これまで長きにわたり“はじめてのおつかい”を撮影してきた熟練のチーム。カメラマンは、1人がその町の一番高い建物から俯瞰(ふかん)のショットを。1人が、工事現場の職人に扮してカメラを仕込んだ工具箱を持って並走し、至近距離のショットを。そして、子どもに先回りして遠くからしゃがんでカメラを構え、追い抜かれたら別のカメラが待ち構える…というのを数人で繰り返し、まるで馬跳び競争のような要領で正面からのショットを狙う部隊がいる。
地上担当のカメラマンは、互いのカメラがどこを向いているのかを確認し、目配せをしながら役割をローテーションしていく「鉄壁のチームワーク」を発揮する。しかし、子どもがシミュレーション通りの動きをしてくれるわけには当然いかず、突然走り出したり、違う道に逸れてしまったりと、翻ろうされることもしばしば。きつい登り坂を、子どもがひょいひょい進む一方、ベテランのカメラマンが息を切らしながら追いかける構図は、今や番組の1つの名物に。それでも、番組開始当初に比べると機材の小型化やテープレス化が進み、負担軽減の恩恵を受けているそうだ。
子どもがなかなか家を出発しない場面もよく見られるが、過去には6時間待ったケースも。そんなときは、いつ急に動き出すか分からないため、スタンバイしながら「ひたすら待つ」という体力勝負の現場になっている。
放送ペースは年2回が限界
1つの“おつかい”に、これだけの準備と手間をかけているが、すべてが放送されるわけではない。例えば、すんなり行って何事もなく帰宅したり、周囲の人の優しさで子どもが一言もしゃべらずに達成したりするといった場合は、放送することが難しい。
「ここまで番組が長く続いてきたのは、“奇跡”が放送され続けているからというところが大きいので、子どもの頑張りと放送するかの判断は、すみ分けて考えています」というだけに、番組の放送ペースは年2回が限界だという。
それでも担当スタッフは、どの家族とも撮影後も交流が続いており、その後の様子を撮影したり、過去の放送素材を使用したりする際も、スムースに連絡が取れるそうだ。