34年目を迎えた『はじめておつかい』。時代の変化は、撮影にどんな影響を与えているのか。
「特に東京23区がそうなのですが、撮影が日常に入ってくるということに対するアレルギーの強い方が多くて、“何撮ってるんですか?”と言われることがよくあります。地方だと、“『はじめておつかい』です”と伝えると“頑張ってください”と言ってくれるのですが、東京だと“警察に許可取ってるんですか?”と聞かれることもありますね。それと、東京はチェーン店が多いので、本部に確認を取って撮影許可が下りなかったり、広報担当の方を現場に派遣できないということで断られることもあります」
また、『はじめておつかい』のロケだと気づいて、スマホで撮られることも。そんなときは、「撮影風景を撮られたくないというより、お子さんの写真を勝手にSNSで公開されると当然、親御さんもいい気はしないので、“すみません、撮影はご遠慮ください”とお願いしています」という。
別の側面の変化では、父親がおつかいに出すというケースが多くなっているのだそう。「普段はつい甘やかしてしまうけど、子どもに何かをお願いするという一つの試練に立ち向かおうとするお父さんが増えているのは、時代の変化の一つかもしれないですね」と捉えている。
“はじめて”には親目線の意味も
2022年からNetflixで世界配信されると、海外から大きな反響が寄せられ、「宮島(広島県)でロケをすると、外国の方に“Netflix?”とすごく聞かれました」と肌で実感。多くあった感想は、小さな子ども1人で外を歩かせることができる日本の治安の良さへの驚きだったが、それに加え、おつかいを子どもの成長を実感するイベントとして位置づけているのが日本独自の文化であることを知ったという。
“はじめてのおつかい”という概念は、元々日本にあったと思われるが、これを言語化し、文化の一つとして昇華させたのは、番組の影響が大きい。23年10月に埼玉県議会で、子どもだけの留守番やおつかいに行かせることを禁止する条例案が炎上して撤回されたのは、おつかいが日本の文化として根付いていることを裏付ける出来事だった。
Netflix版の英語タイトルは『Old Enough!』。日本語訳すると「もう十分大人だよ!」と、子ども目線のタイトルになっているが、「『はじめてのおつかい』の“はじめて”は、おつかいに出すお母さんやお父さんにとってもそうなんですよね。私にも子どもがいますが、最後に帰ってきたとき、親御さんが泣いていて、お子さんが“何で泣いてるの?”と聞くのが、いつもグッとくるんです。改めてすごくよくできたタイトルだと思いました」と感心する。
海外の反応を受けて、ロケをする町の紹介をするという、元々あったテーマの優先順位が高くなったのだそう。「例えば、牡蠣の養殖をしている町だったら、牡蠣にまつわるおつかいをしてもらったりします。日本という国をこの番組を通じて見る人がいるというのを考えたときに、そこがどういう町なのか、そこに住む人がどんなふうに育ってきたのかというのが色濃く出るといいのではと、少し意識しているかもしれません」といい、よりVTRに奥行きが出るようになった。