テレビ画面を注視していたかどうかが分かる視聴データを独自に取得・分析するREVISIOでは、20日に放送されたNHK大河ドラマ『光る君へ』(総合 毎週日曜20:00~ほか ※きょう27日は19:10~)の第40話「君を置きて」の視聴者分析をまとめた。

  • 『光る君へ』第40話より (C)NHK

    『光る君へ』第40話より (C)NHK

「誰?」「あなたこそ、誰なの?」

最も注目されたのは20時41分で、注目度80.4%。藤原賢子(南沙良)が双寿丸(伊藤健太郎)を自宅へ招くシーンだ。

いと(信川清順)が洗濯物を取り込んでいると賢子が帰ってきた。その隣には見知らぬ男が乙丸(矢部太郎)を背に抱えている。「まっ、どうしたの? 乙丸!」「あんた!」いとと奥から出てきたきぬ(蔵下穂波)が慌てて駆け寄る。乙丸が苦笑いを浮かべ男の背から降りる。「物取りに遭ったところを助けてもらったの」賢子は市での出来事を説明した。「まあ…」と言いながらも、いとは双寿丸に警戒の目を向けている。「何だ?」見知らぬ男をいぶかしむいとの視線に、双寿丸は不服そうだ。「いえ…」いとは賢子によからぬ虫がつくのを防ごうと考えをめぐらしていると、「お礼にごちそうするわ。食べていって」と、当の賢子はのんきに双寿丸を夕げに誘った。「姫様」「この人がいなければ、命がなかったかもしれないのよ」賢子は笑顔でいとを制した。

縁側で話す賢子と双寿丸に、いとが飯を運ぶ。双寿丸は大盛りの茶碗をいとから無遠慮につかみ取り大口でかきこんだ。賢子は興味ありげに双寿丸をながめているが、いとは、この品がなく身分が低いであろう男に嫌悪感しか感じない。「ああ…こんなにゆっくり飯が食えるなんて」と双寿丸がつぶやいた。「どんな暮らしをしているの?」「俺は平為賢様んとこの武者だ。下っ端の下っ端だけどな。男ばかりでもたもたしていたら、食いっぱぐれることもある」ふだん飯は取り合いになるようだ。「たんと召し上がって、姫様のことは今日限りお忘れくださいませ」いとは2人の話に割り込むと、賢子はむっとした表情をした。「姫様のおじい様は、越後守であらせられます。あなた様とは釣り合いませぬゆえ」いとは皮肉まじりに言い放つ。「この人、何言ってるの?」「いと、失礼よ」「ふふふ…まっいいけど」2人はいとの言葉を軽く流して笑い合った。

すると、そこへ「ただいま」という声が響いた。まひろ(吉高由里子)が帰ってきたのだ。「誰?」双寿丸は臆することなくまひろの顔を見る。「あなたこそ、誰なの?」知らない男が実家で一人娘と飯を食べている。まひろの頭は混乱した。

  • 『光る君へ』第40話の毎分注視データ

まひろと直秀の関係に重ねた視聴者が続出

注目された理由は、賢子と双寿丸の関係を、まひろと直秀(毎熊克哉)の関係に重ねた視聴者が画面を注視したと考えられる。

市井では散楽が行われ、人々が興じる様子は物語の最序盤を思い出させる。そして賢子と双寿丸の突然の出会いは、若き日のまひろと直秀の出会いを彷彿とされる出来事だった。X(Twitter)には、「昔のまひろのような賢子と、直秀のような双寿丸の姿がリフレインを感じさせる」「賢子ちゃんはまひろより負けん気が強すぎる」「賢子が若かりし頃のまひろと同じ着物を着て乙丸を連れて、悪っぽい男子と仲良くしているの泣いちゃいそう」といった投稿が見られた。悲劇的な別れを迎えたまひろと直秀だが、賢子と双寿丸の関係はいったいこの先どうなるのだろうか。

ドラマオリジナルキャラクターの双寿丸は、れっきとした武士のようだ。直秀の時のような悲劇の結末とならなければよいのだが…。双寿丸が仕えている平為賢は、藤原実資(ロバート・秋山竜次)に仕えていたとされる平維幹の四男。肥前伊佐氏や薩摩平氏の祖先と言われている。平安時代において武士は朝廷や貴族に仕え、殺生を生業とするため社会では軽んじられていた。治安維持や警護、貴族が自分でやりたくないような汚れ仕事が主な業務だ。平安時代の武士の実態は、2012年大河ドラマ『平清盛』で詳しく描かれている。地位は低く、維幹・為賢父子ですら従五位下だった。

しかし、平安時代後期になると貴族同士の争いや地方の反乱が増え、軍事的実力をもつ武士の力が必要とされ、その地位も徐々に向上していった。そして平家や源氏という軍事貴族が台頭してくることになるのだ。