねたいとコメントを残している。