2023年の夏、Dynabook社は開発中の新モデルとして、バッテリー交換機構を備えた13.3型モバイルノートPC「dynabook X83 CHANGER」を発表した。

モバイル利用を重視した軽量薄型ノートPCとしては少なくなってきた「ユーザーが交換可能」なバッテリーパックの採用や、同類のモデルとしては深い、2㎜のキーストロークを実現したキーボードなど、興味深い新機軸を導入している。

  • 2023年7月の発表から約半年間の時を経て登場した個人向け“2mmストローク”モバイルノートPC「dynabook X8 CHANGER」

発表会当時は法人向けモデルのみでその存在を明らかにしていたが、“わかっている”Dynabook社はその場でコンシューマー向けモデルの登場も予告していた。

その予告通り、CHANGERのコンシューマーモデルとして「dynabook X CHANGER」シリーズが2024年1月に19日に発売された。

この記事ではdynabook X CHANGERについて、CHANGERが主要な訴求ポイントとしていた深いストロークを実現したキーボードの使用感と、主に“昔を知る”ベテランユーザーが期待している「交換可能なバッテリー」の実利用における使い勝手を検証する。

  • 評価機材のボディカラーは新色ダークテックシルバー。カラーバリエーションとしてダークテックブルーも用意している

  • 評価機を手持ちのはかりで計測したところ918gだった

キーボードの2mmストローク、使用感は?

2mmのキーストロークを実現したdynabook X8 CHANGERのレビューということで、やはり最も気になるのがキーボードの使用感だろう。このレビューでも冒頭からこの視点で評価していく。

  • Enterキーの右隣(最上段は右隣3つ先まで)のキーはピッチがやや狭くなっている。カーソルの上下キーについてはひと枠を2分割している。しかし、キーレイアウトは総じて自然で運指に無理はない

なお、キーボードの使用感という“主観的モノサシ”が影響する評価項目であるので、まずはレビューアーである筆者が普段使用しているキーボードを明らかにしておこう。デスクトップPCでは「Happy Hacking Keyboard Professional2」を、ノートPCではThinkPad T14sをそれぞれ普段使っている。

なのでキーボードのタイプ感の評価はこれらのキーボードが基準となることを、あらかじめお断りしておく(そのため、タイプ時のクリック感がはっきりとしているメカニカルキーボードを好むユーザーの感覚や好みとは多少異なる評価になるかもしれない)。

さて2023年に登場した法人向けの“CHANGER”では、ストローク長が「2㎜」と「1.5㎜」という、2種類のキーボードユニットを用意している。マイナビニュースではその開発インタビュー記事を掲載しているが、2㎜のキーボードユニットを搭載するモデルでは本体そのものも”別物”になる、という説明だった。

そんなわけでCHANGERの法人モデルは搭載するCPUやシステムメモリ、ストレージ容量などの違いに加えて、キーボードストロークが異なる構成があるため、その選択は“けっこう大変そう”という印象だった。

しかし個人向け店頭モデル(今回のdynabook X CHANGER)で用意されているのは、2024年2月26日時点で、上位構成にしても下位構成にしても、キーストロークは2mmの一択となっている。

打鍵感はとにかく軽い! 正統派の薄型キーボード

2mmのキーストロークは“見た目”でもその存在を主張している。

イマドキのモバイルノートPC……、に限らず、多くのカテゴリーで薄型ボディが好まれることもあって(あ、ゲーミングノートPCはまた別世界の話ということで)、そのキーストロークはほとんどのモデルで1.5mm以下となっている。

「とはいっても1.5mmと2mmじゃ0.5mmしか違わないでしょー」と思う方もいるかもしれない。しかし、人が認識する“感覚”というのは鋭敏なもので、わずか0.5mmの違いでも、パッと見た目で「んんん? このキーボード、なんか“背が高く”ないー?」と思わずつぶやいてしまうはずだ(私はそうだった)。

  • キーストローク2mmはやはり伊達ではない。見た目でもはっきりとわかるほどキーボードの“背”は高く感じる

なので、見た目から受ける印象としては「おお、これならデスクトップPCのように、いや少なくとも、これまでのノートPCと比べたらキートップを“ぐぐぐぅー”っと押し込めるね!」と期待しながらキートップに載せた指に力を込めるだろう(それも無意識に)。

その勢いでタイプすると、キートップは「スッ(トン)」と軽く押し下がる。「スー」ではなく、あくまでも「スッ」だ。

もちろん、ストローク分だけの押し下げ距離は認識できる。2mmを押し下げるのと1.5mmを押し下げるのとでは、そのストローク“距離”の違いは明確に認識できる。

ただし。

押し下げるのに力はいらない。いたって素直に「スッ」とキートップは下がっていく。ありていに言えば、とにかく軽い。

レビュー記事としては「タイプ感が軽いキーボード」となる。見た目の背の高さから「ググっと押したい」と思うかもしれないが、その思いを受け止める「押し返す力」をキーボードから感じることはないだろう。

とはいえ、押し下げる力に対して、本体はたわまずにしっかりと耐えてくれる。その受け止める力はキートップを押し切ったときに、ごくごく軽く(トン)と認識する。この(トン)のおかげでユーザーは安定して快適にタイプを続けることができる。