以上のように、新機軸のエンパワーテクノロジーを導入したdynabook X CHANGERでは、今回評価する上位構成(X8)のCPUに第13世代の「Core i7-1360P」を搭載している。
TDP(Processor Base Power)は28Wで、処理能力優先のPコアを4基、省電力を重視したコアを8基組み込んでいる。Pコアはハイパースレッディングに対応しているので、CPU全体としては12コア16スレッドだ。ここまでは、同じdynabook X CHANGERの下位構成(X6)のCPUとして採用する「Core i5-1340P」と共通する。
しかし、スマートキャッシュの容量は18MB(Core i5-1340Pでは12MB)で、動作クロックがP-coreでベース2.2GHz、Max Turbo Frequencyで5.0GHz、E-coreでベース1.6GHzのMax Turbo Frequenc3.7GHzと向上する(Core i5-1340PではP-coreでベース1.9GHzのMax Turbo Frequency4.6GHz、E-coreでベース1.4GHzのMax Turbo Frequency3.4GHz)。
TDPはベースで28W~64Wとなる。グラフィックス処理にはCPU統合のIris Xe Graphicsを利用するのは同様だが、演算ユニットは96基で動作クロックは1.5GHzとこちらもCore i5クラスと比べると強化されている。
なお、CPU以外で処理能力に影響するシステム構成を見ていくと、試用機のシステムメモリはLPDDR5-4800を採用していた。容量は16GBでユーザーによる増設はできない。ストレージは容量512GBのSSDで試用機にはSamsungのMZVL2512HCJQを搭載していた。接続バスはNVM Express 1.4(PCI Express 3.0 x4)だ。
Core i7-1360Pを搭載したdynabook X8 CHANGERの処理能力を検証するため、ベンチマークテストのPCMark 10、3DMark Time Spy、CrystalDiskMark 8.0.4 x64、そしてファイナルファンタジー XIV:暁月のフィナーレを実施した。
なお、比較対象としてCPUに同じくCore i7-1360Pを搭載し、ディスプレイ解像度が1,920×1,080ドット、システムメモリがDDR5-4800 16GB、ストレージがSSD 512GB(PCI Express 3.0 x4接続)のノートPC(要はdynabook G8/W)で測定したスコアを併記する。
ベンチマークテスト | dynabook X8 CHANGER | 比較対象ノートPC |
---|---|---|
PCMark 10 | 5487 | 5448 |
PCMark 10 Essential | 9988 | 9665 |
PCMark 10 Productivity | 6293 | 7007 |
PCMark 10 Digital Content Creation | 7132 | 6480 |
CrystalDiskMark 8.0.4 x64 Seq1M Q8T1 Read | 6791.71 | 6839.39 |
CrystalDiskMark 8.0.4 x64 Seq1M Q8T1 Write | 4899.35 | 4770.38 |
3DMark Time Spy | 1968 | 1768 |
3DMark Night Raid | 19104 | 16761 |
FFXIV:暁月のフィナーレ(最高品質) | 4507 | 3999 |
大きくスコアが開いているわけではなく、PCMark 10 ProductivityとCrystalDiskMark 8.0.4 x64 Seq1M Q8T1 Readでは逆転されていたりもするが、総じて「新機軸エンパワーテクノロジー」を導入したdynabook X8 CHANGERが上回っている。
特に、3DMark Time Spy、3DMark Night Raid、FFXIV:暁月のフィナーレといったゲームベンチマークテストで大きくスコアを向上させている。
このほか、外出先で使うときに気になる騒音と、薄型モバイルノートPCで注意したい表面温度を把握するために、温度と騒音をチェックした。
電源プランをパフォーマンス優先に設定して3DMark NightRaidを実行し、CPU TESTの1分経過時において、Fキー、Jキー、パークレスト左側、パームレスト左側、底面のそれぞれを非接触タイプ温度計で測定した表面温度と、騒音計で測定した音圧の値は次のようになった。
表面温度(Fキー) | 40.1度 |
---|---|
表面温度(Jキー) | 36.2度 |
表面温度(パームレスト左側) | 27.0度 |
表面温度(パームレスト右側) | 26.9度 |
表面温度(底面) | 40.3度 |
発生音(暗騒音37.2dBA) | 44.7dBA |
パフォーマンスは確かに新世代。キーボードは「イマドキ仕様」
注目のキーボードは確かにストロークが十分にあって、タイプしたことを十分に感じることができる。キーはぐらつかず押し込んだ力をたわむことなく受け止めるので安定してタイプを続けられる。
見た目から受ける印象より軽い力でタイプできるのでイマドキのノートPCに慣れたユーザーなら快適と思うだろう。一方で、デスクトップPC用キーボードと同じようなタイプ感触を予想していると「ん?」と思うかもしれない。
小技を利かせたエンパワーテクノロジーの進化はベンチマークテストのスコアで確認する限り、処理能力を確実に向上させている。メンテナンスが容易なダスト・クリーニング機構のおかげで、長期間使い続けても処理能力は維持できるだろう。能力の維持という観点ではユーザーが交換できるバッテリーパックも管理コストの削減としては有効だろう。
総じて、最新の動向を理解しているモバイルノートPCユーザーにとっては有効な工夫を重ねたワークホースとして役に立つ道具に進化したといえそうだ。一方で、ベテランの“オールドソルト”にとっては、昔のモービルPCで描いていたロマンとはちょっとだけ方向が違うと感じるかもしれない。